棺おけ足とは足指の変形で最も多い「内反小趾」に加えて「外反母趾」が加わった状態です。
こうなると足の健康は危険信号です。膝や腰の痛み、猫背などの姿勢の問題が起こる可能性があります。
内反小趾、外反母趾は足指の変形です。では、どうしてこんな状態になっても気がつかないのか。そして棺おけ足になってしまったらどのように改善していけば良いのかをお伝えします。
外反母趾は痛くない
みらいクリニックには毎日たくさんの足指難民が受診します。足指と言っても症状は様々、外反母趾や内反小趾といった足指の問題から、モートン病、足底筋膜炎などの足裏に出てくる症状、膝痛、腰痛、猫背など足指とは一見関係なさそうな症状、さらには原因不明の歩行困難や脳卒中の後遺症、インソール作成の要請などさまざまな要望にあふれています。
ところで外反母趾は歩くたびに親指の付け根に痛みが走ると思っていませんか。実は、あまり痛くないんですといったらどうでしょうか。
外反母趾は変形が始まる頃くらいから痛みがひどくなり、変形が進んでしまったら痛みが落ちつく状態になります。
ひどくなると痛みが軽くなることがあるんです。
これが棺おけ足があちこちで生まれる一番の理由です。
外反母趾と同じくらいにポピュラーな病気である虫歯で考えてみましょう。
虫歯の初期は痛みがありません。だから学校検診などで虫歯をチェックするんですね。
とても初期から痛みがあればなにも専門家が見つけなくても痛みを指標に歯科医院を受診すれば良いのです。
この初期虫歯の痛くないときに見つけてもらうなり、受診するなりができれば一番いいですね。
治療もすぐに済むでしょうし、もしかしたら歯を削らなくても良いかも知れません。
ところがここでみのがしてしまって徐々に虫歯が深くなり歯の神経に当たってしまうようになると痛みが出てしまいます。
ここで多くの人は歯科医院へ駆け込みます。まぁここまでは許容範囲。
さらに虫歯が進行すると神経が抜けた状態になって逆に痛まなくなってしまいます。
痛む神経が無いからですね。こうなると治療は大変です。歯そのものを抜かなきゃいけなくなるかも知れません。
足指もほとんどの変形は痛くありません。かがみ指や寝指も痛みを起こすことはありません。
ただし膝や腰、姿勢など別の場所に病気や症状を起こす可能性があります。
棺おけ足で腰痛
これは頑固な腰痛で受診された70代の女性の足です。
内反小趾に外反母趾、見事な棺おけ足です。特に左の方がヒドイのが分かります。
左の膝痛もあります。
ところがこの足でもまったく足指には痛みがありません。
ですから、「外反母趾ですよ」と告げても、「えっ私外反母趾ですか??まったく痛みは無いんですよ」と答えが返ってきます。
痛いとか痛くないでは重症度は判断ができないのですね。
ここまで足指が変形しても変形した部分に痛みが無いことがほとんどです。
でも、変形が始まった頃にはどうでしたかと聞くと「昔はちょっと痛かったけどガマンしていたら良くなった」とか「幅の狭い靴を履かないようにしたらすこし痛みが楽になったのでそのままにしていた」という答えが返ってきます。
その時は痛みがあったために靴を変えたり、生活習慣の改善に取り組むのですが「のどもの過ぎれば熱さ忘れる」で、痛みが少し楽になるともうケアをしなくなってしまいます(念のため私も同じです・・・)。
外反母趾との所にちょっと痛みが出るとか、すこし赤くなって腫れるというくらいの時に何らかの対処ができればそれ以上悪くすること無くケア出来るのです。
対処できることを列挙してみましょう
- ストッキングや厚手の靴下など足指を変形させるようなものをなるべくはかない
- 紐靴にする(できればインソール(中敷き)を取り出せるもの
- 靴のサイズは適切なものを(取り出したインソールにしっかりと全部の足指が乗ること)
- 靴紐をきちっと締める
まずはこんな所でしょうか。
悪くしている原因を取り除くことが一番目にすること。ストッキングなどで足指を締め付けないこと、サンダル・ハイヒール、ミュールなどの着用は短時間にすることです
そして、靴選び。これが難しい。
「痛みと姿勢の外来(フットケア)」を受診される方の8割以上の方は靴のサイズを間違っています。適切なサイズを選ぶことです。
私は23.5cmです、なんて決めつけていませんか?
