掌蹠膿疱症など皮膚病治療について

掌蹠膿疱症など皮膚病治療について

みらいクリニックでは、病巣疾患治療を重要視しています。ここでは代表的な疾患である掌蹠膿疱症を例に挙げて説明します。

掌蹠膿疱症

掌蹠膿疱症などの皮膚難病の原因は

掌蹠膿疱症とは手のひらや足の裏に小さな水ぶくれができて、かさぶたになったりすることが繰り返される病気です。爪にも症状が出ることがあります。

原因は不明とされていますが、中高年の喫煙者に見られることがあります。

皮膚病変がひどくなると水仕事が辛かったり、時には足裏の皮がむけて歩行が困難になることもあります。

また掌蹠膿疱症性関節炎といって全身の関節の痛みを引き起こすことさえもあります。

中には診断が付かずに多数の医療機関を受診してまわるという方も珍しくありません。

季節的な変化があり特定の季節に悪化したり改善したりすることがあるため、「時期が来たら治る」といって受診自体をしない方もいます。

掌蹠膿疱症の罹病期間は長期にわたり10年以上に及ぶことも稀ではありません。

治療は、ビタミンD3軟膏やステロイド剤を塗布したり、ビオチンやビタミンCを内服したりします。

この掌蹠膿疱症の原因の一つに「慢性扁桃炎」や「歯周病」が上げられます。

扁桃を摘出すると報告にもよりますが5~8割が快方に向かいます。掌蹠膿疱症と診断されたときには扁桃摘出術は考慮したほうがよい治療法です。

なぜ、のどにある扁桃と皮膚の病気が繋がっているのでしょうか?

扁桃にあり通常は体を守るために働くリンパ球が、何らかの原因で異常な免疫反応を引き起こしてしまうと考えられています。

掌蹠膿疱症では皮膚は病気の現れるところであって、原因はのどにあるという状態が存在するのです。

口呼吸は、慢性扁桃炎や歯周病悪化の原因となります。のどや口にもともと存在していた炎症をさらにひどくしてしまいます。

それにより関係の無いような全身の病気が発症し、症状や数値の異常が出やすくなってしまうと考えられます。

 

のどから来るいろいろな皮膚病

慢性扁桃炎や慢性上咽頭炎から発症する皮膚病としてはアトピー性皮膚炎、多形滲出性紅斑、色素性紫斑、尋常性乾癬など多数の疾患が上がります。

この様な疾患の場合は、それぞれの臓器の治療も問題ですが、病気の根本を解決することが大切です。

病巣疾患の概念図

慢性上咽頭炎は時に片頭痛や顎関節症、舌痛症といった一見まったくのどとは関係ない部位にまで炎症が及んで症状を引き起こすことがあります。

みらいクリニックでは、この原病巣治療の観点から慢性上咽頭炎治療を行っています。

後鼻漏や鼻炎、鼻閉、耳閉など耳や鼻の症状のみが焦点に当てられやすい慢性上咽頭炎ですが、実は原因不明と言われている多くの疾患と関係していることがあります。

問診でそのことが判明する場合もあります。

命の入り口であるのどや口は、全身の健康と大きく関わっています。みらいクリニックではEAT(上咽頭擦過治療、Bスポット治療)をご希望の際でも全身疾患とのかかわりを考えながら治療に当たっています。

慢性扁桃炎に対する扁桃摘出術や咽頭扁桃(アデノイド)摘出術は耳鼻咽喉科で治療することになりますので他の医療機関を紹介させていただきます。

また同様に歯周病や根尖病巣などの歯科的疾患についても歯科医院と連携をとって治療に当たります。

原因の違う二つのケース

病巣疾患治療の難しさの一つに原病巣(病気の元となっている炎症部位)を探し出すところがあります。

当院では侵襲が少なく、金額的負担も少ない部位から治療を行うようにしています。

掌蹠膿疱症と金属アレルギーは結び付けられることが多いのですが、実は金属アレルギーが掌蹠膿疱症の原因となっていることはあまりありません。

歯科金属アレルギー治療は費用も期間もかかるため第一選択の治療にはなり得ません。まず慢性炎症部位の検索が必要です。

慢性上咽頭炎が原因だった例

30代の女性です。10年以上掌蹠膿疱症で悩んでおり、ビオチン療法なども試しましたが効果はありませんでした。

掌蹠膿疱症の手のひら(治療前)

これが4ヶ月後の手掌の状態です。重症の慢性上咽頭炎があったためEATを行いました。

塗布剤なども使用せず治療を終えることができました。

※喫煙をしている方はまず禁煙が治療の最初です。当院は禁煙外来はありませんので、ご希望の場合は禁煙外来を受診して下さい

掌蹠膿疱症の手のひら(治療後)

口腔内病変が原因の例

50代女性のケースです。関節リウマチを併発していました。

抗リウマチ薬の処方もありました。掌蹠膿疱症と関節リウマチはまったく関係ないような疾患ですが、「病巣疾患」の観点から見ると原病巣治療が二つの疾患を治療するのには役立つことがわかります。

50歳代女性の掌蹠膿疱症の手のひら(治療前)

この方の場合は、慢性上咽頭炎や扁桃炎よりも歯肉からの継続的な排膿があったため歯科治療を優先しました。

適切な歯科医院へ紹介し治療をおこなってもらったところ4ヶ月後には下のような手掌になりました。

その後のどの治療を継続し2年間の治療で内服薬が不要になり、通院を終えることができました。

50歳代女性の掌蹠膿疱症の手のひら(治療後)

以上のように、同じ病気であっても原病巣が違えば治療が変わります。

病巣疾患においては適切な治療を選択することも重要な視点です。

※参考にしていただきたいこれまでの記事。

■【ブログ記事】ビオチンだけが治療じゃない掌蹠膿疱症治療

ビオチンを飲み続けても治らない

ビオチンという物質が、ビタミンHとかコエンザイムRとかって呼ばれてサプリが盛んに販売されています。

ビオチンの別名であるビタミンHのHは、Haut(ドイツ語で皮膚)が由来のため、お肌のビタミンなんて言われることもあります。

ただし、このビオチン通常の食事をしていれば、腸内細菌が生み出してくれますから欠乏することはないのですが、スキンケアのためにどんどん摂取しようなんて言う人もいます。まぁほとんどのページがサプリの販売につながっているのですが。

さて掌蹠膿疱症しょうせきのうほうしょうという病気があります。掌蹠(手のひらと足の裏)に膿疱(水疱・ぶつぶつ)が出来て潰れる病気です。時に全身の関節炎を引き起こしたりします(掌蹠膿疱症性関節炎PAO)。

皮膚病変だけであれば、痛みやしびれなどはありません。もちろん皮膚が広範囲に炎症を起こすと痛みが出ますが、通常はほぼ無症状。

ですが、やはり手足の裏に皮膚病があるとどうにかして治したいですよね。

掌蹠膿疱症の治療としては、活性型ビタミンD3やステロイド剤の塗布が行われますし、ビオチン以外にもビタミンCなどが投与されることもあります。

おそらく「掌蹠膿疱症」と検索すると「ビオチン」も合わせて出てくると思います。

この「掌蹠膿疱症関節炎イコールビオチン大量投与」となったのは、前橋賢先生の「信じてもらうための挑戦」の貢献が大きいです。

奈美悦子さんが一躍広告塔となりメディアに盛んに出演されていました。

 

 

掌蹠膿疱症がビオチンを服用して改善するのであればこんなに簡単なことはありません。患者さんにとっては朗報です。

ビオチンと合わせて、酪酸菌(ミヤBMとかビオスリー、市販品だとミヤリサン)も一緒に摂取すると良いですね。

ところが、ビオチンをずっと飲んでいるのに一向に良くならないという人がいることもまた事実なのです。

前掲の前橋先生の本に出てこない事実があります、それが「病巣感染症(病巣疾患)」です。

扁桃摘出術で掌蹠膿疱症が改善した、という論文はたくさん出ているにもかかわらずにもです。

意図的に掲載しなかったのか真相は分かりませんが。

扁桃病巣疾患に関しては、第2回日本病巣疾患研究会にも参加してくださった形浦昭克先生の「二つの顔をもつ臓器扁桃とその病気」が比較的平易で詳しいです。

ビオチンも対症療法だ

患者さんを紹介しましょう。50代女性で掌蹠膿疱症を患い3年以上治療を受けています。

マイザー(ステロイド塗布剤)、ビオチン3g/日服用を継続していますが症状は一向に変わりません。

みらいクリニックには「後鼻漏がある」との理由で受診されました。後鼻漏とは「鼻水がのどの奥に流れる」、「鼻水がノドに下がる」、「鼻汁が喉に流れ込む」という症状のことです。

聞くと、扁桃も大きくて扁桃摘出術を勧められたこともあるとのことでした。

さて、これまでも掌蹠膿疱症に関してはブログで紹介してきました。

 

実際に調査すると金属アレルギーである割合は、5%程度だろうとのことです。

 

 

またSCCH(胸肋鎖骨過形成症)と絡めてビオチンについても書きました。

 

 

これがこの方が来院された時の写真です。

50歳代女性の掌蹠膿疱症の手のひら(治療前)

初診時

右手の親指を中心に、病変が広がっています。

このときは足の裏にも病変を認めました。

50歳代女性の掌蹠膿疱症の手のひら(治療2ヶ月後)

