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今年もインフルが大流行です、うがいでは防げない!?
厚生労働省のインフル啓発ポスターから「うがい」の文字が消えて4年ほどになりますでしょうか。あまりに小さな違いなので、気にも留めなかった人も多いと思いますが、現在では「うがい」の文字はありません。インフル対策にはうがいをすることはあまり効果がないようです。本当かよ?と信じられずに確認したい方はこちら。
ところが従来の知識にとらわれていると「手洗い、マスク、うがい」と三点セットをずっと言い続けることになってしまいます。
今回は、あいうべ体操を取り入れることによって児童の欠席日数を減らした小学校を紹介します。あいうべ体操は、全国の小学校、中学校、幼稚園、保育園など教育機関で活用され、また高齢者施設などでもインフル予防、誤嚥性肺炎予防などの目的で取り入れられています。
劇的にインフル感染を減らした二つの小学校を紹介
日本各地に講演に行かせていただいておりますが、本当にありがとうございます。
行く先々で「あいうべ体操を始めました」「子ども達と一緒に楽しくやっています」「インフルで休む子が本当に減って驚いています」なんて声をいただくことが増えました。
取り入れて下さっている所がどんどん増えて行っています。これもこれまで熱心に取り組んで下さってきた方々のお陰です。
学校現場ではあいうべ体操を取り入れない理由がありません。子ども達が元気に朝「行ってきます」と家を出て、「おはようございます」と学校について、「ただいま」とまた元気にかえってくる、これって素晴らしいことです!
今回は、あいうべ体操を取り入れることによってインフルエンザを減らすことが出来た小学校を二つ紹介しますね。ぜひ最後まで読んでください。
岐阜県関市の板取小学校の取り組みがスゴイ
関市国民健康保険板取診療所の馬嶋隆歯科医師の指導の下あいうべ体操を導入した板取小学校では児童の平均欠席日数が減りました。
児童の欠席日数が多いことに頭を悩ませていた養護教諭からの相談に、学校歯科医をしていた馬嶋先生があいうべ体操の導入を提案しました。
それが平成25年のことでした。
あいうべ体操を学校で取り入れる利点を挙げてみます。
- 無料
- いつでもどこでも出来る
- 子ども達にも理解しやすい
- 水が要らない
- 唾液が出る
たくさんあります。たとえばうがいを考えてみてください。
うがいをするには、うがい液が必要、一人ひとりにうがい液を配らなければならない、一斉にはき出せない、コップがいる、コップを洗わなきゃいけないとなるとかなり時間がかかってしまいます。これは不便。
さらに、インフルエンザウイルスは20分もあれば体に侵入していきます。
と言うことはですよ、一日に2,3回うがいをしても「意味がない!」のです。
むしろ歯みがきをして歯垢をしっかり落としたり、唾液を出して口の中でウイルスを体の中に運ぶ役目をする雑菌を減らした方が効率的なのですね。
だから、朝起きてすぐの歯みがきがインフル感染を減らすんです。
あいうべ体操は、唾液は出るし、時間もお金もかからないし、集団で一斉に出来ます。だから学校などで取り入れやすいんですね。
さて、板取小学校ですが、あいうべ体操を導入する前は児童の平均欠席日数が一年に4.5日あったそうです。
それがどうなったのでしょうか!!
実は、平均欠席日数が1.9日と60%減になりました。
これはスゴイ!
欠席日数が6割減ったんです。
その後の27年28年度を併せて見ても約半分の日数になっています。
これくらい口呼吸を鼻呼吸にしていくのはインフル対策に大切なんですね。
皆さんの回りでインフルにかかった人を見て下さい、口が「ポカン」とあいていませんか?
感染児童が1/8になった太宰府南小学校
次は、感染率が1/8にまで低下した小学校を紹介しましょう。
それは、太宰府市立太宰府南小学校です。
ここも養護教諭と太田秀人先生(当時本校学校歯科医)、歯科衛生士グループの取り組みで、元気な口を作って、元気な体になって行こうという取り組みをしていました。
歯科衛生士が、児童にオーラルケア(口の衛生)を教えて、歯みがきやあいうべ体操の指導をしてくれました。
取り入れる前の平成22年度と比較すると、平成24年度にはその年度の2月の平均罹患者児童数が1/8にまでなったという驚くべき結果に。
回りの小学校ではゾクゾクと学級閉鎖、学年閉鎖が出ている中、太宰府南小学校の児童はみんな元気に登校してきていました。
それを知った回りの小学校の先生達が、いったい太宰府南小学校はどうなっているんだと不思議がるほどで、教諭の先生方に向けて私が講演を頼まれたほどでした。
インフルエンザが蔓延して大変だという学校、幼稚園、保育園はぜひともあいうべ体操を取り入れてはいかがでしょうか。
なぜインフルが減っていくのか
ここでなぜあいうべ体操でインフルエンザが予防できるのか、簡単に説明しましょう。
唾液が出て口の中が潤い、湿潤に弱い(乾燥に強い)インフルエンザウイルスが暗躍できなくなると言うこともありますが、別の視点から体を見てみますね。
寒くて乾燥した空気にさらされている冬の時期、それでも呼吸はしなければなりません。
鼻呼吸の場合には、鼻毛や線毛、入り組んだ鼻甲介、副鼻腔などによって効率的に冷たくて乾いた空気は温められ加湿されます。
入り組んだ鼻道の面積を広げると新聞紙一枚ほどになると言われています。それくらい広い面積のものが折りたたまれているんですね。
口呼吸の場合は、冷たくて乾いた空気をそのまま取り込んでしまうことになり、ノド回りが冷えてしまいます。そうすると白血球などの働きも落ちてしまいますし、気管支の粘膜を覆っている線毛もよわまってしまってウイルスやゴミを排除することが出来なくなってしまいます。
また鼻呼吸は、熱を持ちやすい脳を冷やすことが出来ますが、口呼吸はそれが出来ません。脳の温度が上がりすぎてしまって脳に悪影響をおよぼしてしまうことがあります。
鼻呼吸は、昔から健康の基本と言われる「頭寒足熱」に繋がるんですね。
だから子ども達も元気になるし、授業に集中できるようになりますよ。
寒いシーズンこそ、インフルが蔓延しているからこそあいうべ体操を始めてください!
もっと詳しく知りたい、子ども達に教えて上げたいという方は「なるほど呼吸学」をお勧めします。
ちなみにうがいが消えたときの啓発ポスター
これが厚労省のインフル啓発ポスターからうがいが消えたときのものです。
2014年か2013年だったかと記憶しています。うがいの文字はありませんし、現在公開されているものにもありません。
https://mirai-iryou.com/aiube/
執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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