咳に:メジコン飲むなら蜂蜜なめた方が吉

あいうべ(息育) 上咽頭

患者さん方からも「咳を止めて欲しい」という要望は多いのですが、効果的な咳止めってなかなか無いんです。

咳が止まらない、、、医者にいっても治らない、本当はよい薬があるのに隠しているのでは???

なんて思っている人もいるかも知れません。

 

ところが、やっぱり良い咳止めって無いんですよ。

 

ということで、

 

今回話題にする薬剤の名前はデキストロメトルファン、処方薬で言うとメジコンという薬剤の主成分。ドラッグストアに売っている「咳止め」と称する市販薬の中にもこの成分を含有するものが沢山あります。

錠剤だけでなくシロップやトローチといった剤型(薬の形)でも各種販売されています。

薬効に鎮咳作用(咳止め)があるこの薬剤が効果あるのかどうかと言う話です。

では、デキストロメトルファンの詳しい内容をみてみます。

 


一般名称:デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物製剤

効能・効果
1. 下記疾患に伴う咳嗽
感冒,急性気管支炎,慢性気管支炎,気管支拡張症,肺炎,肺結核,上気道炎(咽喉頭炎,鼻カタル)
2. 気管支造影術及び気管支鏡検査時の咳嗽

用法・用量
通常,成人にはデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物として1回15~30mgを1日1~4回経口投与する。
なお,年齢,症状により適宜増減する。
使用上の注意
重要な基本的注意
眠気を催すことがあるので,本剤投与中の患者には自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように注意すること。

医薬品医療機器総合機構サイトより


 

処方薬であるメジコン1錠には、デキストロメトルファンが15mg入っていますから、成人では一回につき1錠から2錠を一日1~4回服用することになっています。

 

デキストロメトルファンは、非麻薬性中枢性鎮咳薬といわれ、咳中枢に働きかけることにより咳止め作用を引き起こすと考えられています。痰がらみの咳ではなく、どちらかというと空咳の時に処方されます。また去痰薬などとあわせて処方されることが多いですね。

 

時に眠くなってしまうときがありますから、車の運転や集中力を要する作業などをするときは服用を控えた方が良いでしょう。

 

さて今回紹介するのは、こちらの論文です。

Effect of Honey, Dextromethorphan, and No Treatment on Nocturnal Cough and Sleep Quality for Coughing Children and Their Parents

咳嗽を伴う小児と保護者に対してハチミツ、デキストロメトルファン、無治療が咳嗽、睡眠状態に与える効果

となるでしょうか。

咳が続いている子どもに対してハチミツと咳止めの薬と”何もしない”、この3つを比較してどうなるかという研究。

2歳から18歳の子どもに対して寝る前に一回デキストロメトルファンを体重に応じて投与します。18歳で34mg(薬液にして10ml)投与したことになっていますから、メジコンを2錠ほど飲むことになります。この量は市販薬に含まれる量と同じ程度にあわせています。

これに対して使ったのはソバのハチミツ、薬液と同じ10mL(18歳)を飲みます。

無治療は無治療、経過観察です。

さて観察一日目と二日目の咳などの変化はどうなったでしょうか。

それを示したのがこちらのグラフです(グラフは当該文献から拝借、日本語と棒グラフの色つけは今井が変更)。

青が第一日目、黄色が二日目です。

左の棒グラフが咳の回数(頻度)、そして右が子どもの睡眠の質を表しています。

ハチミツ、デキストロメトルファン、無治療の順に並んでいますが、”すべて改善”しています。

しかも、ハチミツが一番いい結果をもたらしている感じですね。どうしたデキストロメトルファン!

グラフ中央上の部分にあるPというのは、確率を表しておりP<0.001は、統計学的に意味のある変化だということを示します。

そうなると、咳や睡眠の質に関してはハチミツもデキストロメトルファンも同様に効果ありと判定することが出来ます。

 

 

 

治療しなくても「効果あり」ということは、一番良いのは経過観察とも言えます。

 

 

 

服薬したら副作用や飲み合わせの心配をしなきゃなりませんが、無治療ではその心配は不要です。

そうなんです、服薬することによってかえって問題を大きくしてしまっている可能性があります。

ただこれは、「咳の頻度」と「睡眠の質」だけを見ていますから、デキストロメトルファンがたまたま力及ばずと言う結果じゃないのと言うこともありますから、他の計測した項目も見てみましょう。

※鎮咳薬と言うことを考えれば、咳の頻度が減ることもが一番の目的ですから、その役目は果たしています。

もちろんハチミツも無治療も咳止めに効果あり!です。

さて他の結果も見てみます。

グラフのB:咳の重症度、C:子どもを煩わせる程度、E:保護者の睡眠の質、F:各種症状の重症度

 

 

全てにおいてハチミツ、デキストロメトルファン、無治療で改善しています。

 

 

しかもその全てにおいてハチミツがよい成績を残しています。

となると、空咳が続いてもデキストロメトルファンには効果なく(無治療でも改善するから)、中枢性鎮咳薬というような難しい作用機序に騙されてしまって、「何だか効く薬」と思わせられている可能性がありますね。

 

このような小難しい作用機序が書いてあると、患者さんだけじゃなく医者も騙されてしまいます

 

 

咳が続いても慌てて服薬せず(咳は悪いものを出す反射だとすると無理に止めないことも治療の一つ)、無治療で経過観察することで良い、心配であればハチミツを寝る前にスプーン一杯ほど飲めば良い(その後は必ず歯みがきを)ということで済みそうです。

処方薬だから効果がある、立証されている、と言うことはありません。

盲目的に処方する医者も、調剤する薬剤師も信じ込んでしまっている場合がありますからご注意下さい。

少なくともデキストロメトルファン(メジコン)には鎮咳作用を期待しない方が良いでしょう。


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執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール

今井 一彰
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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