2ヶ月後

この時点で治療は3回行っています。

上咽頭擦過治療(EAT,Bスポット)、口テープ、あいうべ体操なども。

50歳代女性の掌蹠膿疱症の手のひら(治療4ヶ月後)

4ヶ月後

これが四ヶ月後で、ほぼ湿疹は出なくなっています。

それまでビオチンを飲み続けて、ステロイドを塗り続けていたのにもかかわらず、それらを止めて、「病巣疾患」の治療(この場合は慢性上咽頭炎)を行うことによって改善したのです。

そして、一度きちっと治療をすれば再発することはほとんどありません。

ビオチンを飲み続けるというのも、対症療法なのです。

口の中の慢性炎症にも注意

みらいクリニックサイトの慢性上咽頭炎の項目では、歯の根尖病巣を治療して掌蹠膿疱症が治癒したという症例を紹介しています。

病巣疾患(病巣感染症)は原病巣の検索が必須です。

原病巣は、喉と口で大部分を占めますが、扁桃や上咽頭であれば分かりやすいですが、歯は大人で28本ありますから、それらの一本一本が大丈夫かどうかを見極めないといけません。

よく歯の根っこの病気「根尖病巣」があっても「症状がないから」とか「病変が小さいから」といって「放置する」場合があるのですが、病巣疾患に置いては、病巣の大きさはあまり関係ありません

 

■【ブログ記事】掌蹠膿疱症(皮膚病)、金属除去ちょっとまって!

掌蹠膿疱症とは手のひらや足の裏に小さな水ぶくれができて、かさぶたになったりすることが繰り返される病気です。

掌蹠膿疱症の罹病期間は10年とか20年以上など長期にわたることもある皮膚の慢性病です。

治療は、ビタミンD3軟膏やステロイド剤を塗布したり、ビオチンやビタミンCを内服したりしますが、効果がない場合はステロイド剤(副腎皮質ホルモン)を処方されることもあります。

みらいクリニックでは、できるだけ薬を使わずに掌蹠膿疱症などの皮膚病治療を行うようにしています。

本当に金属アレルギーが原因ですか?

今回のブログは、掌蹠膿疱症ですぐにした方が良いのかどうかと言うお話しです。ただ掌蹠膿疱症にかかわらず、その他の疾患(例えばSAPHO症候群※注1や胸肋鎖骨過形成症)でも「金属アレルギー」とか「パッチテストで陽性」と言われたことのある人もぜひ読んでください。

私は掌蹠膿疱症しょうせきのうほうしょう治療の際には、皮膚や鼻、咽頭だけでなくもちろん口の中の状態を見るのですが、すでに歯科金属除去をしてきている患者さんを時々見かけます。

これには理由がありますね。掌蹠膿疱症イコール歯科金属が原因となる人が多いし、ネット上で検索してもそのような情報があふれていますからね。

ケースによっては金属除去を患者さんが希望するか、歯科医師が勧めるかですね。

ところが歯科金属を除去(いわゆるノンメタルにするといいます)しても掌蹠膿疱症の症状が続いてしまうことが多数あります。

これはどういうことでしょうか。

実は、歯科金属が掌蹠膿疱症に対して与える悪影響はそれほど多くないのではないかと思っていたところ(みらクリの臨床経験だと1割以下程度しか関係してない)この様な論文が出ました。

Retrospective analysis of the clinical response of palmoplantar pustulosis after dental infection control and dental metal removal.
J Dermatol. 2017 Jun;44(6):695-698
歯性病巣感染コントロールおよび歯科金属除去後の掌蹠膿疱症の臨床反応に対する後ろ向き解析(東京歯科大石川総合病院皮膚科)

 

retrospective analysis(後ろ向き解析)というのは、疫学調査方法の一つで、現在から過去にさかのぼって原因や影響を与えた事象に関して調査することです。

さらに歯科金属除去は分かりますが、歯性病巣感染しせいびょうそういかんせんとはなんでしょうか。

まず口の中の金属について考えていきましょう。

歯科治療で使う金属は、いろいろな金属を組み合わせた合金を使用します。またレジンやセラミック(ポーセレン)などの非金属物質を使うこともあります。

また金属とセラミックを合わせたり、人工ダイヤのジルコニアを使ったりすることもあります。

まるで口の中は貴金属店ですね(^^)

