いよいよ本格的な花粉症の季節に入ってきました。スギの花粉症もつらいですが、ヒノキにも反応する方はさらにつらい期間が延びますね。朝からクシャミ、鼻水、目のかゆみで生活の質もぐっと落ちてしまいますね。忙しくて病院にも通えない、保険が利かないから高いんだけど仕方なく、ドラッグストアの抗アレルギー薬で凌ぐという人もいるでしょうね。
あいうべ体操を実践して下さっている方からは、「今年は症状がまだ起こっていない」とか「何とか薬を飲まなくても過ごせて嬉しい」という声がたくさん届いています。
これまでにも口呼吸を鼻呼吸に変えていくあいうべ体操で、これまで最短二日で花粉症の症状が軽減・改善という方が数名います。今回は、花粉症と口呼吸、そしてその改善方法について解説します。花粉症だけでなく、アレルギー性鼻炎、持続性鼻炎(通年性アレルギー性鼻炎)の方もぜひ参考にして下さい。
目次
花粉が鼻に入らないから口呼吸の方が良い?
テレビである医師が
「花粉症は、鼻から花粉を吸い込むから悪くなる、口呼吸をしたら花粉を吸い込まないから症状改善なる」と発言していました。
当時私も患者さん方から「本当ですか??」と良く聞かれたものでした。
さて、この内容にどれくらい信憑性があるのでしょうか。
検証してみましょう。
鼻の穴は三カ所ある
私たちの鼻には入り口と出口の二つの穴があいています。
入り口(といっても空気を吸うときですが)を外鼻孔といいます。これが左右二つあります。いわゆる鼻の穴ですね。入り口には鼻毛が生えていて、大きな異物(といっても見えるか見えないくらいの小さな異物ですが)をこしとることが出来ます。鼻毛はずっと鼻の奥まで続いているんじゃなくて、ほんの入り口(奥まで1cmくらいのところ)にあるだけです。
出口の方を内鼻孔と言います。ここからノド(咽頭)、気管へと空気が流れていきます。ブログでいつも紹介している上咽頭は、内鼻孔の上の部分です。
内鼻孔は一つ。
鼻の穴は、入り口が二股になっていて、その奥で合流して一本の管になり喉の奥へと繋がっているんです。つまり鼻の穴は合計で3つのあるんですね。
花粉くらいの大きさであれば、鼻でその多くの量が吸着、取り除かれると言われています。PM2.5くらいの大きさ(小ささ)になると鼻では素通りしてしまうとも言われます。
花粉症では、この付着した花粉に過敏症を起こしてしまって、かゆみ物質がぶわっと出てしまい、クシャミや鼻汁といった花粉症の症状になるんです。
では、花粉がここを通らなければ反応しないじゃないかと思いたくなるのは、なるほどそんな感じもしますからね。気持ちはわかります。
では、鼻をショートカットすれば「吸着できなかった」花粉はどこに行くんでしょうか??
味は鼻で感じている
さて、その前にごはんを食べるときのことを考えてみて下さい。
風邪などで鼻づまりをおこしているときは、まったく味がしなかったという経験を持っている人は多いでしょう。
感じたこと無い人は、鼻をつまんだ状態でごはんを食べてみて下さい。
クチャクチャとして、何を食べているかよく分からないと思います。そして、飲み込むときには鼻をつまんだままだと、とても飲み込みにくいことが分かります。
では、つまんだ手を離して下さい。
どうでしょう??
すぐに味が口の中に広がったと思います。
なぜ鼻をつまむと味がわからないのでしょうか?
