医師解説:掌蹠膿疱症とビオチン療法、本当のところ

上咽頭 治療

以下、動画の文字起こしです。

病巣疾患研究会、第7回の病巣疾患研究会に参加してきました。私は今回は シンポジウム、歯科と皮膚疾患、皮膚科とのつながり、ということで司会進行を仰せつかりましたのでお話ししてきました。

掌蹠膿疱症と言うと金属アレルギーとパッと思い浮かべる、あるいはネットで検索してもそういう風に出てきますから、そういうふうに捉える方がいます。それであせって金属の置換をする方がいらっしゃるんですけれども、 言葉は悪いですけれど”大きな効果はございません”。

あまり大きな効果はありません。

やはり掌蹠膿疱症は病巣疾患、病気の元がどこかにあって、それらが手だとか足に飛び火した疾患ですから、その病巣、慢性的な炎症の元となっている病巣を改善しないと良くならないわけですね。

ですからたとえば歯を一本抜く、抜くまでいかないにしても、根っこの病気・病巣(根尖病巣)を治療するとか、あるいは扁桃を取るとか、病巣そのものを取っちゃうとかということで改善していくわけです。

決して金属アレルギーだからなっているわけではない。

もちろん、たまにあるんですけども、私も年に1・2例ぐらいしか経験はしません。それほど少ない症例です。

もうひとつネット検索すると、掌蹠膿疱症と言うとビオチンが出てくるんですね。ビオチンとはビタミンHともいわれて、お肌のビタミンという風に言われるんですけれど、ビオチンが効く掌蹠膿疱症もそれほど多くありません。

逆に言うと言葉は悪いですけれども、ビオチンぐらいで治るんであれば、元々それほどひどくなかったとも言えます。

ネットを見るとビオチン、それからビタミン C、 組み合わせみたいなものが販売されているわけですけれども、元々ビタミン C が掌蹠膿疱症に効くわけではないので、摂ってもそれほど効果はありません。

もうひとつ、「ビオチン摂りました」となった時に、「効かないんです」って言うとこう言われるんですね。

「量が足りないんだ」と、「1日3g ではダメだ」と、「6gとか10g摂れ」と言われるわけですけれども、なかなか量を増やしたからといって摂れるわけではない。

そうすると次はミヤリサンですね。ビオチンというのは元々腸内細菌が出す物質ですから、それを出すためにミヤリサンを飲んだほうがいいよなどということも言われます。

むしろミヤリサンの方が効果があるかもしれないです。腸をきれいにする、腸内細菌叢を良くすることはとても良いことですから、ミヤリサンなんかを摂るのはいいことです。

処方してもらうとしたらミヤ BMとか、ビオスリーという名前で処方薬があります。

このビオチンなんですけれども、病院に行ってもなかなか皮膚科の先生も知らない場合が多いですから、ビオチンを自分で見つけて買っている方がたくさんいらっしゃるんですけれども、私が投与する時でも1日につき1.5g とかせいぜい3gぐらいで止めておきます。

量を飲んだからといって良くなるわけではなくて、やはり病巣を改善しない限りは良くならないわけですね。

ですからその病巣がどこにあるのかということをきちっと把握しないといけないわけです。

ビオチンと言うと「認められぬ戦い」だったかな、奈美悦子さんで一躍有名になった前橋賢先生の本が出てくると思うんですね。あの中でビオチン療法なんか勧められてるんですけれども、残念ながら一行も病巣感染症・病巣疾患という言葉は出てこないんです。だから漫然と何年もかかってなかなか治らないという現状があるわけです。

あれは掌蹠膿疱症という病名を知って、あるいはビオチンということを世に知らしめたことに関してはすごい功績があったと思いますけれども、病巣感染症・病巣疾患であるということが一切書いていないというのは、やはり本の内容としては欠けた部分が大きいのではないかというふうに思います。

むしろ、病巣をどうにかしていく、根治していくという方が掌蹠膿疱症に関しては治療として十分役立つという風に思います。
ですから私も患者さん方にビオチンを出すというのは、半分あるかないかぐらいですね。ですからビオチン飲んでも治んないよっていう人は全く心配することありません。元々ビオチン飲んでも治んなかったんですから。
ですからその治療の方針を変えて、病巣を検索していくということを目標にされたらいかがでしょうかね。

と言ってもなかなか信用する方いらっしゃらないと思いますので、例えばこういう状態

この方は看護師さんなんですよね。25年以上こうやって掌蹠膿疱症で悩んでおられるわけです。なかなか治んないとおっしゃるわけです。で私のところに相談にみえて、まずやるべきことは上咽頭の治療ですね。上咽頭の擦過治療、EAT。以前はBスポットと言っておりました。これもしっかりと擦らないとダメですよ、ピュッとお口から1秒とか、お鼻だけ2・3秒ちょちょっとつつくだけではこれは無理です。しっかりと擦る事が大事です。
この方がどうなったかと言うとですね、こういうふうに変わりますね。これが半年後ぐらいですかね、半年後。

お薬は使っておりません。上咽頭の治療だけです。

もちろんこの方は口の中に金属がたくさん入ってたんですけれども、金属の置換、 金属アレルギーだと言って、金属を置換するようなことはありませんでした。

お口の中の金属はそのままです。私は掌蹠膿疱症の治療の時にこう思うんです。思うと言うよりこういう治療の進め方をやっています。一番簡単なところから、そして一番お金のかからないところから、一番侵襲の少ないところからやろうと、そうするとほとんどの場合病巣というのは、上咽頭か扁桃かお口の中なんです。

ではこの中で一番安上がりで早く治療ができると言ったら上咽頭しかないんですよ。扁桃も一週間くらい入院しないといけないし、それなりのお金もかかっちゃいます。ただし扁桃摘出はすごく有効な治療法です。

もうひとつは口の中ですけれども、たくさん何かしら病巣があったときには、それなりの時間がかかってしまいます。

そして金属ですよとなっちゃうともっと時間がかかって、もっとお金がかかっちゃいますから、金属の置換はまだいらない。

上咽頭のほうが早いし、だいたい私のところだと24週あれば7割以上の方が改善しますので、それをやってなお治らない場合に、お口の中、もちろんお口の中の場合は、何か酷そうだなという時には並行してやりますけれども、お口の中を診ていったりとかですね、あるいは扁桃摘出を考えることもありますけれども、まず上咽頭の治療をすることが大事なんじゃないでしょうかね。

その際もしっかりぐりぐりっとやってもらうことですね。
ちょっとやってもらう、なんちゃってEAT、なんちゃって B スポット治療と言ってますけども、ちょちょっとやるのは上咽頭治療ではありませんので、ちょちょっと突くだけとか、あるい綿棒を差し込んで置くだけいうのはEATではございませんので、擦過治療ですから擦らないといけないわけです。

ぜひとも掌蹠膿疱症で悩んでいる方の場合は、ビオチンが効果ないといっても焦らずに増やすのではなくて、上咽頭の治療、炎症、原病巣がどこにあるのかなということを探していかれたほうが治療につながるんじゃないかというふうに思います。以上です。

みらいクリニックの今井でした。

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※参考にしていただきたいこれまでの記事。

https://mirai-iryou.com/shinryo/bspot/ppp/

執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール

今井 一彰
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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