ポストコロナ症候群は慢性上咽頭炎に酷似している

2020年6月24日にNHKクローズアップ現代にて「新型コロナ 元感染者の告白」のテーマで放送がありました。

新型コロナウイルス発症後に続く長引く体調不良に苦しんでいるという人たちがいるというのです。

番組内内で挙げられた様々な症状は、慢性上咽頭炎に酷似していると思いこのブログを書いた次第です。

ポストコロナ症候群のみならず風邪の後に引き続く様々な原因不明の症状に悩まされている方の役に立てば幸いです。

ポストコロナ症候群はまさに慢性上咽頭炎だ

同番組を見ていた様々な医師から、あの症状群は慢性上咽頭炎だろうという意見がSNSで交わされました。

まず番組に出てきたのは3月の連休に新型コロナウイルスに感染し、長期間経過した後も微熱、頭痛、関節痛、息切れなどが一月半以上続いているというケースです。この新型コロナウイルス感染症後遺症を仮にポストコロナ症候群と名付けましょう。

 

苦しんでいる人たちには「コロナは回復したのになぜ体調が戻らない、、、」そんな苦悩があるようです。

 

私はヨミドクターにて「患者を苦しめる言葉「不定愁訴」 原因がない病はない」という記事を書きました。

ポストコロナ症候群は症状を見ると「不定愁訴」と呼ばれてもおかしくありません。

患者を苦しめる言葉「不定愁訴」 原因がない病はない 

この記事のケースでは10以上にわたる様々な病名が付いたあげく慢性上咽頭炎であり、慢性上咽頭炎の治療後は急速に回復し治療を終えることができたというものでした。

慢性上咽頭炎では、鼻炎や後鼻漏、長引く咳(痰が出ることも出ないことも)、頭痛、首こり、肩こり、咽頭違和感、ヘバリツキ感、舌痛や歯痛など口腔内症状、メマイ、羞明(眩しい)、耳鳴り、眼痛などなど一件脈絡のない様々な症状を呈します。

 

まさに不定愁訴です(症状は一定しているのに不定とは変な表現ですね)。

 

風邪の後の長引く体調不良

番組では、新型コロナウイルス感染後にPCR検査が陰性になってから1ヶ月以上経っても体調が優れないという、21歳の大学生が登場しました。

2020年4月7日にPCR陽性となり、その時の症状はインフルエンザの10倍以上の辛さで、関節の激痛があったと言います。

 

さらに手掌には赤い湿疹が広がり、高熱も続きました。

 

1月後の5月7,8日と連続してPCR検査は陰性になり、体内にはウイルスが存在しないと診断され退院となりました。

しかし、退院後2ヶ月しても微熱や倦怠感、頭痛、咳嗽(咳)が続くいているというのです。

 

診察した医師の判断では「免疫力の低下」とのことでした。そして長い療養生活による心因性の可能性もあるというのです。

この学生は大学を休学したとも言います。辛いですね。

フランスのレンヌ大学では新型コロナウイルス感染者400名の内2ヶ月以上体調不良が続く人は10~15%いるとの調査が紹介されました(NHKおはよう日本でも少尉されたようです)。

※元文献を検索できませんでした。おしえてくださいm(__)m

患者の後遺症は多岐にわたり主なものは

  • 頭痛
  • 胸の痛み
  • 重度の疲労感
  • 息苦しさ

だったのです。まさに慢性上咽頭炎の諸症状と酷似しています。そしてもし慢性上咽頭炎であれば抗生剤などを処方することは「無意味」です。

番組に登場した高山義告医師(沖縄県立中部病院)も、自らの経験として2割ほどの患者に数週間続く症状があると言います。

高山医師は、原因として

  • 臓器障害(肺の損傷、サイトカインストーム)
  • 長い入院による体力低下
  • 心理的、社会的ストレス
  • ウイルスが持続感染?

の4つを挙げていましたが、もちろんこの中には慢性上咽頭炎は出てこないわけです(知らない医師の方が圧倒的ですから、また高山医師が知っていたとしてもまだエビデンスがないからと示せなかったという可能性もあります)。

しかし、持続感染が続いているのではないかという意見に至っては、PCR検査の有効性を否定する意見だとは思います(これは高山医師の意見では無いようですが)。PCRで陰性になったとしても持続感染が続いているのならPCR検査陰性の意義はあまりないといえるでしょう。

 

新型コロナウイルスも風邪である

あえて批判覚悟で書きますが、ここで新型コロナウイルス感染症も風邪である、と言うことを今一度はっきりさせておく必要があります。新しい感染症で、世界的な問題になっているからと微に入り細に入り見て行くので”様々な症状を呈するように見える”のです。

これまでもこのような症例はごまんとあったのです。でも「風邪の後だからそんなこともあるよね」ということで見過ごされてきたのです。

ただの風邪であっても髄膜炎や心筋炎、ギランバレー症候群、抗生剤を投与されればスティーブンス・ジョンソン症候群になる可能性はいくらでもあるのです。

ただの風邪でも起こりうる、いや現にたくさんのケースで起こっているのです。

ここでもう一度慢性上咽頭炎の症状を確認しましょう。

こんなに多岐にわたるのです(詳しい機序は割愛します)。

 

これは新型コロナウイルスだから起っていることではありません。これまでも従来コロナウイルスを含む風邪ウイルスによって起っているのです。

さて一例紹介しましょう。

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30代の男性です。悩みは一月半続く咽頭痛に悩んでいる ノドの詰まる感じヒリヒリした感じが取れない 微熱も続いているということでした。

一月半前に咽頭痛があり近くの内科を受診し「咽頭炎」と診断されて抗生剤などの投与を受けたのですが、症状の改善は見られませんでした。

新型コロナウイルスも心配になり、いくつかの病医院を受診しましたが喉もきれいで炎症反応も見られないことから、咽頭炎に対する薬剤を処方される程度でした。

そのうち、喉の焼ける感じがあり「逆流性食道炎かも」と思ったこの男性は、胃腸科で胃酸を抑える薬を処方してもらいましたが効果はありませんでした。

だんだんと肩こり、首こりもひどくなりいよいよ心配になり、ネットを検索している内に慢性上咽頭炎を知りました。

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まさに経過からすると急性咽頭炎後の慢性上咽頭炎なのです。

これが新型コロナウイルス感染症後であれば、ポストコロナ症候群と言われるでしょう。このケースでは新型コロナウイルス感染ではありませんが、まさにポストコロナ症候群と同じです。

 

ところで内科医が喉を診ると言うときに観察するのは「中咽頭」です、口をあ~んと開けてくださいというと言われますね。あのときは口蓋扁桃と中咽頭を診ているのであって上咽頭ではありません。

もちろん、ごく希に上咽頭炎がひどくて、中咽頭でも咽頭扁桃が確認できたり、膿性鼻汁(いわゆる後鼻漏)が認められる人もいます。

この方の場合は、口から見える中咽頭は異常ありませんでした。

ただし、この方の上咽頭は内視鏡で確認すると全体的に腫脹し、擦過にて容易に出血しました。これが慢性上咽頭炎です。

擦過前、上咽頭上皮に敷石顆粒状変化があります。

左鼻孔から入れた麺棒で軽く擦過するととたんに出血をします。粘膜表面が炎症を起こして血管拡張しています。

 

この一連の経過は、慢性上咽頭炎を知っていれば容易にたどり着く診断なのですが、まだまだ知っている医師がごく少数に限られるのが現状です。

症状の原因は心因性という怖さ

これまでも慢性上咽頭炎の症状であっても医師から理解されず、結局「心因性」「メンタル」と言われてさらに気持ちを打ちのめされる人たちがたくさんいます。

 

医師が自分では理解できない症状を「心因性」とすぐに判断しがちなことも問題です。

 

番組でも、この心因性つまり「心の問題」を取りあげていました。

 

しかし、

「自分が悪いことをしているような気がする」

「どうして治ったと言われるのに症状が続くのだろう」

「不安でたまらない」

という後ろめたさや心理的負担からそのまま心因性とするのはかなり危険と言わざるを得ません。

 

もちろん、新型コロナウイルス感染症による大きな社会的ストレスもあるでしょう、ただそれだけでしょうか。

 

それだけで

  • 頭痛
  • 胸の痛み
  • 重度の疲労感
  • 息苦しさ

といった様々な症状が出るでしょうか。もちろんストレスであってもいろんな症状が出ますが、ポストコロナ症候群の場合症状がある程度一定しているのが特徴です。”不定”ではありません。

 

このことから考えても、まさにポストコロナ症候群は慢性上咽頭炎であるといっても過言ではないでしょう。

 

さて、番組では大阪大学大学院の三浦麻子教授が、新型コロナウイルスに関する意識調査を行っており、「感染者は自業自得だと思う」とする意見が日本では11.5%と諸外国と比べて際立っていました。中国4.83%、一番低いアメリカでは1.0%でした。日本とアメリカは10倍違いますね。

 

そこから感染者が感じる”後ろめたさ”が発生し、遷延する症状につながっているのではないかという意見です。そう言われるとなんだか納得できるような気もします。

 

が、ちょっと立ち止まって考えてみると、フランスの調査では10~15%、高山医師の経験でも20%程度とポストコロナ症候群の発症割合はそれほど違いがありません

 

自己責任、自業自得がポストコロナ症候群の原因だとすると、フランスでは(三浦教授の調査では出てきませんでしたが、隣国のイタリアが2.51%の割合でした、そこから類推して)ポストコロナ症候群が日本と比較してより少ないことになるはずですが、そうなっていないのです。

 

ですから、”自業自得と感じる説”を唱えるには根拠が薄弱です。

 

番組の最後は「感染者や疑い者にバッシングをしないように」という意見で終わったのですが、それではいまポストコロナ症候群で苦しんでいる人は救われません。

 

ぜひ慢性上咽頭炎の事を医師もそして患者さんも知ってほしいと思っています。ポストコロナ症候群が慢性上咽頭炎であればEAT(上咽頭擦過治療)にて改善することが大いに期待されるからです。

 

この記事がすこしでもお役に立てば幸いです。今病気と闘っている方が一日も早く回復しますように。

市井の開業医の戯れ言でした。

執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール

今井 一彰
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医・NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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