逆流性食道炎とは
逆流性食道炎とは、簡単に言うと胃酸が逆流して胸焼けなどが起こる病気です。
近年増えているという風に言われます。
皆さん知っての通り、口から入った食べものは、咀嚼(噛んで)されて小さくなり、喉から食道へと送られます。
食道は、蠕動運動という自分でうねうねと動く動きがあるので、食事をさらに先の胃まで送り届けます。
この蠕動運動があるから、逆立ちしても水が飲めるんですね(私は逆立ちが出来ませんが笑)。
(ちなみにキリンの反芻、キリンなどの反芻動物は逆流性食道炎を起こさないんだろうか・・・)
さらに食道から胃へと送られた食物は、ここで胃酸による消化を受けます。
胃酸って酸性度がかなり高いんです。
酸性度が高いと言えば、日本一酸性度が高い玉川温泉。
ここの酸性度がph1.1程度のことです。かなりコワイ数値です・・・
ですから玉川温泉は、入浴は5分以内、顔を洗っちゃいけない(眼球を傷つける恐れ)などの決まりがあるようですね。
胃酸の酸性度も同じようなph1~2。
だから食物がどろどろになるまで溶かされていくわけです。
食物はどろどろになった状態で、さらに先の十二指腸に送られます。
胃は胃酸に強い構造になっていますから、「自分自身が消化される」と言うことがありません。
ところが食道や十二指腸は対胃酸構造がありませんから、胃酸が入ってくると「消化される」可能性があります。
ですから、胃の入り口と出口のところを巾着のようにぎゅっと縛って胃酸が漏れないようになっています。
これが十二指腸に漏れ出すと十二指腸潰瘍となります(もちろん簡単に言うとですよ)。ピロリ菌もこの辺に生息。
じゃあ食道側に漏れ出しても問題があるんじゃないか。
そうです。この下部食道括約筋(胃と食道の境目)が緩むと食道側に胃酸が漏れ出します。
これにより胸焼けや食欲不振、胃もたれなどと言う症状が起きるのが逆流性食道炎です。
高齢者にも多く、その時はベッドをすこし起こして寝る、マクラを高くするという方法がとられることもありますね。
逆流性食道炎の治療は
逆流性食道炎の治療は、このあふれ出ている胃酸を押さえるのが一番ですから、そんな薬が出ます。
代表的なものはPPI(プロトンポンプインヒビター)ですね。
オメプラゾールとかランソプラゾールという一般名。最近は、エソメプラゾール(ネキシウム)の処方が多くなりました。
その他にもファモチジン(ガスター)やラニチジン(ザンタック)などのH2ブロッカーも使用されます。
漢方薬だと半夏厚朴湯や柴朴湯、半夏瀉心湯などが使われることがあります。
PPIで効果がなかったら次は漢方へなんてパターンもよく見かけます。
薬じゃ治らないことも多いんですが、どうしても薬一辺倒になってしまいがちです。
まぁこの辺の治療薬は置いておいて。
あいうべ体操が逆流性食道炎に効く
という声を良く聞くんですね。
加齢による咽頭、喉頭の筋力低下などで逆流性食道炎が起こっているのであれば、それらの筋肉を鍛えることが出来るあいうべ体操だとありえることだと思います。
何でもかんでも薬で治せばいいと言うものではありませんし、胃酸を押さえると言うことは、胃酸で殺されていた微生物を殺す力が劣ってしまう可能性もあるわけです。
高齢者になると上に上げたPPIやH2B(ヒスタミンブロッカー)が決まって処方されます。
それによる弊害も起こるわけですね。
逆流性食道炎と慢性上咽頭炎
後鼻漏、慢性咳嗽(長引く咳)、咳喘息、喉の違和感などで受診した方に時々PPIが処方されていることがあります。
これは、逆流性食道炎でも同じような症状を示すことがあるからです。
内視鏡で少しでも食道に炎症を見つけると「逆流性食道炎です」と診断され、PPIが処方されます。
ところが飲み続けても治らない。。。。
PPIを服用すれば、逆流性食道炎の症状は治まっていくはずなんですが、それが改善しない。
勢い同じ処方がずっと継続されてしまうと言うことになります。
これは慢性上咽頭炎による症状の一部を示した図です。
これ以外にも、IgA腎症や掌蹠膿疱症(病巣疾患と言われる)がありますが、頭頚部を中心とした症状に絞って示しています。
鼻炎や眼痛、片頭痛(緊張性頭痛も)、肩凝り(ストレートネックと診断されることも)、中には顎関節症と診断されたものが慢性上咽頭炎だったという症例もあります。
「慢性せき」「咽頭違和感」、胸焼けならぬ「喉やけ」という症状も出てきます。
これが逆流性食道炎と見分けがつかないことがあります。
上咽頭擦過治療で逆流性食道炎が改善
みらいクリニックを上記のような症状で受診する方の中でも1/3程度は、このPPI(胃酸を強力に押さえる薬)が処方されています。
それでも症状が治まらない。
上咽頭を
を擦ってみると、、、、
このように出血が認められ、慢性上咽頭炎だと診断できることがあります。
これは「逆流性食道炎様」の症状が「慢性上咽頭炎」により引き起こされたと考えられます。
ですからPPIなど逆流性食道炎の治療をしても改善しない場合は、慢性上咽頭炎を疑うことも大切です。
そう考えると
- 口呼吸は上咽頭に悪影響
- 口呼吸を鼻呼吸に治すあいうべ体操
- 上咽頭炎が治まる
- 逆流性食道炎様症状が改善
という一連の流れが理解できます。
あいうべ体操で逆流性食道炎が治ったという人は、おそらく慢性上咽頭炎の状態だったのではと推察されますね。
この様な体の繋がりを考えていくのはとても楽しい作業ですね。
逆流性食道炎は増えている病気ですが、中には慢性上咽頭炎を間違って逆流性食道炎と診断されているケースがあると思われます。
ぜひ参考になさって下さい。
執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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