目次
ずっと吸入していたのに、2ヶ月で要らなくなった
今回は、短期間で喘息の薬が要らなくなった二人の方を紹介します。
※自己判断で薬を中断することは止めて下さい。必ず医師と相談の上減薬していくようにして下さい。
その前に「気管支喘息」とは
気管支喘息という言葉を知っていてもどんな病気なのかと言うことを知っている人は少ないでしょう。
簡単に気管支喘息についての説明をします。
気管支喘息とは、気道の慢性炎症を本態として、臨床症状として変動性を持った気道狭窄や咳で特徴付けられる疾患
です(日本アレルギー学会喘息ガイドラインより)。
これでは良く分かりませんね。
気管支に長引く炎症が起こり、気管支平滑筋収縮、気道の浮腫、気道分泌亢進、気道のリモデリング(再構築)により気道が狭窄(狭くなる)し、咳や呼吸障害を起こしている状態です。治療は、この慢性炎症を抑えたり(ステロイド薬、抗アレルギー剤)、気道を拡張させたり(β刺激薬など)が主体となります。
これでも良く分からないかも知れませんね。すいません。
家の水道に繋がってい水道管(気管や気管支)が細くなり、水(空気)が通りにくくなっていて蛇口から水があまり出てこない状態と思って下さい。
発作時には、気道(気管支など)はぎゅーと狭く細くなるのですが、発作がないときでも正常と比べて気道が狭くなっているので絶えず炎症を抑える治療をしていかねばならないわけです。
太いストローと細いストロー、どちらが飲み物を吸いやすいかをイメージして下さい。細い方が吸い込むのが大変ですよね。気管支が細くなってしまって息をするのがとてもつらくなってしまうのが気管支喘息です。
患者数は、全国で約900万人ほどとされています。この数は、年々少しずつ減ってきています。大人の場合は子どもの喘息よりも重症化しやすく、今でも残念なことに年間に1500人程度の方が亡くなっています。また最近では高齢女性が喘息で亡くなる例が増えてきており、男性よりも女性の死亡数の方が多くなりました。また65歳以上の高齢者の死亡数がとても多くなってきています。
以前は、気管支喘息は子どもの病気と捉えられがちでしたが、今では子どもも少なくなり大人の病気でもあるんです。
喘息の症状としては、息をするときにヒューヒュー、ゼイゼイと音がしたり、寝苦しくて横になって寝ることが出来ない(起坐呼吸)などがあります。
また発作を起こしてゼイゼイしていると思ったら、急にゼイゼイが聞こえなくなって静かになったので「一安心(^^)」と判断してしまったら喘息の重積発作の恐れがあるので要注意、というのは医師国家試験ではよく見かけました(今でも同様の問題が出題されるかは知りませんが)。
どうやって喘息の薬を止めていくのか
Kさんが受診したのは2017年の10月でした。
約2年前の出産後から喘息発作を起こすようになり、時を同じくして後鼻漏(「鼻水がのどの奥に流れる」、「鼻水がノドに下がる」、「鼻汁が喉に流れ込む」という症状)に悩むようになりました。
喉の痛みとイガイガする感じも24時間悩まされています。
気管支喘息と診断され、あわせて後鼻漏に対して投薬を受けていました。
喘息治療の吸入薬というとこの様なタイプを思い浮かべる人もいると思いますが、現在ではブリスターと呼ばれる薬剤が一回分ずつ包装されたケースを吸入する形になってきています。
- シムビコート(吸入薬)
- モンテルカスト
- ロラタジン
- クラリスロマイシン
- アンブロキソール
です。気管支喘息の投薬としてはごくごく普通の処方です。
それでも息苦しかったり、痰が絡んでいました。Kさんは煙草もお酒も嗜みません。
投薬を受けても症状は改善しないし、原因も良く分からない。
このまま薬を飲み続けるのも不安だし・・・だから薬を少しでも減らしたいという希望があり受診してきました。
もちろんですが、こういう時にも口呼吸、慢性上咽頭炎に関して気を払わなければなりません。
口呼吸で気管支喘息は悪化する
Kさんの希望は
- 後鼻漏がなくなること
- 薬を減らせること
の二点でした。後鼻漏で受診される方は多いのですが、それだけでは「死なない」病気ですし、内視鏡で見てもはっきりとそれほど多量でない場合もあります。
抗生剤や去痰剤が不効の場合は、特に治療もなされない場合も多いんですね。
ところが患者さん方は24時間その症状に晒されているのですから深刻です。
Kさんの上咽頭所見は、後鼻漏が目立ち、擦過後の出血も多量であり重症慢性上咽頭炎と診断できました。
ところで気管支喘息ですが、口呼吸で悪化したり、発作が誘発されることがあります。2008年に出たこの様な論文があります。
Enforced oral breathing causes a decrease in lung function in mild asthmatic. Respirology. 2008 Jun;13(4):553-8.
Enforced oral breathing causes a decrease in lung function in mild asthmatic subjects at rest, initiating asthma symptoms in some. Oral breathing may play a role in the pathogenesis of acute asthma exacerbations. Hallani et al.
