目次
○△Vプロジェクト 第3弾その3
さぁ岡崎好秀先生、益子正範先生に聞く、その3です。
第1回、第2回は、下記リンクを参照して下さい。
元気な子ども、鼻呼吸の子どもを育てていきたい○△Vプロジェクトです。
○△Vプロジェクト 岡崎・益子先生に聞いてみた その1
○△Vプロジェクト 岡崎・益子先生に聞いてみた その2
また○△Vプロジェクトについてはこちらを参考になさって下さい。
その3も楽しく勉強して行きますよ~~~~
生まれながらのV字型上あごは、お母さんのお腹に問題が!?
V上あごや過蓋咬合が増えていると第三弾その2でお話をしましたが、その原因として考えられることは何があるんでしょうか。
益子先生は、それは妊婦さんの座り方にあると言います。
上あごの発達今昔
ここで出てくる「石田房枝先生」は、益子先生の師匠であり、日本の赤ちゃん歯科の草分け的存在とも言えます。
上に示した、1881年発行のClinton Wagner著(耳鼻咽喉科医、結構偉い先生なんですよ、ココ参照)「Habitual mouth breathing its causes ,effects and treatment 習慣的口呼吸 その原因、効果、治療について」では、
The tongue lies in contact with the hard palateand the mouth takes no part as an air-passage
と書いてあります。
舌は、硬口蓋とくっついていて、口は空気の通り道とはならない
という意味です。
正に、「舌の正しい位置」についての記述があるんですね。
そして、この本の中には、口蓋に舌が接している乳児の割合として296人を調べて、32人が接していなかったとの記述があります。
割合にして90.2%です。今から100年以上前にどのような調査をしたのかその経緯は不明ですが、1割の乳児は、生まれてからすでに舌が下がっている、つまり「△上あご」や「V字上あご」になっていた可能性が疑われます。
その後、石田房枝先生の小児歯科臨床誌での論文に出会いました。
その中には、
しかし、1~2割くらいでしょうか
はじめから、見るからにとがったV字型のアーチをしている子に出くわします
とあります。
正に、100年の時を経ても△、V字上あごの乳児の割合はそれほど変わっていないことが分かります。
ところが益子先生は、これが「増えている」というのです。
しかも、生後まもなくの乳児の3割くらいにみられるといいます。
上の写真は、1歳4ヶ月の乳児の上あごの模型です。
V字型上あごが特徴的ですが、すでに歯並びが悪くなっています、いわゆる歯列不正という状態です。
この上あごの上に育つ鼻の状態はどうなっていくのでしょうか。
口呼吸まっしぐらとも思える上あごです。
益子先生の指摘は、すでに母体内、胎児の内に「上あごの変形、発育不全が起こっている」ことを示唆します。
これは見過ごすことが出来ません。
ではなぜ、胎児の内からあごの発育不全が起きているのかというのが今回の話の大切なところになります。
問題点として
・骨盤が狭くなっている、歪んでいる
ことが挙げられます。そうすると胎内での環境が変わってしまっています。
お腹の中での指しゃぶりなどが出来ずに(骨盤内が狭いので)、腕を吸っている痕が付いた状態で生まれてくる赤ちゃんもいるようです。
日本の赤ちゃんは世界一小さい
日本の赤ちゃんは、世界一小さく産まれてくると言う報道がされました。
妊婦のやせ願望や、「太っちゃいけない」という強迫観念からきちんと妊娠中に満足な食事をしないことも原因だと推察されています。
そして、「運動不足」。
姿勢を維持するインナーマッスルが減少してしまって、良い姿勢を保つことが出来ないのも骨盤の状態を悪くする原因かも知れないと言うことです。
骨盤の形を安定させるために今すぐ出来ること
みらいクリニックにはフレイル外来があります。もともとは、高齢者、介護の前段階にあるような方を対象にしているのですが、若い女性や子ども達でもすでに「フレイル状態」になっていることも少なくありません。
この写真ですが、良い例のように、きちんと坐骨の上に背骨を立てて、背筋をまっすぐするのも「骨盤を変形させない」ためにも良いことなんですね。
気がついたら姿勢を正す、きちんと坐骨で座るという「当たり前」の動作を心がけたいものです。
V字上あごの原因は座り方?骨盤の状態?
