コロナ後遺症外来について

上咽頭 治療

上咽頭炎 永野千代子先生

※みらいクリニックおよび相田歯科耳鼻科では「コロナ後遺症」に対する外来(おもに慢性上咽頭炎治療)を引き続き行っております。

更新日:
2021年2月7日(日)にコロナウィルス感染後遺症に対する特別外来を実施しました(引き続き診療をしております)
受診された方々におかれましては、お疲れ様でした、私にとってもとても有意義な学びの時間となりました。ありがとうございます。

詳しくは、こちらをご覧下さい 

またこちらのブログも合わせてご覧いただけるとありがたいです。

新型コロナウイルス感染症後遺症と慢性上咽頭炎の類似性について。

今後はおそらくコロナ後遺症はME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)と同義であり(つまり新しい疾患概念ではない)、治療法は確立されていないが、慢性上咽頭炎がその病因として強く示唆されるという流れになると思います。

さて、慢性上咽頭炎に関しては、堀田修先生(認定NPO法人日本病巣疾患研究会理事長)の書籍等によりある程度知られるようになりました。中でも私はこの2冊が好きで何回も通読しています。

日本病巣疾患研究会(JFIR)は会員、寄付を募っております。この機会にJFIRサイトをぜひご覧下さい

 

今回の特別外来を行うようになった経緯について書き記しますので、お時間のあるときにでもご覧いただけると幸いです。

慢性上咽頭炎治療をどこでもできる普遍的な治療へ

慢性上咽頭炎の治療を2009年からはじめて10年以上が経ちました。

堀田先生がまだ仙台社会保険病院の勤務医だったときに、仙台まで出向きそこで慢性上咽頭炎、上咽頭擦過治療(当時はBスポット治療と呼んでいました)を教えていただきました。

当時、病巣感染症(病巣疾患)の大きな原因部位(原病巣)として口腔内ばかりに注目していました。扁桃摘出術などは外科医ではないでのできませんから、結局は”他人の力を借りなきゃいけない”わけです。そこのは自分自身の無力さを痛感せざるを得無い日々を悶々と過ごしておりました。

妻に「歯学部に入って歯の治療でも出来ないかな」とさえも言う有様でした。口呼吸から引き起こされる体の諸問題は、口腔内では歯周病、う歯、歯肉炎などを引き起こし、咽頭では慢性扁桃炎を引き起こして、二次疾患の元となるため、口呼吸から鼻呼吸への転換が大事です。

ところが、予防であればそれで良いのですが、すでに引き起こされた疾患に対しては治療をしなければなりません。ところがその治療が私には出来ないのです。

 

目の前に病気で悩んでいる患者さんがいても、明かな原病巣を目の当たりにしても自分で手を下すことができず、治療先を紹介する程度になってしまうのです。

 

そうして、やや意気消沈していたところ、知己であった流山で開業する酒井秀俊先生から堀田先生の話を聞き、矢も楯もたまらず仙台へ飛んだのです。

堀田先生は当時すでにIgA腎症に対する扁桃摘出ステロイドパルス治療で世界的に名を馳せていましたが、すぐにこころよく外来の見学を許可して下さいました。

堀田先生

堀田先生が上咽頭の問題に行き着いたのは、扁桃摘出をした後にも(そこにもう病変がないにもかかわらず)また風邪、上気道炎の後に血尿を引き起こす人がいるという事実でした。そして、なぜなのか突き詰めていくと”鼻咽腔炎”という扁桃とは違う場所にある慢性炎症部位に出会ったのです。

 

鼻咽腔の役割~文献的考察~ 耳鼻咽喉科展望Vol47No6.2004

山野辺守幸 重野鎮義

この論文で堀田先生が鼻咽腔炎(上咽頭炎)を知ったといいます。

 

そこから上咽頭擦過治療(Bスポット治療)を行うようになり、そこへ私が学びに押しかけたという訳です。2009年当時の写真を見ても、若いですね笑 私の隣は妻です。

ひどい肩こりは上咽頭炎だった

上咽頭炎治療を始めて最初に驚いたのは”ひどい肩こりの人が改善する”という現象です。私は、当時AKA(関節運動学的アプローチ)博田法(AKA医学会)という仙腸関節徒手治療の指導医の資格を持って、日夜腰痛や膝痛などの治療も行っていました。ところがいくら仙腸関節の治療を行っても、頚部痛、肩こりなどの改善が認められないことが多いのです。

 

仙腸関節炎が改善しても肩こりなど頭頚部症状は不変というケースがそれまでも多くありました。ところが上咽頭炎治療(以降EAT)後に、肩こりが消失したという例が続々と出現したのです。

仙腸関節炎だと思っていた肩こりの原因は、慢性上咽頭炎だったのです。いくら仙腸関節治療の技術を磨いても改善しなかった肩こり、頭頚部症状がEATによりいとも簡単に改善して行くのを見て、いままでの治療は何だったんだろうかと、患者さんから頚部症状の消失を告げられる度に驚きと落胆が入り交じった感情を味わいました。

もちろんそれ以外にも片頭痛や羞明(眩しく感じる)、倦怠感といった命には関係ないけれど、生活の質を脅かす諸症状に効果があることを知りました。

 

そしてそれらの症状で深く悩んでいる人が余りにも多いことも。

 

耳鼻咽喉科でなくても施行可能

上咽頭部を塩化亜鉛溶液で擦過する、ただそれだけの事でいろいろな症状が改善するのなら、難しい口腔内病変治療や扁桃摘出といった手術を回避できます。

 

これは朗報です!

