慢性上咽頭炎に対するセルフケアでいろいろな点鼻をしている人もいると思います。
みらいクリニックで勧めている3つの点鼻について簡単に記します。参考になれば幸いです。
0.5%塩化亜鉛溶液
塩化亜鉛はBスポット治療と呼ばれていた時代よりもずっと古く、英語の文献では19世紀末には鼻の治療薬として使われていたようです。
ヨウ化カリウムも使われていたようですが、ヨウ化カリウムは現在でも(私は使ったことがないですが)、ぜん息や慢性気管支炎に対しての服用薬として局方に掲載されていますね。ただ、現在ヨウ化カリウムを点鼻に使用しているという話は聞いたことがありません(私が知らないだけかも知れませんが)。
塩化亜鉛の化学式はZnClでクロールチンクともいいます。Zincが亜鉛で、ジンクといったりチンクと読んだりします。
食塩がNaClで塩化ナトリウムですから、塩素化合物で”塩”の仲間です。傷口に塩を塗るなんて表現があるように炎症を起こした部位に付着すると痛いです。
ですから、塩化亜鉛を点鼻すると痛い、風邪の時などはひたすら痛い(そんな時は無理に我慢して点鼻しないように)。
塩化亜鉛点鼻を殺菌と思っている人も多いですが、殺菌作用はありません。収斂作用です。
青菜に塩という言葉がありますね。塩は組織をキュッと引き締める力を持っているので、ぶよぶよと炎症をおこしている上咽頭部の粘膜を引き締めるというイメージを持って下さい。
みらいクリニックでは0.5%の溶液を両鼻に0.5ccずつ点鼻します。1.0%は高率に嗅覚脱失を起こしますので使用しません(勧めません)。
0.5%で痛む場合は0.25%に薄めます。
これが使っている容器です。
慢性上咽頭炎がもたらす負の連鎖
さらに詳しく見て行きましょう。これは堀田修クリニックの永野千代子先生のものです。
慢性上咽頭炎は、リンパの流れが悪くなったり(あいうべ体操はここに効く)、微小循環障害を起こしたり、異常免疫反応を起こしたりして、自律神経、免疫系の障害の元となってしまいます。
塩化亜鉛は、組織を引き締める、痛刺激を与えるという2つの点から効果を現していると考えられます。
塩化亜鉛はどこでも入手できるものではありません。アストリンゴゾールで点鼻、鼻うがいをしている人もいます。
慢性上咽頭炎のファーストチョイスとしては塩化亜鉛が良いと考えています。EAT(上咽頭擦過治療)の際に塗布しているのも塩化亜鉛溶液です。
パッチテストで亜鉛アレルギーがある方では使用せず別のものを使います。
ミサトールリノローション
ミサトールは梅のエキスを抽出し、点鼻用に浸透圧などを調節したものです。
抗炎症作用があり慢性上咽頭炎のセルフケアに使われます。
2020年には改良されさらに扱いやすくなりました。
最初から液体タイプは無いのかと質問されたり、要望されたりするのですが、価格面からも品質面からも現在のちょっと一手間かかりますが仕様となっています。
みらいクリニックでは皮膚疾患の場合(掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎、汗疱、慢性じんま疹など)ではファーストチョイスです。
ミサトールについては別に作用機序などをブログに記します。
ソンバーユ
言わずと知れた馬の脂ですね。薬師堂さんのソンバーユ液状特製をおすすめしています。
ジェル状のものは鼻の穴の所に留まって上咽頭まで達するのに時間がかかります。綿棒でこすりつけるという方もいるのですが、綿棒にすわれてしまう量が多いためあまり経済的ではありません。
薬師堂では、長期保存した馬油の上澄を液体状の「液状特製」として販売しています。これが匂いもほとんど気にならず,サラサラしているので点鼻には最適だと考えています。
ソンバーユはこちらの記事も参考にして下さい。冬の乾燥した時期には最適です。
上の二つと併用することもあります。
その際は、まず水溶液である塩化亜鉛あるいはミサトールを使用して、その次にソンバーユを点鼻するようにして下さい。
ソンバーユは、喉奥に流れ落ちる感覚があるとそれは入れすぎです。ちょっと足りないかな、物足りないなというくらいで十分です。
あまり入れすぎてもお金もかかりますし、効果も増えるわけではありませんので,少量でOkです。
もし増やしたい場合は、こまめに回数を増やしてみて下さい。一回の量は増やす必要ありません。
次亜塩素酸水などその他の点鼻
次亜塩素酸水や強酸性水も使ってみたのですが、大きな効果を実感できず現在は使っていません。
ただし、これはみらいクリニックの患者さん方での経験なので、自分には合っているよと言うこともあります。
例えば堀田先生の書籍などでは、MSプレフィアが登場します。これも使っている人が多いですね。
また塗布剤としてトリクロロ酢酸を使っているところもあるようです。
みらいクリニックでもトリクロロ酢酸溶液をごく希に使用することがあります。
いまご自分がお使いのもので調子良ければそれを継続するのが良いと思います。もしいま一つ調子がよくならないと言うことであれば(たとえば3ヶ月ほど使ってみて)、他の点鼻へ変更することも考えてみて下さい。
執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
クリニック案内
amazon著者ページ
今井院長facebook
今井院長Twitter
今井院長Instagram
コメント