タイトルは「軽症気管支喘息患者への強制的口呼吸は肺機能を低下させる」です。
安静時に口呼吸をさせると喘息症状を誘発したり、息苦しさが増すという観察結果が得られたため、口呼吸は喘息の急性発作の誘因となる可能性があるというものです。
気管支の平滑筋は、冷気に曝されると縮んでしまいます。これが気管支喘息の発作に繋がることがあります。
特に冬場の冷たくて、乾燥した空気に要注意なんです。
ですからKさんの治療は、まず「口呼吸」を止めることなのです。
受診して二ヶ月。セルフケアと上咽頭治療(EAT)により約2年間使い続けていたKさんの服用薬は「ゼロ」になりました。
後鼻漏も改善し、体調も上向きです。
薬を止めても喘息の重症度の指標となる1秒率(FEV1.0sec)も104%でした(喘息だと75%以下)。つまり正常値でした。
喘息患者さんは口呼吸になりやすい
もう一例紹介しましょう。
30代の女性Yさんも上のKさんと同じ時期に受診しました。
2017年に入って喘息、副鼻腔炎を発症し治療を受けていましたが、なかなか改善しないと言うことが受診理由でした。
これ以外にもいくつかの病気で投薬を受けています。
初診時に服用していた処方は
- レルベア(吸入薬)
- テオフィリン
- モンテルカスト
- フェキソフェナジン
- カルボシステイン
- ジフェニドール
- 漢方薬
でした。
上咽頭所見は、粘膜肥厚が目立ち、擦過時の出血も多量に認めました。重症慢性上咽頭炎です。
Yさんも口呼吸になりやすいサインがいくつか見受けられました。
この時に喘息の患者さん自身が「口呼吸になりやすい」という自覚を持つことが大切です。これも2008年の論文です。
Initiating oral breathing in response to nasal loading: asthmatics versus healthy subjects.Eur Respir J. 2008 Apr;31(4):800-6.
喘息患者と健常者における鼻呼吸抵抗に対する口呼吸の開始時期
と訳されるでしょうか。
Enhanced perception of nasal loading may trigger increased oral breathing in asthmatics, potentially enhancing exposure to nonconditioned inhaled gas and contributing to the occurrence and/or severity of bronchoconstrictive exacerbations.
喘息患者さんは、健常者に比べて口呼吸になりやすい傾向にあるから、そのことが気管支を攣縮させ症状悪化に繋がっているかも知れないとのことでした。
さて「自分が口呼吸患者だ」と認識できたYさんですが、二ヶ月後どうなったでしょうか?
そうです、めまいに対して処方されていたジフェニドールと漢方薬以外の吸入薬や抗アレルギー薬は全廃することができました。
上咽頭所見も確実に改善しています。
という会話がありました(^^)
月々5000円の薬代って結構な値段ですね。年間にすると6万円!
少しでも減ると嬉しいですね。
そのために口呼吸防止、だから「あいうべ体操」
あいうべ体操は無料!フリーです。
最近、年間の収入が800万円を超える人が増税になるというニュースがありましたが、その増税分が6万円程度だそうです。
喘息の薬を止めることが出来たら、5000円×12ヶ月の合計60,000円でその増税分を減った薬代でまかなえることが出来ます。
ここは是非とも薬を減らしていきたいところですね。もちろん減らすときは担当医と相談しながらですよ。
喘息の増悪因子に「口呼吸」がはいってくる?
医療機関を受診して治療を受けている方々は
「風邪に注意してくださいね」と言われますが「口呼吸に気を付けてくださいね」と言われることはまずありません。
通常喘息の増悪因子(悪化させる原因)は
呼吸器感染症、アレルゲン、運動や過換気、気象条件、薬物、食品・食品添加物、アルコール、煙などの刺激物、二酸化硫黄・黄砂、ストレス・過労、月経などが挙げられます。
これらを避けることが大切と言われますが、そうすると日常生活が難しいですね。
そして、これらの中に「口呼吸」が入っていないのです。でも上に挙げた2008年のHallaniの論文を見ると「口呼吸は喘息を悪化させる」のは明白なんですが。
これらの増悪因子の中で口呼吸と結び付けることができる言葉として強いて挙げるなら運動・過換気でしょうか。
過換気は鼻呼吸では起こりにくいので、過換気は口呼吸と言えます。また激しい運動は口呼吸になってしまいがちですね。
2016年にはながはまスタディ(Nagahama study)として9000人を超える児童を調べた結果、口呼吸とアレルギー性鼻炎が併発すると気管支喘息の発症が薬4.1倍になることが示されました。
Mouth breathing, another risk factor for asthma: the Nagahama Study.
Allergy. 2016 Jul;71(7):1031-6
タイトルは
喘息のもう一つの危険因子 口呼吸:ながはまスタディ
です。まさに口呼吸が喘息発作に関与していることがどんどん明確になってきているんですね。
さらに口呼吸を防止するのは、喘息の一番の増悪因子である呼吸器感染症の予防にもなりますから、喘息発作を抑えるには「口を閉じる」すなわち「鼻呼吸」がとても大切になってくるのです。
気管支喘息のセルフケア、あなたの元気の参考になれば幸いです。
あいうべ~~~(^^)
ぜんそくを自力で治す最強事典 (薬はへらせる! やめられる!)
マキノ出版から2018年1月27日出版されました。治った実例がたくさん掲載されています。
口呼吸の弊害や上咽頭治療のこと、その他いろんなセルフケアで改善した症例が専門家の解説と共に学べます。
参考にして下さい。
https://mirai-iryou.com/aiube/
執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
クリニック案内
amazon著者ページ
今井院長facebook
今井院長Twitter
今井院長Instagram
コメント