あなたの本当の足のサイズを知っていますか?
足のサイズは、一日の内でも、その時の体調によっても変わりますから、自分のサイズをこれだ!と決めずに購入するときは毎回サイズを測ることを勧めます。
そして靴紐。靴を履く度にしっかりと結び直すことをオススメします。
棺おけ足からの脱出はそれほど簡単では無いんです。
でも今の足でずっとこれからも歩くことを考えればきちんとケアしたいものですね。
裸足が危ない
えっ締め付けるのが悪ければ裸足が一番よいのではと思いますね。
でもこの裸足が危ないのです。
それはもうすでに変形が起きているからなのです。
この夏も「暑かったからサンダルを履くことが多かった」とか「室内は裸足で過ごした」というセリフをたくさん聞きました。
そして皆さん悪くなっていました。
例えば足先が広がりすぎてしまっている状態を開張足と言いますが、骨と骨をつなぐ靱帯が伸びてしまっています。
前側アーチが崩れてしまっていますから、足裏にタコができたり、ちょっと歩くと疲れたりという症状が出ます。
開張足の状態で歩きフローリングなどを歩き続けると足裏の同じ部分を床で擦ってしまいますからタコができます。
足指が変形する前の子どもであれば裸足は大いに推奨されますが、これはすでにアーチが崩れてしまった大人はその重い体重を支えきれないのです。
裸足だから良い、と言うことはありません。
裸足で膝痛が悪化
ゆびのば体操などで変形性関節症による膝痛が改善していたUさんです。正座も出来るようになりお孫さんと遊べるようになりました。
この夏は暑かったことから裸足で過ごすことが多かったそうです。
そして・・・夏の終わりに、それまで何とか良い状態を保っていた左膝が見事に腫れ上がってしまいました。
一時は病院で膝の水を抜いてもらおうかとも思いましたが、裸足で過ごしたこと、足指のケアを怠っていたことが原因だと気づきゆびのば体操をきちんと行うことにしました。
そうすると徐々に膝の腫れが引いてきたのです。
こちらの写真は腫れが引いてきて何とか受診して来られたときのものです。
正座をしてもらってもすこし前傾姿勢になっているのが分かります。
ゆびのば体操と関節治療を行うと1分もせずにお尻を踵に付けても膝痛が起こらなくなりました。
ちょっとしたことですが、これくらい変わってしまうのです。
裸足で固い平らな地面を歩くという”悪い生活習慣”が始まったことが今回の膝痛の原因です。
その原因を取り除いて元の状態に戻していくことが大切なんですね。
棺おけ足からの脱却を目指すには
成人の8割には内反小趾という足指変形が見られます。
その状態でさらに悪化しないような取り組みをすればずっと歩くことができる身体を維持できます。
脚力を保つことは健やかに老いていくことと同じです。
足育、ゆびのば体操、足腰の不調の改善方法について12月2日に講演を行います。
当日の内容は。
- 死ぬまで歩ける靴選び
- 自分の足サイズを知ろう
- ゆびのば体操の実際
等々です。今回は、講演時間にゆとりがありますからとても内容の濃いものをお届けします。
お申し込みはWEBからもできます。
会場で皆さんにお目にかかれるのを楽しみにしています。
執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
クリニック案内
amazon著者ページ
今井院長facebook
今井院長Twitter
今井院長Instagram
コメント