この方のように口腔内に金属が沢山入っているのを見ると、何だか身体に悪そうだなあと感じるのは私だけでは無いはずです。

かくいう私の口の中にもたくさんの歯科金属が入っていますから、やっぱり気になりますよね。

歯科金属が沢山入っている口の中 掌蹠膿疱症のケース

歯科金属が沢山入っている口の中 掌蹠膿疱症のケース

この歯科金属に対してアレルギーを起こしてしまうので掌蹠膿疱症が発症してしまうと言うのが金属除去治療の根拠となります。

みらいクリニックにも、金属パッチテストの結果を持参する方がいらっしゃいます。

それでもなお、まず病巣検索をするべきだと思います。その理由をこれからご説明します。

歯性病巣感染とは

上の論文で出てきた歯性病巣感染とは何でしょうね。

歯性病巣感染というのは、口腔内特に歯周組織に起こる感染症(辺縁性歯周炎や根尖性歯周炎などが代表的です)により、口の中ではなくその他の臓器に別の病気を引き起こしてしまうと言う代物。このときに口腔内の病気を「原病巣」といいます。

また炎症は口の中だけじゃなく、歯の根っこが上顎洞じょうがくどう(副鼻腔)に飛び出して起こる歯性上顎洞炎なんてのもあります。

それが私たちの体にどのような影響を与えるのか、説明にはいつものこの図を用います。

ここでは病巣感染症=病巣疾患として扱っています。

病巣疾患概念図

 

掌蹠膿疱症は慢性扁桃炎でも起こるのですが、扁桃の場合は特定の感染菌が証明されてないことから「病巣感染症」という呼び方はふさわしくなく、「病巣疾患」「病巣関連疾患」と呼びます。ちなみにこれがNPO法人日本病巣疾患研究会の名前の由来です(皆さま、寄付よろしくお願いします!)。

どこかに限局的な原病巣があり、それらの慢性炎症が遠隔の諸臓器に二次性の器質的、機能的障害を起こす状態が病巣疾患(病巣感染)の定義ですね。

これに掌蹠膿疱症も含まれるのですが、その他の皮膚病変としてアトピー性皮膚炎、多形滲出性紅斑、尋常性乾癬、結節性紅斑、慢性じんま疹、IgA血管炎、色素性紫斑、ベーチェット病、痒疹なども疾患として挙げられます。

ですから、これらの疾患は皮膚だけを診ていては解決できない場合があるのです。

実は原病巣として、口腔内の慢性炎症は大きな役割を果たしているんです。これが歯性病巣感染です。

さて、今回の東京歯科大皮膚科の論文は、金属アレルギーテスト(パッチテスト)で陽性(アレルギー反応あり)であっても金属除去は急がずに、咽頭扁桃、口腔の原病巣治療を優先すべきだという趣旨です。

金属除去は高額な治療になることもあり(時には100万円を超えることも)、さらにそれほど急いでしなくても良いとなれば、治療としての優先順位はかなり低くなります(もちろん歯科金属で起こる病変もありますから、その際は金属除去をしなければなりません)。

ネットでガルバニック(ガルバニー)電流を除去するためにも金属除去を、なんてセリフを見つけてもそんなに心配しないで下さいね。まず病巣検索を優先して下さい。

この歯性病巣感染については、みらいクリニックサイトでも紹介しています。

文中では、根尖の病巣を治療して手の湿疹が改善した症例を紹介しました(札幌市西区森下歯科提供)。この症例でも金属除去は行っておりません。

論文の主旨は

さてこの論文の主旨を紹介しましょう。85の症例報告を調査した結果を並べてみます。

85例とはけっして大規模な数字では無いですが、それでも興味深い結果が見えてきますね。

扁桃摘出術は

まず掌蹠膿疱症に対する扁桃摘出術の治療成績を見ます。

扁桃摘出術は、掌蹠膿疱症治療としてはその有用性は確立しています。

報告によっても数値に違いがありますが、大体70~90%の確立で治癒します。

NPO法人日本病巣疾患研究会の堀田修理事長は、常々、上咽頭は司令塔、扁桃が実行部隊と言っています。

実行部隊が壊滅されると遠隔臓器の被害が無くなるわけですね。

今回の調査では、扁桃摘出術は6例と少数ながら100%の改善を認めました。

これはスゴイ!