V字上あごの赤ちゃんが近年増えてきているのは、事実ですが、その理由・原因はまだまだわかっていないことが多いようです。
でも、益子先生の印象だと「座り肩が悪い」「体力が無い」お母さんに多いと言うことです。
抱っこの仕方によっても上あごが変わる
赤ちゃんは、出産後もお腹と同じような状況を一年くらいは保って上げた方が良いと言われています。
抱っこしている時に、がくんと首を後ろに垂れて「口がぽかん」と空いている赤ちゃんを見ます。
こののけぞった状態は、△、V字上あごの誘因となるようです。
抱っこの仕方でも変わるんですね~~~不思議。
授乳の姿勢も大切!
大変だけど、将来のことを考えると抱っこの仕方にも気を配ることが大切ですね。
岡崎先生が仰るには、歯科治療の際にも体を丸める、子宮にいたときと同じような形になると治療がやりやすい、あごが良く動くということだそうです。
やっぱり手づかみ食べが大切
岡崎先生は、やっぱり手づかみ食べがとても大切と仰います。
先日ゆびのばセミナーの際に訪問した「ちゅらさん保育園」でもスプーンを遣いながらも、園児さんは手づかみ食べも器用にやっていましたよ。
ここの2歳児さん達は、みなテーブルが汚れない。
一人で食べているのに汚さないいんですね。関心関心。
手づかみ食べをする子は、歯ブラシも器用に出来るんですって。
栄養学から食事学へ
授乳する時に、完全母乳(完ぼ)なのか混合なのかなんて議論されますが、完全母乳であってもしっかりとした上あごが出来るかどうかは分かりません。
それは、おっぱいの質は良くても、お母さんのちくびによっておっぱいが「出過ぎること」もあるからです。
おっぱいを飲む時は、赤ちゃんがベロでしごく(吸啜:きゅうてつと読みます)ことが大切です。
ぎゅーぎゅーとちくびをしごくので、舌の力がついて、そしてその乳首を上あごに押しつけますからうわあごの形が良くなっていくんですね。
これが「出過ぎる」おっぱいだと、しごかなくても良い、だらだらとあふれるおっぱいを待っておればいいわけです。
そうすると舌の力はつかない、上あごの形も良くならない。
おっぱいの質は良いけれど、あごの発育は悪いという状態になってしまいます。
だから栄養のことだけじゃなくて、食べることも考えた・含めた「食事学」が大切になってくるんですね。
床に足のつくサイズの椅子を
ちなみに、「ちゅらさん保育園」では小さな、かわいい椅子にみんな座っていました
そして両方の足は床についています。
足が床につくかつかないかでも「咀嚼力」が変わります。
もちろん足が床についていた方が良いのです。
足が床につかずにブラブラしている状態だと、噛む力も弱まるし姿勢も悪くなります。
そして話は動物園へ・・・
ここから岡崎先生の話の真骨頂。
旭山動物園の給餌(えさやり)の話に話題が移ります。
なぜ旭山動物園の動物たちは生き生きとしているのか。
行動展示で有名になった旭山動物園ですが、ニホンザルの猿山の一角に餌を「隠した」木くずが敷いてあります。
これが採食行動(餌探し)にとても大切とのこと。
私も2012年に岡崎好秀先生のご紹介で、小菅正夫先生と一緒に旭山動物園園内を回らせていただきましたが、本当に動物を生き生きと活動させる仕掛けがあちこちにちりばめてありました。
子どもで言うと「食べる意欲」「空腹感」を味合わせることもとても大切なんですね。
やっぱり私たちも動物ですから。
この後の話は、「ハイハイとつかまり立ちの話」などどんどん広がっていきますよ。
ぜひ動画をご覧下さい。
岡崎先生は、どこからボールを投げてもピシッ~~っといろんな話題で返してくれます。
スゴいなあ。
執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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