コロナ後遺症外来について(慢性上咽頭炎) 

※みらいクリニックおよび相田歯科耳鼻科では引き続きコロナ後遺症(おもに慢性上咽頭炎)の治療を受け付けております。ワクチン後遺症の診療も行っています。
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新型コロナウイルス感染後に発症する後遺症で苦しんでいる人たちがいます。その数はどんどん増えており日本国内のみならず、海外でも大きな問題となっています。

4月27日にViruses誌上で「Epipharyngeal Abrasive Therapy (EAT) Has Potential as a Novel Method for Long COVID Treatment」というタイトルでコロナ後遺症に対するEATの論文を発表しました。

ブログのこちらの記事もご覧下さい。

西日本新聞 コロナ後遺症 2022年4月10日

これまでも風邪症状、ウイルス感染症の後にさまざまな後遺症によって数ヶ月、ひどいときは数年にわたり悩んでいる人がいました。それらの人々は、「そんなに長引く風邪などない」とか「風邪を言い訳にしているのではないか」というコロナ後遺症の際にも周囲から投げかけられるような言葉で傷ついてきています。

さてこのコロナ後遺症を含むウイルス性上気道炎(様症状)後の後遺症の原因として慢性上咽頭炎が挙げられます。

風邪の後から続く息苦しさ、ひどい倦怠感、めまい、頭痛、嗅覚障害などの症状ですがこれまで大きな問題になったことはありませんでした。ところが今回の新型コロナウイルス感染症の場合は全世界的に取りあげられており、極度の倦怠感や脱毛といった症状で悩まされている人がいます。

本当に辛いことだと思います。

著明な倦怠感、脱毛、嗅覚脱失、羞明、ブレインフォグ(考えがまとまらない、ボーッとなる)などコロナ後遺症の多彩な症状が分かっても、その本質、なぜそうなっているのか、何がそれを引き起しているのかはまだ未解明です。たくさんの医療者が探していると思いますので、早く解明されるのを祈るばかりです。

とはいえ私は、新型コロナウイルス感染後後遺症、コロナ後遺症(以降はLongCOVIDと呼びます、この名称は現在も新型コロナウイルスの感染が続いている状態を意味しません、鑑賞後に引き起こる日常生活を障害するような諸症状のことを示します)もおそらく同様の慢性上咽頭炎が引き起っている可能性があると推察しています。

こちらのブログも参照して下さい。

そこでこの度、LongCOVIDに対する上咽頭擦過治療(EAT)の効果を見るために特別外来を行うことにしました。

お一人でもLongCOVIDで悩む人が減りますよう、そして従来の上気道炎後の後遺症(おそらくは慢性上咽頭炎)で悩む、苦しむ人たちにも光が差していくよう願うばかりです。

ただ現在新型コロナウイルス感染症にて治療中、養生中、隔離中の方はいまの治療に専念なさってください。退院後あるいは治癒後1ヶ月以上経って症状が残存するような場合はお問い合わせ下さい。

ここで症例を紹介します。

COVID-19感染後の倦怠感、頭痛、やる気の欠如、嗅覚脱失 60代男性

2020年9月高熱が続くも”検査の条件に当てはまらない”とのことでPCR施行されず。思いあまって救急外来を受診したところ、そのまま入院となりPCRにてCOVID-19陽性、CRP高値、CTでも肺炎像を認めました。

その後2週間の隔離があり症状が落ちついたため退院となりましたが、上記症状が続くため当院を紹介され受診しました。

上咽頭を内視鏡で観察するとこの様な像が得られました(これらはすべてご本人の了解の上、掲載しています)。

LongCOVID1

敷石顆粒状変化、粘膜の浮腫を伴う粗雑な上咽頭表面が観察できます。一見して炎症を起こしていることが分かります。

ここで上咽頭擦過治療(EAT)を行うと(この時は経鼻アプローチのみ)容易に出血を来します。

LongCOVID初診EAT後

出血の度合いも考えると重症の慢性上咽頭を引き起こしています(経鼻アプローチのみ)

この方に継続してEATを行っていきました。

1ヶ月後の上咽頭

こちらが一ヶ月後の上咽頭同部位です。右側咽頭窩の敷石顆粒状変化はのこりますが、正面のは消失し、粗雑な状態だったものが整になってきています。

この時点で症状は3割程度改善して、睡眠も取れるようになりましたが、味覚、嗅覚の問題は残りました。

LongCOVIDEAT後一月

ただしまだEATを行うと出血を認めます(この時は経鼻、経口アプローチともあり)