ただし慢性扁桃炎がある場合ですから、慢性扁桃炎がなければ扁桃を摘出しても効果がないことになります。

ですから、報告によってその治療成績にばらつきがあるんですね。

扁桃摘出術の結果

扁桃摘出術の結果

ただ残念なのは扁桃摘出術を耳鼻咽喉科にお願いしても「適応で無い」と断られることが多いことです。

そこがちょっと問題です・・・

歯性病巣感染治療は

次に歯性病巣感染の掌蹠膿疱症に対する治療効果です。

歯性病巣感染70例を調べてみると、改善が63%(44例)でした。

これもなかなかの数字です。

もし掌蹠膿疱症を治療する医師が「歯性病巣感染」について知らなければ、これらの患者さんは延々と治らないということになります。

口腔内慢性炎症を改善するというのは、全身にとってとても大切だという証拠です。

そして往々にして歯性病巣感染の場合原病巣は「症状がない」。

歯の根っこの小さな炎症が、大きな悪さをすることがあるんですが、そのことが分かっている歯科医師に治療をしてもらわないと

「まぁ症状がないからそのまま様子を見ましょう」ということになります。

この場合の症状は”局所症状”であって、全身症状ではないのです。全身症状との繋がりを考えて治療することが大切ですね。

ちょっと歯性病巣感染から話題がそれますが、GutzeitとParadeの病巣感染の定義によると

「身体のどこかに限局した慢性炎症があり、それ自体はほとんど無症状か、わずかな症状を呈するに過ぎないが、遠隔の諸臓器に、反応性の器質的および機能的な二次疾患を起こす病像」となります。

ほとんど無症状か、わずかな症状を呈するに過ぎない

とあります。このことを今一度肝に銘じる必要があります。

GutzeitとParadeの病巣感染の定義

GutzeitとParadeの病巣感染の定義

歯性病巣感染の場合も症状がないことがしばしばなんです。

さて、歯性病巣感染治療の治療成績はこちら。63%が改善。これもなかなかのものです。

歯性病巣感染治療の結果

歯性病巣感染治療の結果

いつも提示するこのイラスト。

歯の根っこや歯肉組織の「慢性炎症」が体に大きな影響をおよぼすことがあります。

小さな炎症が、持続的に、慢性に、四六時中続くことが体にとって大きなストレスとなります。

歯の根っこや歯肉組織の「慢性炎症」が体に大きな影響 奥田克爾先生提供

奥田克爾先生提供

歯科金属除去は

最後は歯科金属除去の掌蹠膿疱症への治療成績です。

9例のケースで改善が33%(3例)でした。

思ったより多かったですか?少なかったですか?

私は、「思ったより多かった」という印象です。

掌蹠膿疱症に対して歯科金属除去をすると1/3の人には効果があると言うことです。ただ9例という少数なのでこれから数を増やしていかないといけませんね。

歯科金属除去の治療結果

歯科金属除去の治療結果

これから分かることは、掌蹠膿疱症イコール金属除去ではないということ。みらいクリニックを受診する方でも金属除去に至るケースは1割程度でしょうか。

それくらい少ないです。すぐに金属を外す必要はありません。

それよりも安価で治療成績の良い治療方法があります。これはパッチテストで陽性であってもです。

上咽頭炎治療や扁摘、歯性病巣感染治療を行ってもなお症状が続くようであれば歯科金属除去をするという順番でも充分だと思われます。

みらいクリニックはその順番で治療方針を立てています。

注意してほしいのは、けっして金属除去が意味ないと言っているわけじゃ無く、安易な診断をしてすぐに金属除去というコースがだめだという意味です。

病巣感染全体では

さて、慢性扁桃炎、歯性病巣感染をまとめて病巣感染(病巣疾患)とするとどうなるかを見てみます。

全76例中、66%が改善と言うことになります。

歯科金属除去の改善率を見ても「まずは病巣検索が優先される」ということがわかる結果ですね。

歯科金属除去の改善率

慢性上咽頭炎の関与はどうなっているだろう

さて、上記論文には出てこなかった慢性上咽頭炎ですが、この慢性上咽頭炎の関与はどうなっているのでしょうか。

この写真は掌蹠膿疱症で受診してきた患者さんのEAT(上咽頭擦過治療)後の出血の様子です。

ひどい炎症があることが分かります(炎症が無いと出血しない)。

掌蹠膿疱症で受診の方のEAT後出血

掌蹠膿疱症で受診の方のEAT後出血

この慢性上咽頭炎(免疫異常の司令塔)がどのような影響をおよぼしているのか、そしてそれを治療するとどうなるのかは第二弾でお知らせします。

この本もオススメです(専門家向け)。

以下の記事も参考になさって下さい

肩回りの痛みが出る胸肋鎖骨過形成症と慢性上咽頭炎


SAPHO症候群:それぞれの症状の頭文字をとって名付けられた。滑膜炎Synovitis、痤瘡Acne、膿疱症Pustulosis、骨過形成Hyperostosis、骨炎症候群Osteitis、当初最初のSはSyndromeのSだった。鎖骨、肋骨の痛みやその他の多発関節の痛みや腫れ、皮膚病変が見られる。扁桃摘出術がとても効果的なことがおおい。胸肋鎖骨過形成症(SCCH)も同じ概念に含まれる。
慢性上咽頭炎の関与も強く疑われている(もとの部分に戻る

■【ブログ記事】掌蹠膿疱症、金属除去ちょっと待って2

 掌蹠膿疱症や皮膚疾患に対する歯科金属除去をする前に

口の中の金属除去はそれほど急がなくても良い、その前にいろいろと出来ることがあり、それら(病巣疾患治療)の方が確実性が高いというお話しを前回しました。

例えばこの論文なんてのはまさに口腔内感染症(病巣感染症)のケースについて書いてあります。
<Dental Infection as a Triggering Factor in Palmoplantar Pustulosis
掌蹠膿疱症における発症因子としての口腔内感染症 Acta Derm Venereol. 2013 Nov;93(6):721-2.

