ソックスもパフォーマンスを上げる貴重なアイテムです

足指のばし‐ゆびのば

スポーツのフィジカルパフォーマンスを上げるために重要なものは何でしょうか。そう、道具ですよね。

以前シドニーオリンピックや北京オリンピックにおいて競泳で素材競争が繰り広げられたことが話題になりました。それほど道具は大切なんですね。

一般的な運動のための道具というと、靴やサポーター、インソール(中敷き)などがあります。これらは多くのスポーツで使われています。これらの機能性はフィジカルパフォーマンスに影響を与えるのはどなたも理解できると思います。

今回は、サポーターとしてのソックスについて考察してみます。

体を預けるのに値段が安い杖は信用がおけない

足の手術後のリハビリで松葉杖をついてきたAさんが「ロフストランド杖の練習を始めようと思っている」と教えてくれました。

ロフストランド杖とは、一本杖で手を握る部分と前弯を固定する部分がある杖です。松葉杖のように両手が塞がらないのが利点です。

いまかず
どれくらいの値段にするんですか
Aさん
5000円くらいですね
いまかず
そんな価格でもあるんですね
Aさん
安いのは3000円のもありますよ
いまかず
3000円のは怖いなあ、体を支えるものだからねえ
Aさん
そうそう、安すぎても何だかコワイよね

道具においてはすべて同じことが言えます。

安いのはソレなりの理由があるわけで(高いから機能性が高まるわけでもありませんが)、しっかりとしたものを購入しようと思えばそれに見合った価格が必要になります。

ソックスも道具、パフォーマンスを上げるための重要なアイテムと捉えて下さい。

例えば、筒状に包み込み足指の動きを制限するチューブソックスでは体のしなやかさに違いが出てきてしまいます。

では、指の股が分かれていれば良いのかというと、チューブソックスよりはまだマシですが、ただ5つに分かれているのが、機能性を持った状態に保つように分かれているのかでは違いが出てきます。

ちょっとの間しか使わないのであれば(医学的には「姑息的手段」)であれば安価な機能性に劣るものを使用することは仕方ないと思いますが、体のことを考えるならやはり「安物買いの銭失い」という状態にならないことが望ましいですね。

左膝痛と歩行困難のケース

右脚と左膝の痛みで歩行困難になった50代女性のケースを紹介しましょう。

20年ほど前に左膝の半月板を痛めて手術の既往があります。右脚は、一年ほど前から痛み始めて歩行時には少し引きずるようになりました。

本人はかばい足ではないだろうかと感じていました。

すでに足指のこと考えて五本指ソックスをはいていていました。

この状態でも左側の内反小趾が目立ちます。右側と比較するとより内向きに小指が倒れてしまっています。

これから左膝が悪いことも推察できます(O脚になってしまっている)。

内反小趾:足指変形の一種で大人では8割以上に認められる。外反母趾の反対で小趾が内側に倒れている状態。小趾は一番外側にあり、履き物の影響を受けて変形を起こしやすい。下の図だと三角型になります。O脚や膝痛の原因となることがある。

出典:『足腰が20歳若返る 足指のばし』(今井一彰/著)

 

その場でゆびのばソックスをはいてもらうとこの様になります。

左の内反小趾の角度が緩やかになっていることが分かります。同様に右側も小指がより外側に広がっています。

非常に細かい差ですが、この小趾の位置が重要な意味を持ってきます。

もちろんレントゲンでは「異常なし」と言われるレベルですが、これが歩行状態に大きな影響を与えてしまうのです。

では、この内反小趾がどのように足に影響を与えているのか足圧分布図で見てみます。

まずこれが裸足の状態です。両側の母趾のみ見えており、右前足部に力が加わっていることが分かりますね。

中央付近にある赤い三つの●は重心の位置を示します。やや後ろ寄り(踵寄り)です。

次に、ご本人がはいてきた五本指ソックスをはいた状態で足圧分布図を見ます。

そうすると、着地している指の数が増えて重心が前寄りになりました。右に偏っていたものがいくらか左にも力をかけられるようになったことが分かります。

最後にゆびのばソックスをはいてみました。

さらに接地する指の数が増え、重心も前寄りになってきました。左の踵にもつよい接地点があったものが左の前側部に移りました。

この状態で歩行していただくとスムーズに痛みなく歩けるようになりました。

ご本人は「これだけで楽になるなんて不思議ですね」と驚いておられましたが、歩くための道具を変えたのですから、むしろ変わるのは当たり前なのです。

サポーターやシューズ、コルセットなどと同じようにソックスも足下を支えるとても重要な道具です。

これをないがしろにしている人が余りに多いことが気になります。

良い靴を履いていても靴下で悪くすることがある

機能性の高いしっかりとしたシューズを履いていても、オーダーメイドのインソール(中敷き)を装着していても、その中のソックスが筒状であれば足指の動きは制限されてしまいます。

そうするとスポーツのパフォーマンスが下がってしまうことに繋がります。

さらにいえば、動きに柔軟性が無くなれば、怪我をする確率も高まってしまいます。

シューズやインソールの重要性は多くの方が知っているのですが、シューズを履く前のソックスの重要性まで理解している人、そこまでこだわってスポーツをする人はごく少数です。

テレビや雑誌でインソールの説明をしているのを目にすることがありますが、チューブソックスをはいた状態でインソールを試しているのです。そのインソールの真価を発揮するための条件が揃っておらず大変にもったいない気がします。

上の足圧分布図で見たようにそれなりのパフォーマンスを出そうとすれば道具にもある程度こだわらなければなりません。

ところがサッカーや野球などのチーム競技の歳に、シューズのメーカーは指定は無いのに、チームソックスが指定されていることがあります。

ユニフォームとしてそろえることは大切だとは思いますが、そのソックスでパフォーマンス低下をおこしていることがあることをぜひ知って下さい。

お子さんの成長痛(例えばオスグッド病や鵞足炎など)の治療でも、シューズはどうにかなってもソックスが統一されているために治療にならないと言うケースを経験します。

膝や踵のサポーター、腰のコルセットと同じように足指の状態、機能を回復していくためのアイテムとしてソックスは、その他のスポーツ用品と同じようにとても大切なのです。

サポーターを購入するときに、安ければ良いという風な視点にならないですね。やはりある程度機能性があるものを選びます。

ソックスも同じなのです。

今回は、「靴下も靴もパフォーマンスを上げる貴重なアイテムです」と題してお伝えしましたが、この様な知識が日本のスポーツ界に当たり前のものとして広まることを願っています。そして怪我で好きなスポーツを止めることなく、いつまでも健康な体を保てる人が増えますように。

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執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール

今井 一彰
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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