LongCOVID1ヶ月EAT後

2ヶ月後の上咽頭

2ヶ月もすると上咽頭の状態は改善し、EATしても出血が目立たなくなります、と同時に症状のさらなる改善も認められます。

ここまで投薬(サプリ含む)は一切行っておりません。

粘膜表面は炎症後の治癒と思われる繊維質の変化が見えます。敷石顆粒状変化が一部上咽頭天蓋部に観察されるのみです。

 

LongCOVID2ヶ月後

EAT後も著明な出血を認めることがなくなりました。

LongCOVID2ヶ月EAT後

治療を始めて2ヶ月が経過したところですが、一般的な慢性上咽頭炎の経過と大きく変わることはないようです。

出血と症状の改善がリンクしているため患者さんにもその経過が分かりやすいです。

LongCOVIDに対するEAT

EATは筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群 (ME/CFS:Myalgic Encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome)様の症状を引き起こすことがあり、実際に治療としても臨床応用されており効果が出ている人もいます。

CSFは、感染症罹患などのストレスがその発症の引き金になっていることがありますが、感冒様症状・上気道炎後におこる上咽頭炎と症状が酷似することがあります。

これは何時も出す慢性上咽頭炎の症状ですが、多岐にわたります。もちろん自律神経障害を引き起し、起立性調節障害やIBS(過敏性腸症候群)、慢性腰痛症といった上咽頭とは一見関係なさそうな疾患の原因ともなります。

 

コロナ後遺症(LongCOVID)は慢性上咽頭炎が大きく関与しているだろうとの推測の元(明らかに慢性上咽頭炎が関与しているでしょう)

  • #問診・診察
  • #上咽頭内視鏡検査
  • #EAT(必要があれば)

を行います。コロナ後遺症でどれくらいの割合で慢性上咽頭炎が発症しているのか現時点ではまったく分かりません。※これ以降20例程度しか経験したことがありません(3/11現在)が、そのずべてに内視鏡にて中等度以上の慢性上咽頭炎を認めました。 コロナ後遺症における慢性上咽頭炎の割合は98%で(2022年4月現在)、ほぼ全例に認められます。

おそらくコロナ後遺症(LongCOVID)は、ME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群)と同一病態で、それには慢性上咽頭炎が深く関与しているとされていくのではと推察しています。

いまだME/CFSには確立された治療法がないとされていますが、上咽頭擦過治療(EAT)で好成績を上げたレポートもJFIR(日本病巣疾患研究会)仲間から発表されています。

慢性上咽頭炎:慢性疲労症候群の見失われたトリガー(堀田修)

こちらは当該論文の上咽頭炎から様々な症状が引き起こされる図式です。余裕があれば訳して説明します。

堀田論文 図

また国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部特任研究部長で、日本医療研究開発機構(AMED)のME/CFSの研究班班長を務める山村隆先生は、その治療に当たって漢方薬やアデホス(アデノシン三リン酸)などの投与とさらに「上咽頭を亜鉛の入った溶液でこする、上咽頭擦過療法を行うことで症状が多少楽になったという患者もいる」(上咽頭擦治療)というコメントを出しています(日経メディカル2021/1/13の記事より

 

再度記しますが、コロナ後遺症のみならずウイルス感染後(その他様々な原因があります)に出現する諸症状には慢性上咽頭炎が深く関与しています。コロナ後遺症と特別視することも患者さん方の復帰を遅らせてしまうのではと危惧するところもあります。

 

さらにはコロナワクチン摂取後にも同様の症状が起こることも予測されます。これらはHPPV(子宮頚がんワクチン)でも起こったのと同様の問題です(私はワクチンを否定するものではありません。ことさらにその効果を喧伝するよりも、その後の副作用、副反応への対策を講じることも重要だと思います)。

 

一日も早く原状を回復し、社会生活復帰出来るよう取り組んでいきます。距離の問題、体力の問題で受診出来ない人も多いでしょう、上咽頭炎に対するセルフケアもとても重要ですから、まず自分でできることから始めてください。

セルフケアについてはブログなどを参考になさって下さい。

慢性上咽頭炎へのセルフケアとしての点鼻療法

https://mirai-iryou.com/aiube/nose_irrigation/