口の中の感染症治療をして掌蹠膿疱症しょうせきのうほうしょうが改善した4例について報告してあります。

抗生剤治療によって改善した掌蹠膿疱症

上記論文より、抗生剤治療によって改善した掌蹠膿疱症

慢性上咽頭炎について詳しく知りたい方はこちらも参考にして下さい。

慢性上咽頭炎

その1でも書いたとおり、すぐ口の中の金属除去と考えずに、まず炎症を起こしている部位は無いかと言うことに着目することが大切だと思います。

と、その前に悪化要因を

皮膚病変を悪化させる一番の原因を書きましょう。

まずはなんと言っても喫煙、たばこです。これがある間は、治りが悪い、治らないと考えてください。

喫煙している人は、まず禁煙。これ治療の第一条件です。ぜひご自分の体のためにも、家族や周囲の方のためにも禁煙を勧めます。

そして、食事ですね。やはり。

甘いものや小麦製品が多いと悪くなりがちです。ご注意を

ということで本編に入ります。

口の金属をとろうか、どうしようか・・・

迷ってしまうのは当たり前ですね。時間もお金もかかってしまいますから。

そうやって悩む人は少なくありません。

では、掌蹠膿疱症に悩んでいた女性のお話。

いつも利用していた美容院で、たまたまお客さんが同じような症状で悩んでいたと言うことを聞いたそうです。その方は金属アレルギーではないかということで、口の中にあった金属ブリッジなどをすべて外して、口の中から金属を無くしてみました。

ところが症状が全く変わらなかったと。

さらにその方が、みらいクリニックで治療を受けて半年ほどで改善したと聞いたので、金属除去を考えていたけれど、その前にみらいクリニックを診したと。

このエピソードからも掌蹠膿疱症、皮膚病すぐに金属除去となるのではなくて、一歩立ち止まりやはり炎症のコントロールが必要かもしれないということが分かります。

リンデロンローションを塗布して水疱を抑えていた

リンデロンローションを塗布して水疱を抑えていた

金属除去に40万円の見積もり

今回紹介するTさんが、なぜみらいクリニックを受診したかというと・・・

Tさんは、掌蹠膿疱症とくに足裏に水疱が出来て困っていました。

リンデロンローション(副腎皮質ステロイド剤)を塗布することで症状が抑えられていたので、水疱が出て痛みや痒み、ジュクジュクとした浸出液が出るようになったらステロイド剤を塗ると言うことで何とか落ち着いていました。

