病巣疾患としての慢性色素性紫斑

この度、慢性色素性紫斑についてのみらいクリニックの取り組みが新聞各社に紹介されましたのでご紹介します。

こちらは石川県の北國新聞ですが、北は釧路新聞(北海道釧路市)、南は八重山毎日新聞(沖縄件石垣市)などまさに日本の南北にわたって随時掲載されていきます。

「足の紫斑、口や鼻の炎症原因」

北國新聞記事

足に師範が現れる~歯周病やのどの炎症が原因に

八重山毎日6月9日慢性色素性紫斑

ところでこの慢性色素性紫斑ですが、どの様な病気でしょうか。

以前の固定ページをご覧下さい。またヨミドクターでも記事を書いておりますのでご覧いただけると分かりやすいかと思います。

ヨミドクター 20年悩んだ頑固な下肢の出血 原因は思いがけない場所に

今回の新聞では、固定ページの写真を解説しましたが、これまで25例ほどの慢性色素性紫斑の治療を経験しました。

では治療法はと言うと、こちらのヨミドクターの別記事をご覧いただきたいのですが

医療大全 慢性色素性紫斑(ヨミドクター)

【治療の方法】
根治的な治療法は今のところありません。対症療法的に、血管強化薬、止血薬、抗プラスミン薬などが使われます。副腎皮質ステロイド薬の外用が有効なことがあります。
長時間の歩行や立ち仕事を避けます。静脈瘤を伴う例には弾力包帯、弾力ストッキングをすすめます。慢性かつ進行性で一進一退を繰り返し難治性ですが、自然軽快もありえます。

基本的に治療はない、とされています。あるいは、治療の必要は無いと書いてあることもあります。いやいや、そんなことはありませんのでこれから希望を持って読んでください。

とくに「治療の必要は無い」はちょっと残念です、人前に出るのが辛いといった副次的な問題を抱えている患者さんも多く、それに対して「放置で」とはいうことは

慢性色素性紫斑にはいくつかの分類があります。

  • シャンバーグ病、
  • 血管拡張性環状紫斑
  • 紫斑性色素性苔癬状皮膚炎

などがあり、それぞれ紫斑の出方も変わっています。

この70代男性のように極小~小さな紫斑がたくさん散らばって遠目からは赤い皮膚の発疹のように見えるもの。皮膚の痒みを訴えることがあります。

慢性色素性紫斑例

こちらは80代男性ですが、極小の紫斑があちこちで塊をつくって一つ一つの紫斑がつぶれて境界が不明瞭になり湿疹のように見えるもの。皮膚に付いたシワからも分かるように弾性ストッキングをはいていますが、紫斑の出現を止めることができないでいます。

慢性色素性紫斑例

50代女性、このように極小の紫斑があつまって大きな湿疹に見えることがあります。

慢性色素性紫斑例

あるいは、この40代女性のようにある程度大きな紫斑(直径1~2mm)が散在性に存在するものなどいろんな形があります。特徴的なのはほとんどが下半身に多く、上半身に出ることはありません(おそらくはあるのでしょうが、私は見たことがありません)。

治療前 色素性紫斑

命に別状は無いと言われても、やはり素足を出すような場面では躊躇してしまうものです。

慢性色素性紫斑の場合は、50代以降の発症が多いのが特長です。

紫斑といえば、小児ではアレルギー性紫斑病(IgA血管炎)があります。私が学生の時にはアナフィラクトイド紫斑病やヘノッホ・シェーンライン紫斑病(Henoch–Schönlein purpura:HSP)と習いましたが、現在ではIgA血管炎と呼びます。

このIgA血管炎ですが、病巣疾患により起こることがあります。写真は10代女児ですが、IgA血管炎の診断を受け受診しました。

IgA血管炎受診時

上咽頭部には激しい炎症を認め、EAT(上咽頭擦過治療、Bスポット治療)時の出血は写真のようになりました。

EAT

根気強くEATを継続していくと紫斑の消失を得ることができました。この様に血管炎も何らかの免疫異常、アレルギー機序を介して血管の脆弱性(ぜいじゃくせい)を引き起こしていますから、その免疫異常の原因の一つと捉えられる原病巣の問題が解決できると治癒に向かいます。

IgA血管炎 治療後

もちろん原病巣は上咽頭だけではなく、扁桃や口腔内病変(たとえば根尖膿疱や歯髄神経治療後、虫歯など)でもおこりえます。

上咽頭炎治療(EAT)で紫斑が改善

EATにより紫斑が改善する事が見込まれるのですが、半年から1年ほどの治療が必要なことが多いですね。今回は比較的早く治療効果が出たケースをご覧いただきます。

上でも紹介した40代女性です。特に誘因無く紫斑が出現し、いくつか皮膚科を回りましたがあまり芳しい結果は得られませんでした。もちろん命に別状はないと分かっていますが、人まで足を出すことが憚れるので何とかしたいと受診してきました。その時の写真がこちらです。

治療前 色素性紫斑

これは左下腿ですが、同様の紫斑が両脚に見られます。かゆみはありません。見た目だけの問題です。

咽頭内視鏡では上咽頭部に炎症を認め、EATを開始しました(もちろんセルフケアも)。

3ヶ月後には新しい紫斑の出現はほぼ見られなくなり、「足を人前に出せる」と喜ばれました。その時にはEATによる上咽頭部の擦過も極少量になっていました。

治療後 色素性紫斑

慢性色素性紫斑は、けっして治らない病気、治療法のない病気ではありません。病巣疾患として原病巣が分かると改善する事が多々あります。

EATであれば現在なら全国の耳鼻咽喉科、内科でも施行できるようになりましたし、口腔内病変であればJFIR(日本病巣疾患研究会)に所属する歯科医院であれば快く相談に乗ってくれると思います。諦めずに治療に取り組んでください。

執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール

今井 一彰
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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