掌蹠膿疱症と扁桃炎

マスコミ 上咽頭

病巣疾患・上咽頭炎

2018年7月、読売新聞医療ルネサンスで「のど・口から来る病」の特集が組まれました。

最初が、掌蹠膿疱症と慢性扁桃炎についてでした。

のど・口から来る病(1)扁桃に異常 手足に膿疱

昔から掌蹠膿疱症と扁桃炎の関係は研究されてきましたが、なぜ今頃になってこの様に取りあげられるのでしょうか。

ここに病巣感染症(病巣疾患)の再興という問題があると考えています。

掌蹠膿疱症は病巣疾患と捉える

病巣疾患というは、このブログでこれまでも発信してきました。

簡単に言うと「慢性炎症を起こしている体の一部分があって、それらは症状としてあまり表に出てこないけれど、体の別の臓器に反応性、二次性の疾患を起こすもの」となります。

例えば、この読売新聞医療ルネサンスの特集で言うと、二回目の「反応性関節炎」もそうなります。

口腔内慢性炎症と扁桃炎、上咽頭炎が関与していることが多く、病気の元となる炎症部位を「原病巣げんびょうそう」といいます。

この原病巣を治療することが、腎臓病や皮膚病、自己免疫病などの根本治療となるのです。

掌蹠膿疱症は、この病巣疾患(病巣感染症)の代表的疾患で、扁桃摘出術により7割以上(報告によっては9割)の治療成績が得られるとされています。

一方で掌蹠膿疱症は、ビオチン(ビタミンH)やミヤリサン(ミヤBM)、ビタミンCなどの内服を選択される場合もあります。

それなりに効果を上げるときもあるのですが、原病巣の問題が解決されないと延々と内服する羽目になります。

掌蹠膿疱症を治療する医師でも、この病巣疾患に関してはあまり関心が無かったり、「病巣疾患とはほとんど無関係」と言い切る医師もいます。

これは残念なことです。

タレントの奈美悦子さん(覚えている人少ないかな)が、掌蹠膿疱症性関節炎でとても苦しんでおられて、それをビオチン療法で治したということで当時とても話題になりました。

そのことにより、掌蹠膿疱症イコールビオチン内服という図式が出来上がってしまいました。

もしビオチンなどを摂取しても中々改善しないという人がいたら、「病巣疾患」の観点から治療を行ってみることもお勧めします。

ビオチンが5g/日で症状の改善が得られないといって、一日に10g、20gと増やしてもそれほど大きな変化はありません。

むしろ視点を変えて病巣疾患治療(たとえば口腔内清掃、根尖病巣検索、副鼻腔炎、扁桃炎、上咽頭炎検索)をした方が改善することがあります。

また、掌蹠膿疱症は歯科金属アレルギーと結び付けられることもあるのですが、実は掌蹠膿疱症と歯科金属アレルギーの関係は、病巣疾患との関係と比較すると、かなり割合的に小さくなります。5~10%程度の関与とも報告されています。

ですから、患者さん方には掌蹠膿疱症イコール歯科金属アレルギーとして口腔内の金属を全部外すということをファーストチョイスにしないように伝えています。

原病巣治療をしても改善しなかったという結果が得られてからでも、歯科金属除去するのは遅くありません。

「臭い玉」と呼ばれる白くて臭い米粒のようなものが扁桃に張り付いていたり、ぽろっと口の外に出てくることがあればそれは慢性扁桃炎を疑います。

臭い玉は、取っても取ってもまた出てきます。

その原因の根底に口呼吸があります。扁桃が腫れやすい、臭い玉があるという人はあいうべ体操で口呼吸を鼻呼吸に変えていくことが大切です。

ただ、すでに炎症を起こしている扁桃をあいうべ体操だけで改善するのは難しく、やはり扁桃摘出術が推奨されます。

「もともと体にあるものを取り去って良いの??」と不安になる方もいるのですが、それが病気の根っこになり、いろいろな症状や病気を引き起こしているとしたら、それを体内に残しておいた方がリスクが高くなります。

例えば、指が腐ってしまって嫌な匂いを放つようになっても「もともとあるから」といって温存せずに、細菌などのさらなる侵入がある恐れを考えると泣く泣く切断するという選択枝になることは容易に想像できますね。

慢性扁桃炎というのは、すでにそのような状態になっていると思ってもいいのです。

それくらい体の中に原病巣を残しておくのは、私は悪いと考えています。

医療ルネサンスこぼれ話

ところで2014年にも同じような話題で「口から元気に」という特集が組まれました。

私は、5回目分のうちの4回目で口呼吸を紹介しました。

この時は「鼻で呼吸 アトピー改善」というタイトル。

(読売新聞より)

実は、この記事の取材先である相田歯科(荒川区)では、歯の治療によって掌蹠膿疱症やアトピー性皮膚炎が改善したという症例があったのですが、編集会議にて「エビデンスがあまりない」とのことで記事にはならなかったのです。

これは私たちの努力・啓発不足ですね。

ところが担当の藤田記者が、無くしてしまうには惜しい内容だとのことで、その後読売新聞ブログでその時の様子を紹介して下さいました。

それが下の記事です。

掌蹠膿疱症やリウマチ、改善のカギは口?

それから4年経って、この様な病巣疾患に関する特集が組まれるのは時の流れを感じさせます。

JFIR(NPO日本病巣疾患研究会)は、病巣疾患(病巣感染症)や口呼吸問題、医科歯科連携について様々な分野で治療に当たっている医療者の集まりです。

病巣疾患の考えがもっと広まって、救われる患者さん方が増えることを祈っています。

古くて新しい考えが病巣疾患です。

「治らない」「原因不明」と医師から告げられたときには、病巣感染症や病巣疾患のことを思いだして下さい。

執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール

今井 一彰
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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