Tさんの口の中がパート1で紹介したこの写真です。

歯科金属

歯科金属が多数見えますね。これが原因かも知れない、この金属を除去してもらおう考えて歯科医院を受診しました。

金属を除去して、非金属の歯にするのは自費診療です。高額になりがちです。

Tさんの場合も治療費の見積もりは40万円を超えていました

一般的にはちょっと悩む価格ですね。でも必ず治るのであれば是非ともやってみたいですよね。

指定された金額にTさんも悩んで、何か別なことが出来ないだろうかと私の元へ受診しました。

慢性上咽頭炎があった

はたしてTさんの喉の奥には慢性上咽頭炎がありました。慢性扁桃炎の所見は見つけられませんでした。

ここで出てくるのがいつもの病巣疾患です。

この慢性上咽頭炎を治療してダメなら、口の中の病巣検索、そしてだめなら金属除去というのが費用的にも合理的だと私は考えています。

みらいクリニックでビオチンやビタミンCを投与すること、推奨することはあまりありません。

それまでサプリとして飲んでいたものがあれば止めることはありませんが、増量したり指示することもありません。

ビオチンがいい、ビタミンCがいいと聞くと、治らなければどんどん摂取する量が増えて行きがちです。

増量したとしても大きく結果が変わることはあまり経験がありません。

Tさんは慢性上咽頭炎がありましたから、これらの治療を優先しました。

そして4ヶ月後には、塗布剤を使うことなくきれいな足裏になりました。

リンデロンローションは不要になったのです。

足裏にステロイド薬を塗ることなく湿疹が改善

足裏にステロイド薬を塗ることなく湿疹が改善

そして、なんと言っても口の中の金属はそのままだったのです。

特に治療をすることなく、口呼吸の改善、上咽頭治療によって掌蹠膿疱症が改善しました。

まさにこれが病巣疾患治療なんですね。

ここで私から提案です。

歯科医院の問診票に書くべき内容は・・・

上咽頭炎、慢性扁桃炎に加えて歯性病巣感染対策が掌蹠膿疱症治療には大切です。

一見無関係に思える口や鼻の病気、症状が皮膚病と繋がっているのです。

さあ、●●の中に当てはまる言葉を考えて下さい。

もちろんこれは、歯科の問診票だけじゃなく、耳鼻科の問診票にも言えますね。

病巣疾患というのは、思いがけない病気と繋がっているものです。

医師、歯科医師でさえもそのことを知らないという人たちがいます。

医療機関の問診票は、一見関係なさそうな病気であったとしても関連があったり、薬の使用に制限があったりしますから、

  • 歯が痛い
  • 鼻が詰まる

だけではなくて、今かかっている病気があればそのことを、薬を飲んでいるならそのことを書いた方がご自分のためです。

さて、上の●●の正解は。

歯科医院(耳鼻科)の問診票には「全身」の「病気」も書く

歯科医院(耳鼻科)の問診票には「全身」の「病気」も書く

あなたの体を守るため

でした。簡単でしたね(^^)

後鼻漏や鼻炎、片頭痛などで受診してきた方でも、よくよく話を聞いてみると皮膚病や腎臓病を持っていることがあります。

実は、鼻や口の炎症がそれらの病気とは別々に存在するのではなくて、同じ体の中に共存していますから互いに影響し合っているんですね。

口と鼻は命の入り口です、ここの炎症は全身に影響をおよぼしてしまいます。

是非とも問診票の記入をお願いいたします。

 

■【ブログ記事】掌蹠膿疱症、いつまでステロイドの内服しますか?

経口ステロイド薬を止めることが出来た

「良いってすすめられたけん、来たとよ」

こんな感じで紹介されてくる方の治療は結構難しい。

何が難しいって、みらいクリニックがどんな治療をするところかよく分からずに

行けば良くなる」とか「とにかく行ってみんしゃい治るから

という風に全面的にバトンを渡されても、どんな病気かも生活習慣かも分からないのに確約できないわけです。

日々治る病気より治らない病気の方が多いなあと、治療にもがいて、無い知恵を絞っていますから「治ると言われました」と言われるとホント困ります(誠にありがたいことですが)。

でも、受診した側としては「騙されたと思って」とまで言われるなら仕方なく・・・という感じで来院されるのも致し方ないことです。

上のセリフが問診の時に出てきたMさんもそんな感じでした。

掌蹠膿疱症で大学病院の皮膚科を受診して5年、なかなか改善せずに毎日プレドニン2.5mg(経口ステロイド薬)ドボベット(ビタミンDとリンデロン合剤)、デルモベート(最強のステロイド)を塗布する毎日。

「どげんかして良くならんやろうか」と悩んでいたところに、知人からみらクリを紹介されたといいます。

当院のことを全く分からないので、どのような治療をするのかももちろんご存知ありません。ネットのサイトなども見ずに「言われたからいってみよう」の行動力。私は好きです。

初診の時に

  • あまり薬を使わないこと
  • 掌蹠膿疱症は「病巣疾患」のことが多いから皮膚の治療ではなく、その病気の元となる原病巣の治療をすること

などを伝えなきゃいけません。そうしないと「クスリも出してくれなかった薮医者だ」と評判になりますので。

Mさんが受診したのは夏の暑い日。EAT(上咽頭擦過治療)施行と生活習慣改善をまずお伝えしました。

初診時の手掌の状態はこちら。全体的に赤みが広がって、皮膚の皮が剥けて痛々しいですね。

これでもステロイドを飲んで、塗っている状態でした。

内視鏡によるEATでは、重症の上咽頭炎を認めました。これが原病巣となって症状を悪化させていると思われます。

経口ステロイド薬、ドボベットを使用してこの状態

経口ステロイド薬、ドボベットを使用してこの状態

掌蹠膿疱症は病巣疾患であることが多い

掌蹠膿疱症は多量のビオチンを飲んでも改善しないことがしばしば起こります。先日、一日にビオチンを10g飲んでいるという方も見えました。

10g飲んでも治らないなら、15gに増やしてみようかというのが人情。

まったく違った視点から病気を見直してみようかとはなかなかなりません。それは患者さんだけじゃなく、医師も同じです。

掌蹠膿疱症は病巣疾患、病巣感染症として治療をすると比較的短期間に治ることが多いです。

統計を取ってみると手掌で20週、足蹠で24~30週というのがみらいクリニックでの平均的治療期間です。

毎度毎度のスライドですが、原病巣(口は扁桃、上咽頭が大多数を占める)の慢性炎症が直接とびひして遠隔臓器に二次性病巣を起こしたり、最近わかり始めてきたMucosa-Bone Marrow Axisなど免疫系を介して他臓器への病変を起こしたりというのが病巣疾患。

