機能性身体症候群と上咽頭炎

様々な病名を付けられる慢性上咽頭炎

慢性上咽頭炎は、実に様々な病名を付けられています。

先日受診された若い男性は、3年ほど様々な症状に悩まされて

  • 副鼻腔炎
  • 逆流性食道炎
  • 機能性消化障害
  • 自律神経失調症
  • アトピー性咳嗽など

という病名が付いていました。

MRIやCT、咽頭・消化管内視鏡など様々な検査をされて様々なそれらしい病名が付けられ、それぞれに治療薬も処方されるのですが、効果がないと言うことで受診してきました。

ところで私は、以前のライブドアブログで2011年にこのような投稿をしています。

今回は、身体表現性障害、身体機能症候群についてお話しです。

上咽頭と大脳辺縁系の繋がり

上の図は、「内科疾患における上咽頭処置の重要性:今、またブレイクスルーの予感」と題して口腔咽頭学会に2016年に投稿された論文を私が模したものです。

筆頭著者が、堀田修先生、そして田中亜矢樹先生、谷俊治先生と続きます。

まさにJFIR(日本病巣疾患研究会)のメンバーによる論文です。

この中に、「上咽頭・大脳辺縁系相関仮説」として示されるのが上図なのです。

大脳辺縁系は、人の情動、感情、記憶などに深く関与しています。

具体的には、視床下部、海馬、扁桃体、帯状回を指します。

大脳辺縁系、上咽頭それぞれが炎症、ダメージを受けると下のような症状を引き起こすと考えられています。

大脳辺縁系 睡眠障害、全身倦怠、めまい、無気力、羞明、記憶力低下、全身痛、 しびれ、けいれん、振戦、こむら返り、むずむず脚、過敏性腸症候群、機能性胃腸障害、月経異常
上咽頭 頭痛、肩凝り、首凝り、頚部リンパ節腫脹、咽頭痛、顎関節症、舌痛、耳鳴、微熱、耳鳴りなど

 

機能性身体症候群とは

機能性身体症候群(Functional Somatic Syndrome)とは、様々な検査、診察を行っても、器質的疾患(具体的病名)の存在を明確に説明できない病態

と定義されます。

色々検査したけれど、「良くわかんない」という状態ですね。

病名がはっきりしない、原因不明と言われることが多いです。

そして、「気のせい」「精神的なもの」ということで片付けられてしまいます。

患者さん方は、検査をすれば病名がわかる、診断がつくと盲目的に信じているところがありますが、実際のところ病名がはっきりすることがない状態、症状は数多く存在します。

医学がこれだけ進歩しても、まだまだ分からないことがたくさんあるんですね。

これらの病気には、PTSD,線維筋痛症(FM)、慢性疲労症候群(CSF)、化学物質過敏症(CS)、月経前緊張症(PMS)、顎関節症、舌痛症などがあります。

なかでもCFSとFMではHPA軸が関係していると言われます。

HPA軸とは

HPA軸とはhypothalamic-pituitary-adrenal axis、日本語に直すと視床下部-下垂体-副腎系となります。

これは主にストレスを受けた時の生体の反応が行われる順番なのです。

まず視床下部からコルチコトロピン放出ホルモンが分泌されそれが脳下垂体から副腎皮質刺激ホルモンを分泌します。

そして副腎皮質からコルチゾールが分泌される理由ですコルチゾールはいわゆるステロイドホルモンです 。

もちろんこの経路は生体を守るために必須のものでありこれ自体が体を悪くするわけではありません。

慢性的にこの経路が賦活化つまり活性化したりその刺激が繰り返されたりすると免疫力が低下し 病気の温床になることがあるわけです 。

視床下部下垂体前葉そして副腎皮質と繋がっていくホルモンの連鎖はフィードバックといわれます。

 

一方で副腎皮質からコルチゾールが放出されるとそれは視床下部まで情報が届き視床下部からの CRH 放出が抑制されます。

これを負のフィードバックと言います 。

この正のフィードバックと負のフィードバックが釣り合って普段は私達の体はうまい具合にコントロールされています。

ところがうつ状態であったり免疫が不調になってくるとこの負のフィードバックが働かずコルチゾールが放出され続けることになります 。

Bスポット治療の普及に尽力された堀口申作先生はHPA軸に早くから注目され上咽頭との関連を言っていました。

上咽頭の関連する症状

先ほどの論文から慢性上咽頭炎が関連しうる病態・疾患・症状の表を抜き出してみます。

上から上咽頭炎による直接症状そして上咽頭大脳辺縁系相関を介した症状、最後に病巣炎症として免疫を介した二次疾患と3つに分けられます 。

それでは上咽頭大脳辺縁系相関というのはいったいなんでしょうか。

大脳辺縁系というのは脳の古い部分である大脳の内側にあります。

視床下部は間脳の一部そしてこの大脳辺縁系は扁桃体や海馬といった部分が含まれます 。

上咽頭が炎症起こすことによりその周囲の目の痛みや肩こり首こりなどが起こることは容易に想像ができます。

ところが不眠、 全身倦怠感、思考力・集中力の低下などといった症状にはあまり結びつきが見られないようです。

その結びつきを考えるのが上咽頭大脳辺縁系相関なのです 。

上咽頭とHPA

上咽頭部には自律神経系のなかでも副交感神経を刺激する迷走神経が分布しています。 b スポット治療上咽頭擦過治療によってこの迷走神経を刺激して副交感神経反応を引き出すことも症状緩和に役立っていると思われます 。

上咽頭擦過治療・ Bスポット治療で色んな症状が緩和されることは事実ですが全ての病気がもちろんなるわけではありませんしそのことには十分注意する必要があります 。

おそらく慢性上咽頭炎が改善することにより HPA軸の働きも改善し身体の諸症状が改善していくという風に推察されます。

さて、前述の患者さんですが、上咽頭をファイバースコープで覗いてみると・・・

一見正常に見えます。

それほど浮腫もなく、鼻汁などもありません。

ところが綿棒で軽く擦過(こする)と・・・

こういう風に出血を認めます。

擦って出血を認めること

これが慢性上咽頭炎の診断となります。

様々な病名が付けられていた方でした。振り返ると

  • 副鼻腔炎
  • 逆流性食道炎
  • 機能性消化障害
  • 自律神経失調症
  • アトピー性咳嗽など

でした。

しかしこれらは、慢性上咽頭炎による関連症状だったと推察されます。

Bスポット治療(上咽頭擦過治療)を継続すると、症状の緩和・改善、投薬の中止を得ることが出来ます。

この様な視点から体、症状を診ることは大切ですね。

子の情報があなたの症状緩和、病態の把握に役に立ちますように。

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投稿者プロフィール

今井 一彰
今井 一彰みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医・NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック(JR博多駅すぐ)開業
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