 

もちろん病気によってはそれらの治療が必須な場合があります、とはいえそうでないケースの方が圧倒的に多いのも事実なのです。

専門家に任せるほどでもない病変であれば、専門家の負担を減らすことができます。慢性上咽頭炎はおそらく人口の10%以上に及ぶと思われますから、到底いまの耳鼻咽喉科の医師では対処できる患者数ではありません。

軽症中等症は、近医で治療可能となることは悩める患者さんにとって素晴らしいことです。

EATであれば、技術習得も比較的簡単で、外来治療として導入も楽です。実際に内科のみならず、皮膚科、精神科、整形外科などでもEATを行っている所があります。

 

内視鏡を使うようなより専門的なEAT(内視鏡下EAT)は耳鼻咽喉科で施行するにしても、シンプルなブラインド(盲目的)EATは医師であればすぐに治療として取り入れることができます。

 

慢性上咽頭炎が引き起こす多彩な症状に対してEATを行えば楽になる患者さんが増えるはずです。

ですから、もっとEATの普及をしたいと願い2020年4月に医師向けのEAT講習会を開く予定でした。ところがコロナ禍で中止、延期になってしまい、今の所次回の目途が立っておりません。とても残念です。

病巣疾患・上咽頭炎

認定NPO法人日本病巣疾患研究会の理念は「最終受益者は患者である」です。これは堀田先生の理念です。

そのためにももっとより多くの医療機関でEATが行われるために情報提供、セミナーをこれからも行っていきます。

longCOVIDと慢性上咽頭炎

今回のlongCOVID特別外来では、従来風邪、上気道炎後に引き起こされた遷延する様々な症状とlongCOVIDの症状が似ているという観点から、おそらくは慢性上咽頭炎を発症したのであろうと仮定し診療を行います(※やはりすべての症例で中等度以上の慢性上咽頭炎を認めました

さてここで日本病巣疾患研究会理事である永野千代子先生の図を紹介しましょう。これらの列記された病名群を見て下さい。

上咽頭炎 永野千代子先生

慢性上咽頭炎(もちろん他の耳鼻咽喉科疾患、口腔内病変でも起こりえます)の症状、病気が多岐にわたることが一目瞭然です。

病名が付いたとしてもその原因ははっきりとしていない病気が多いのも特徴です。

 

上咽頭の解剖学的特異性、たとえば迷走神経と副神経の頭蓋内での走行や発生学的な問題から起因する関係(咽頭弓)を考えると良く理解できるのですが、ここでは詳細は省きます。

 

とにかく、上咽頭部の炎症は様々な体の部位に影響をおよぼすのみならず、精神的な問題まで引き起こしてしまうのです。

longCOVIDの症状が、この図の症状、病気と似ていることも当事者であればよく分かると思います。

ですから、longCOVID治療において上咽頭の状態を探ることは必須とも言えます。慢性上咽頭炎を知っているのと知らないのとでは、治療には大きな差が出てくるのはこれまでの経験としても十分分かります。

 

とにかく症状が多彩、ムラがあり、一つの病名に当てはめることができません。ですから、”不定愁訴”とか”自律神経失調症”(これは間違いではないのですが)とされ、精神科や診療内科で抗不安薬、抗うつ薬を処方されるケースが散見されます。

 

 

命には関係ないけれど、生活の質を脅かす諸症状に医師は対して気を払わないものです。がんなどの悪性腫瘍、高血圧など投薬治療がマニュアル化されているものからすると、「死なないから」「命が助かったから良いじゃない」という風な扱いを受けたという訴えも多いのです。

私は、longCOVIDも慢性上咽頭炎の一つだと推察しておりますので、今回この外来を通して診断を行い、治療に結び付けたいと思っています。

 

もちろんこの考えが間違っている可能性も十分にあります。その時は、longCOVIDは慢性上咽頭炎ではなかったという事が分かりますので、余計な治療、診断をする手間が省けます。

いずれにせよlongCOVIDと慢性上咽頭炎の関係を明らかにすることは患者さん、医療者にとって有益だと考えています。

 

今回、相田歯科耳鼻科での通常外来の新規予約が取りにくくなっているため特別外来で対応します。こころよく引き受けて下さった相田能輝院長(相田歯科耳鼻科)に心から感謝いたします。

※受け付け終了しました。

 

プライバシーを考え、また密を避けるためお完全に一人ずつの診療となるため診察できる人数にかなり限りが有りますので、ご希望の方はお早めにお申し込み下さい。

 

この知見がすこしでもお役に立てるよう取り組みます。そして、コロナ後遺症のみならず、上気道炎感染後の諸症状で悩んでいる方々が日本各地でEATを受けることができるようになるまで取り組み続けたいと思います。

最終受益者は患者である、この堀田先生の理念を形にするためにも。

こちらのブログも参考にして下さい。

コロナ後遺症(LongCOVID)と慢性上咽頭炎

 

執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール

今井 一彰
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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