実は、食べもののにおい、香り成分は、内鼻孔(奥の鼻の穴)を通って、鼻の方へ回り込み匂いを感じることにより味を感じているんですね。
鼻が詰まったり、鼻をつまんだりすると、この鼻への回り込む空気の流れが無くなるので匂いを感じ取ることが出来ず、味覚も低下してしまうのです。
これが花粉だったらどうでしょうか。
下の図のように、まったく口では濾過されなかった花粉は、内鼻孔を通って鼻の中へと侵入していきます。そして、そこでアレルギー反応が起こります。
口呼吸であっても、残念ながら花粉は鼻の中に入っていくのです。
しかも、まったく吸着されない花粉は残ってしまい、鼻の奥から回り込まなかった残りはそのまま今気管支へ流れ込みます。そして、気管支上皮でアレルギー反応を起こしてしまいます。
最近のアレルギーの研究でも、皮膚や上皮から入ったアレルゲンは、体から異物として認識され、腸から体内に取り込まれたアレルゲンは、反応しないようにTレグと呼ばれる制御性T細胞がリンパ球の働きを制限することが分かっています。
ですから、花粉症は口呼吸をすれば良いというのは、むしろ体に悪影響を与える場合がありますから注意して下さい。
鼻呼吸に変えていく「あいうべ体操」で花粉症が改善
もう10年以上前の話になりますが、私があいうべ体操を患者さん方に指導しはじめたときに花粉症で受診した方を紹介しましょう。
三月の一番花粉がひどい時期に、なんと三日間で薬を飲まなくなるほどに改善したというケースです。
30代の女性です。花粉症を発症してから数年間、毎年花粉症の時期は、抗アレルギー剤を服用しなければなりませんでした。
できるだけ薬を飲みたくないと思いながらも、止まらないくしゃみ、鼻水、目のかゆみでスギ花粉が飛散する時期は大変です。
抗アレルギー剤を飲むと、すこし眠くなったり、鼻が乾燥しすぎたりするのも薬を止めたい理由でした。
外来で、あいうべ体操を伝えて、漢方薬(小青竜湯)を処方しました。
まだこの時は、あいうべ体操を指導しはじめた初期の頃で、薬を飲まなきゃ症状を抑えるのは無理だろうと思っていたのです。
2週間後、彼女が外来へやってきました。
がいらいでこんなやりとりをしました。
もしまた症状がぶり返したら、受診して下さいねとお伝えしましたら、それから一回も受診することなく経過をしています。
この方が三日、それ以外に「二日で良くなりましたよ」という方を、私が知っているだけでも3名いらっしゃいます。
鼻が詰まるから口呼吸になる?
「鼻が詰まるから、口呼吸をしなきゃダメなんです」
という人もいます。そんな人でも、まず鼻呼吸を心がけてください。
なかなか鼻が通らないという場合は、「鼻うがい」も併用するといいですね。
鼻うがいは、ネットで検索するといろいろな方法がありますが、上咽頭までしっかりと洗うには
鼻から洗浄液を入れて、もう一方の鼻から出すこと
です。鼻から口にでてきたり、同じ鼻の穴からタレ出したりするのでは、上咽頭は洗えていません。
もちろん鼻の入り口部分だけでも洗えれば症状が改善することがありますから、まずは鼻うがいをお勧めします。
鼻うがいは、私は「サイナスリンス」を勧めています。これだと大容量で、上咽頭まで洗えるんです。
サイナスリンス、鼻うがいに関しては下のブログも参考になさってください。
マスク装着も注意して、鼻呼吸生活を
花粉症の時期は、普段よりも大きめの、そしてぴったりと顔に密着するようなマスクを付けてしまいがちです。
そうすると息が苦しくなり、口呼吸になってしまいがちです。
いつもマスクをしている生活も、口呼吸の危険因子なんです。
舌下免疫療法という治療を知っていますか、シダトレンというスギアレルゲンの入った薬を文字通り舌の下に置いてアレルゲンを吸収させ、体になれさせていくという治療です。
昔は、減感作療法といって注射で同じようなことをしていましたが、通院が必要だったりするためなかなか広まりませんでした。舌下免疫療法であれば、何回も受診しなくても良いのですから、患者さんにとっては楽ですね。
ところがこの舌下免疫療法も3~5年とある程度の時間がかかること、そして効果のない人も2割くらいいることを考えれば、まずその場から出来る「あいうべ体操」そして鼻呼吸を試してみる価値はあると思います。
シダトレンを服用しているのに治らないという人は、ご自分が口呼吸をしているかも知れないと注意して下さいね。
ちょっときついけど鼻呼吸をして、花粉が鼻水や痰と一緒に消化管の方に流れ込んでいく、そしてそれがもしかしたら免疫寛容を引き起こして、アレルギー反応を減らしているのかも知れませんね。
以下の書籍も参考になさって下さい。
ぜんそくを自力で治す最強事典 (薬はへらせる! やめられる!)
マキノ出版から2018年1月27日出版されました。治った実例がたくさん掲載されています。 口呼吸の弊害や上咽頭治療のこと、その他いろんなセルフケアで改善した症例が専門家の解説と共に学べます。
「口呼吸を止めて万病を治す~口テープ特典付き」発売中
これは私が2017年7月に出した本です。口テープの特典付き。こちらは息育、あいうべ体操についてです。 ゆびのば体操や姿勢についても解説しています。 フルカラーでとても分かりやすく見やすく仕上がりました。 こちらもどうぞよろしくお願いします。
https://mirai-iryou.com/shinryo/allergy/hay_fever/
https://mirai-iryou.com/aiube/
執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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