「まさか自分が・・・」とコロナ後遺症に悩む人はこう言います。
だれでも(もちろんこれを書いている私でも)なる可能性があるのがコロナ後遺症です。
コロナ後遺症は、ウイルス感染後疲労症候群であり新型コロナウイルスにだけ起こるものではありません。インフルエンザや旧来のコロナウイルスによっても引き起こされる”身近な”疾患でしたが、新型コロナウイルスによって一気にメジャーな病気となりました。
またHPV(ヒトパピローマウイルスワクチン、子宮頚がんワクチン)による後遺症も同様の症状ととらえることができます。
その両者で起こっているのは慢性上咽頭炎です。けっして心の病や療養によるストレスではありません(二次的にそのような状態になることはありますが)、最初からメンタル疾患だと決めつけて診療に当たっては病態が見えてこないでしょう。
さて、2022年4月10日の西日本新聞にてコロナ後遺症が紹介されました。
コロナ後遺症の相談医療機関を福岡県と福岡県医師会が協力してリストアップしていますが、みらいクリニックは医師会未入会なのでこのリストには入っていません(もちろん問い合わせもありませんでした)。
リストに入っている医療機関はME/CFS(筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群のこと、コロナ後遺症はこの病態と酷似する)のことなどを念頭に置いて診療をしてくれていると良いのですが、すこし不安が残ります。
集中力低下(ブレインフォグ)や頭痛、極度の倦怠感など血液検査やレントゲン、CT、MRIなどでは分からないことが多く、「異常なし」と診断されることがしばしばあります。
そうなると「心因性」「メンタル疾患」と判断され精神科や心療内科を紹介されることもあります。職場からも勧告を受ける場合も多く、マイナートランキライザーやSSRIなどが投与されてしまってもう何が何だかわからなくなってしまうケースが散見されます。
問題は、遷延する炎症であるのですから(ほとんどCRPは上昇しません、胃炎や肝炎、アレルギー性鼻炎といった炎の付く疾患でもあがらないですね)、数値に異常がないからと言って「異常ない」とは言い切れないのです。
その証拠に内視鏡で観察するとコロナ後遺症罹患者の98%に慢性上咽頭炎が認められます(もちろん亜急性期の病態も含まれますが)。
様々な検査でも「異常なし」と診断されたケースであるにも関わらずです。
紙面に出てくる女性もよく理解していない医師から「リハビリのために動いた方が良い」とアドバイスをされ逆にそれが病状を悪化させることになりました。
さらに、コロナ後遺症では(ME/CFSでも同じですが)、PEMが起こります。PEMとはpost exertional malaiseの略語で日本語では労作後疲労といいます。動いた(体だけではなく感情も)後、数時間~数日して極度の疲労感などが襲ってくる(クラッシュ)ことです。
EAT(上咽頭擦過治療)をすると調子がよくなりますから、会話しすぎた、模様替えをした、片付けた、などをすることで起こってしまいます。
これにはシッカリ回復するまで待つこと肝要です。外来でも注意するよう伝えますが、やはり改善すると良くなってどんどん動いてしまってクラッシュを起こしてしまうことがあります。これは致し方ないでしょう。
さらに、看病するご家族も「散歩くらいしてみたら」といったアドバイスや「寝てばかりいるからかえって疲れるのじゃないの?」の言葉掛けを避けるようにして下さい。
また一部うつ病、心因性の反応と見分けが付かないことがありますが、炎症が持続しているのですからダルかったり、気分が良くなかったりするのは当たり前です。
これに対して不用意に抗不安薬や抗うつ薬を投与するとかえって倦怠感など症状の悪化を招いてしまいますから、確実な診断が付かない場合は、それらの薬の投与を控えます。
執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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