ヒステリー球を知っていますか
ヒステリー球という言葉を聞いたことがありますか?ヒステリーの語源は、ギリシャ語の「子宮」に由来すると言われています。
骨盤内に溜まった血液が精神症状を引き起こすなどと言われていて、女性に多いと思われていたためこのような名前になったのでしょうね。
最近だと、解離症状と呼ばれることが多く、「ヒステリー」というとセクハラといわれかねません。もちろん男性にも起こる症状ですね。
ヒステリーはドイツ語でHysterieと書くため、古い先生はその頭文字を取って「HY(ハーイプシロン)」なんて呼んでいました。目の前で「ヒステリー」なんて言いうとその場の雰囲気が悪くなりますから、まぁ隠語ですね。
さてこのヒステリーに球が付いた「ヒステリー球」という言葉、どこに球があるのかというと「のど」です。
ヒステリー球の症状
ヒステリー球は、喉頭異常感症とも言われ、心身の不調(精神的ストレスが多いですが)で起こる症状です。病名として「喉頭異常感症」とあるんですよ。
よく「自律神経の乱れ」なんてまことしやかに書いてあることもありますが、何をもって自律神経の乱れとするのかがはっきりとしません。
ともかく、のどに何か溜まっているようで、それが常にあり苦しい、辛いという症状が起こります。
風邪や気管支炎、はたまた逆流性食道炎などの何らかの体の異常が認められる病気(器質的障害といいます)あればそちらの治療を優先すればいいのですが、このヒステリー球(喉頭異常感)は検査しても異常が認められないことが多く(機能的障害といわれます)、最終的には「自律神経の問題」と片付けられることが多いです。
ですから患者さんは「自分の問題なのか。。。」と落ち込んでしまうこともあります。
また命に別状はないため、「気にしないように」とか「上手く付き合っていきなさい」というアドバイスを受けることもあります。
「気にしない」ということが自分で出来れば医療機関を受信することはないのですが、、、、、
昔の人も悩んでいた
西洋医学では、喉頭異常感に対して大した治療ができません(投薬という意味で)。
エチゾラム(例えばデパスなど)などの抗不安薬を投与されることがありますが、それほど効果があるものではありません。
そうなると半夏厚朴湯や柴朴湯などといった漢方薬を処方されることもあります。
実は、この分野は漢方が得意としています。
ヒステリー球という言葉ではなくて、「梅核気」や「咽中炙臠」といった言葉で表現されます。
「梅核気」は「ばいかくき」と読み、梅の核(タネ)がのどに引っかかっている感じを表します。
「咽中炙臠」は、「いんちゅうしゃれん」と読み、咽(のど)の中に、炙(あぶった)臠(れん、肉片)が詰まった感じを表現しています。
初めて聞く人もいるかもしれませんね。
昔の人も悩んでいたんですね。
漢方では、気の滞りがこのような症状を引き起こすと考えられています。漢方治療に関しては、いろいろなところに出ていますからそちらを参考になさって下さい。
例えば有名な細野診療所の解説などがありますね。
自律神経や「気」の問題じゃないとしたら…
20代の男性が喉頭異常感を主訴に来院してきました。
私としては、これはもう「慢性上咽頭炎」だろうという思いしかありませんので(こういう先入観を持って診療してはいけませんね、反省です)、喉頭ファイバーで上咽頭の状態(重症慢性上咽頭炎の所見あり)を観察しました。
観察の後、治療のために「ちょっと鼻の奥をこすりますよ」といって巻綿子を入れたわけです
そうすると
と驚かれてしまいました。
殆どの患者さんは、上咽頭擦過治療を希望して、何をされるかをわかって受診しているのですが、彼は「漢方治療」でどうにかならないかと思って受診していました。
そこへ、思っても見なかった綿棒攻撃にあってしまいびっくり。
さて、お話を詳しく聞いてみると。
※身体表現性障害、機能性身体症候群に関しては別稿で書こうと思います。
ありとあらゆる本を探した、ネット検索もとことんやったし、自分できることは色々試したそうです。
けれど症状は改善せず、「博多 漢方」で検索したところ、みらクリがヒットしたので最後の望みと思って受診したとのことでした。
それまで慢性上咽頭炎については、全く聞いたことが無いと。
そして、鼻に棒を突っ込まれたので思わず「何をするんですかと、、、」叫んでしまったそうです。
更に聞くと、調子を崩し始めた半年ほど前に歯科矯正のために抜歯(上下合わせて4本)をしているのです。
その後から症状が出現し休職するまでになってしまったらしいのです。
いろいろな理由はあるでしょうが、安易な抜歯は勧めませんし、歯科医はそれで起こるいろいろなあとの症状についてもきちんとフォローする必要がありますね。良いことばかりが起こる訳ありませんから。
二回目の診察では
一回目は痛い思いをさせてしまいましたが(二回目も治療は痛いのですが)、彼からは
「鼻で呼吸できることの快適さ」
「症状が改善していることの喜び」
そして何より
といってくれました。
彼から「色々検索したが、ヒステリー球と慢性上咽頭炎について書いてあるものはなかった、沢山の人が苦しんでいるはずだから、ぜひ解説を載せてほしい」と言われました。
そして、この文章を書いています^^;
今回は、
抜歯による咬合異常 → 鼻呼吸障害 → 慢性上咽頭炎 → ヒステリー球
という流れになるでしょうか。
さてもう一度慢性上咽頭炎による頭頸部の症状を見てみます。
なんと「喉頭異常感・違和感」というのがありますね。
まさにこのヒステリー球は、慢性上咽頭炎から起こっている場合もあると考えなければなりません。
これが理解できないと「自律神経の乱れ」と表現されてしまう可能性があります。
ヒステリー球(喉頭異常感)で悩みが続く場合は、やはり一度慢性上咽頭炎を疑ったほうがいいでしょう。
はっきりとした慢性上咽頭炎がある場合は、残念ながら漢方薬や抗生剤、抗不安薬などの薬剤治療だけでは効果が出ないことがあります。
そんなときはお気軽にご相談下さい。
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執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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