あなたの臨床が変わる細菌学2

あいうべ(息育)

Featured Video Play Icon

あなたの臨床が変わる細菌学2

落合邦康先生(日本大学特任教授)による「あなたの臨床が変わる細菌学」の解説の2回目です。

  1. 「ペリクル」から始まるデンタルプラークの形成
  2. プラークの成熟と石灰化(歯石)
  3. 歯周病と炎症反応
  4. 歯周病と骨吸収
  5. 歯周病と全身疾患~最新の研究から

今回は、「プラークの成熟と石灰化(歯石)」についてです。

早速動画をご覧下さい(がらがら声ですいません)

歯には、早期定着菌と後期定着菌という大まかに分けて二つの細菌群が存在するとのことです。

口は、粘膜などの柔らかい組織と歯という硬い組織の二つが存在するので、いろんな菌が繁殖しやすい環境にあるとのことです。

人体でこの様な構造になっているのは口だけ。

この柔い組織と硬い組織が接しているところが弱いんだそうです(いわゆる歯周ポケットですね)。菌にとってはここが「狙い目」!

だから口をキレイに保つことが大切なんですね。

歯肉の外と内では菌が違っている

歯科医院を受診すると、歯と歯茎の間(歯周ポケット)の深さを検査されますね。

チクチクと時間をかけてやってもらうこともあります。

あれ探針というものを使って20gの力をかけるんですって。手でやっているけど20gになるように練習するんだそうです。

そのポケットの深さが2mmまでは正常だけど、それ以上に深くなると歯周炎の可能性が・・・

細菌の大きさは、ミクロン単位(百万分の一)ですから、1mmの深さであってもかなりの深さになるわけです。

1000μm=1mmですから、1μmの細菌だと縦に並べれば1000個並びます。

1mmで1000個、5mmだと5000個です。大変です。

となると、歯周ポケットの奥深く(歯肉縁下プラーク)ではもう空気の届かない別世界が広がっていると言うことになります。

空気がないと、空気があったら生きて行けない菌(嫌気性菌と言います)がうじゃうじゃ、うじゃうじゃいるわけです。

この嫌気性菌が体にとって悪影響をおよぼすわけです。

歯科医で歯周病を検査してもらう重要性

歯周病と関節リウマチの関係が深いと言うことが分かってきていますが、関節リウマチの患者さんはそうじて口腔内環境が悪いんです。

これは、口腔内環境が悪いからリウマチを発症したのか、リウマチを発症したから口腔内環境が悪くなったのかという問題にもつながりますが、おそらく「口腔環境が悪いから関節リウマチを発症した」と考えられます。

ですから、関節リウマチの治療では(もちろんその他の病気でも同じですが)、歯周病チェック、定期的な歯科受診はとても大切なんですね。

特に歯肉の下にある嫌気性菌をどう始末するのかが問題となります。

もちろん菌も生きていかねばなりませんし、栄養も取っていかねばなりません。生きるための方法が、周りの歯肉にとって悪さを引き起こすんですね。

また歯周病だけではなくて、「根尖性歯周炎」も体に大きな問題をおこします。

これは、通常のレントゲン撮影だけでははっきりと見えないこともあり、時にはCTで確認することが必要になります。

歯周病で血が出るわけ

「リンゴを囓ると歯茎から血が出ませんか」なんて古いCMがありましたが、どうして歯周病になると歯茎が腫れて血が出るんでしょうね。

それは歯周病菌(Porphyromonas gingivalis)が鉄成分を必要としているからなんですね。

血液の赤い成分、赤血球の中には鉄がたくさん含まれています。

貧血の検査では、鉄分がどれくらい体にあるかを調べますね。

貧血の代表的な疾患と言えば、「鉄欠乏性貧血」ですから。鉄が少なくなると赤血球が作られなくなってしまって貧血になってしまいます。

それくらい血液の中は鉄分が含まれているんですね。

これが歯周病菌が大好き。

ところで、関節リウマチなどで持続的に炎症があると(CRPが上昇している状態)、炎症物質であるサイトカイン(IL-6)が増えます。

IL-6はヘプシジンという物質を出して鉄を体の組織にため込もうとします。

ただし血液中の鉄分は少なくします。

そして、慢性の炎症により貧血が起こります。

ここで貧血→鉄分欠乏→鉄剤だ、という治療をしてはどんどん鉄がたまっしまう状態になるのでアブナイです。

このように炎症の時に貧血になるのは、歯周病菌などの悪玉菌に「鉄はくれてやらないぞ」という体の反応なんでしょうね。

ちなみにヘプシジンという物質、結構最近見つかった鉄代謝に関するホルモンです(ペプチドホルモン)。

もちろん学生時代には習いませんでした。いまの学生達は、どんどん新しい発見がなされて覚えることが膨大になってきていますから本当に勉強が大変でしょうね。

さらにフェロミアという鉄剤の主要文献には私の論文が載っております笑

鉄剤の大量服用という症例でした。

鉄って、体にとってとっても大切な物質ですが、まだまだ分かっていないことがありそうですね。

虫歯菌の意外な移り方とは・・・?

これはぜひ動画で確認して下さい。

また腸内細菌の不思議な「伝わり方」まだまだ解明されていないようです。

一番奥の歯垢はセルフケアでは無理

歯と歯肉の間には「歯根膜」というコラーゲン繊維で出来た膜があり、これが強く菌が奥に入り込むのを防いでいます。

ただし、もつ鍋を食べてもコラーゲンが増えたりしないので注意して下さい(^^)

この歯根膜が崩れていって、歯周ポケットが深くなるともう自分でどうにかすることは無理です。

これは歯医者さんに行かなきゃいけません。

私も定期的に見てもらっていますよ。

歯周病菌などの塊がどんどん増えると歯石になります。

これも除去してもらう必要があるのですね。

落合先生は、毎日歯を磨いて3ヶ月毎に歯科医院を定期受診をされるのがお勧めと仰います。

口の中が綺麗になるとスッキリしますよね。

歯周病は、「治らない」ので「予防」することが一番大切です。

そして話は、歯周病と歯列矯正が体に与える影響が同じと言うことに発展していきますよ。

執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール

今井 一彰
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
クリニック案内
amazon著者ページ
今井院長facebook
今井院長Twitter
今井院長Instagram

関連記事

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA