ビオチンを飲み続けても治らない
ビオチンという物質が、ビタミンHとかコエンザイムRとかって呼ばれてサプリが盛んに販売されています。
ビオチンの別名であるビタミンHのHは、Haut(ドイツ語で皮膚)が由来のため、お肌のビタミンなんて言われることもあります。
ただし、このビオチン通常の食事をしていれば、腸内細菌が生み出してくれますから欠乏することはないのですが、スキンケアのためにどんどん摂取しようなんて言う人もいます。まぁほとんどのページがサプリの販売につながっているのですが。
さて掌蹠膿疱症という病気があります。掌蹠(手のひらと足の裏)に膿疱(水疱・ぶつぶつ)が出来て潰れる病気です。時に全身の関節炎を引き起こしたりします(掌蹠膿疱症性関節炎PAO)。
皮膚病変だけであれば、痛みやしびれなどはありません。もちろん皮膚が広範囲に炎症を起こすと痛みが出ますが、通常はほぼ無症状。
ですが、やはり手足の裏に皮膚病があるとどうにかして治したいですよね。
掌蹠膿疱症の治療としては、活性型ビタミンD3やステロイド剤の塗布が行われますし、ビオチン以外にもビタミンCなどが投与されることもあります。
おそらく「掌蹠膿疱症」と検索すると「ビオチン」も合わせて出てくると思います。
この「掌蹠膿疱症関節炎イコールビオチン大量投与」となったのは、前橋賢先生の「信じてもらうための挑戦」の貢献が大きいです。
奈美悦子さんが一躍広告塔となりメディアに盛んに出演されていました。
こちらの記事も参考になさって下さい
掌蹠膿疱症がビオチンを服用して改善するのであればこんなに簡単なことはありません。患者さんにとっては朗報です。
ビオチンと合わせて、酪酸菌(ミヤBMとかビオスリー、市販品だとミヤリサン)も一緒に摂取すると良いですね。
ところが、ビオチンをずっと飲んでいるのに一向に良くならないという人がいることもまた事実なのです。
前掲の前橋先生の本に出てこない事実があります、それが「病巣感染症(病巣疾患)」です。
扁桃摘出術で掌蹠膿疱症が改善した、という論文はたくさん出ているにもかかわらずにもです。
意図的に掲載しなかったのか真相は分かりませんが。
扁桃病巣疾患に関しては、第2回日本病巣疾患研究会にも参加してくださった形浦昭克先生の「二つの顔をもつ臓器扁桃とその病気」が比較的平易で詳しいです。
ビオチンも対症療法だ
患者さんを紹介しましょう。50代女性で掌蹠膿疱症を患い3年以上治療を受けています。
マイザー(ステロイド塗布剤)、ビオチン3g/日服用を継続していますが症状は一向に変わりません。
みらいクリニックには「後鼻漏がある」との理由で受診されました。後鼻漏とは「鼻水がのどの奥に流れる」、「鼻水がノドに下がる」、「鼻汁が喉に流れ込む」という症状のことです。
聞くと、扁桃も大きくて扁桃摘出術を勧められたこともあるとのことでした。
さて、これまでも掌蹠膿疱症に関してはブログで紹介してきました。
実際に調査すると金属アレルギーである割合は、5%程度だろうとのことです。
またSCCH(胸肋鎖骨過形成症)と絡めてビオチンについても書きました。
これがこの方が来院された時の写真です。
右手の親指を中心に、病変が広がっています。
このときは足の裏にも病変を認めました。
この時点で治療は3回行っています。
上咽頭擦過治療(EAT,Bスポット)、口テープ、あいうべ体操なども。
これが四ヶ月後で、ほぼ湿疹は出なくなっています。
それまでビオチンを飲み続けて、ステロイドを塗り続けていたのにもかかわらず、それらを止めて、「病巣疾患」の治療(この場合は慢性上咽頭炎)を行うことによって改善したのです。
そして、一度きちっと治療をすれば再発することはほとんどありません。
ビオチンを飲み続けるというのも、対症療法なのです。
口の中の慢性炎症にも注意
みらいクリニックサイトの慢性上咽頭炎の項目では、歯の根尖病巣を治療して掌蹠膿疱症が治癒したという症例を紹介しています。
病巣疾患(病巣感染症)は原病巣の検索が必須です。
原病巣は、喉と口で大部分を占めますが、扁桃や上咽頭であれば分かりやすいですが、歯は大人で28本ありますから、それらの一本一本が大丈夫かどうかを見極めないといけません。
よく歯の根っこの病気「根尖病巣」があっても「症状がないから」とか「病変が小さいから」といって「放置する」場合があるのですが、病巣疾患に置いては、病巣の大きさはあまり関係ありません。
執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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