掌蹠膿疱症もまさにこの一つです。ですから、局所治療と合わせて全身の原病巣検索が治療の要になります。

 

病巣疾患

EATを繰り返す事3ヶ月

「先生、またあの痛かと(治療)をするんですか?」

最初は、EATの衝撃的な痛みに驚いて、あまり乗り気じゃなかったMさんですが、体調の改善、局所所見の改善、塗布回数の減少など症状がしっかりと改善していくのにつれて、EATの重要性、原病巣治療の大切さを理解してくださるようになりました。

「先生、もぅ最近は塗り薬を塗っておらんとばい」

「それがよかですね。薬は出来るだけ少ない方がよかですね」

なんてやりとりをしておりました。

「もぅ飲み薬もやめてよかやろうか」と仰るので(それまでにステロイド薬は、二日にいっぺん、三日にいっぺんなどと少しずつ内服回数を減らしていました)

「一旦全部止めてみましょう」と止めてみることにしました。

「足の裏も良くなったし、薬も塗らんでいいし、飲まんでいいし、良かった」

と喜んで下さいました。

これが薬を止めたときのものです。薬を使わなくても、デルモベートを塗っていたときよりも改善しています。

受診後3ヶ月 12週後の手掌

受診後3ヶ月 12週後の手掌

足裏にも塗布剤を使うことがなくなりました。

これからますますキレイになっていくことでしょう。

最初は、突然のEATに戸惑っていたMさんですが、最近は綿棒にも出血することなく、痛みも減少しています。

掌蹠膿疱症で悩んでいる方はぜひ「病巣疾患」を知ってください。

NPO法人・日本病巣疾患研究会は口呼吸、病巣疾患について調査研究、啓発している団体です

特に大量のビオチンやミヤリサンをサプリとして摂取している方、病巣のこと考えないとずっと摂取し続けることになりますから要注意です。

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2017年7月発売の最新刊「口呼吸を止めて万病を治す~口テープ特典付き」発売中

これは私が2017年7月に出した本です。口テープの特典付き。こちらは息育、あいうべ体操についてです。

掌蹠膿疱症の症例も掲載。

ゆびのば体操や姿勢についても解説しています。 フルカラーでとても分かりやすく見やすく仕上がりました。

こちらもどうぞよろしくお願いします。

掌蹠膿疱症と扁桃炎

慢性上咽頭炎

参考文献、参考ウェブサイト

前橋賢(2008)『信じてもらうための挑戦』近代文藝社 http://amzn.asia/d/1CRo45g

形浦昭克(2005)『2つの顔を持つ臓器 扁桃とその病気』南山堂  http://amzn.asia/d/3BiXGSh

ヴィジュアルダーマトロジー編集委員会(2017)『Visual Dermatology 2017年12月号Vol.16No.12』学研メディカル秀潤社 http://amzn.asia/d/5jUrbC9

今井 一彰(2017)『口呼吸をやめて万病を治す!』宝島社

東京歯科大石川総合病院皮膚科(2017)「Retrospective analysis of the clinical response of palmoplantar pustulosis after dental infection control and dental metal removal.
J Dermatol. 2017 Jun;44(6):695-698
歯性病巣感染コントロールおよび歯科金属除去後の掌蹠膿疱症の臨床反応に対する後ろ向き解析」

GutzeitとParadeの病巣感染の定義 1939

Dental Infection as a Triggering Factor in Palmoplantar Pustulosis
掌蹠膿疱症における発症因子としての口腔内感染症 Acta Derm Venereol. 2013 Nov;93(6):721-2.

NPO法人日本病巣疾患研究会

森下歯科

今井一彰(2017)掌蹠膿疱症改善例 http://miraiclinic.blog.jp/archives/51902432.html 2018年12月28日アクセス

今井一彰(2016)10年来の掌蹠膿疱症が改善 http://miraiclinic.blog.jp/archives/51891929.html 2018年12月28日アクセス

今井一彰(2014)胸肋鎖骨過形成症と慢性上咽頭炎 http://miraiclinic.blog.jp/archives/51799151.html 2018年12月28日アクセス

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執筆・監修 医師 今井一彰プロフィール

今井 一彰
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医・NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター

みらいクリニック(内科・アレルギー科・リウマチ科)
福岡県福岡市博多区博多駅東1-13-31駅東サンシティビル6F
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