登場したのは大阪の田中耳鼻咽喉科クリニックの田中亜矢樹先生、NPO日本病巣疾患研究会の理事でもあり、EAT(上咽頭擦過治療、Bスポット治療)における日本のトップリーダーといっても過言ではありません。
私も難症例に関しては田中先生にいろいろと指示を仰いでいます。
のどから来る頭痛?
これまでブログでも書き続けてきた慢性上咽頭炎の様々な症状ですが、今回の新聞記事では頭痛との関連でした。
頭痛に悩んでいる人々は科なりの人数に上ると言われ、その経済的損失も多大なものになります。
ところが「たかが頭痛で仕事を休むなんて・・・」と言われてしまうのも頭痛もちの人の可哀想なところ。
怪我などは一目見て分かりますから優しい言葉をかけてもらえますが、体の外に現れない症状や病気はその辛さが見えにくいために周囲から心配されません。
頭痛や後鼻漏、胃痛などたくさんありますね。
一般的に慢性的な頭痛の病名として上げられるのは、片頭痛、筋緊張性型頭痛、それらの混合型、慢性副鼻腔炎、群発頭痛、気象によるものなどがありますね。
そしてまず心配するのが脳内の問題です。脳の中はどうなっているのか全く外からではわかりませんから、頭痛が続く場合はCTやMRIで脳の中を1度しっかり見てもらいたいと思うのが人情です。
そこで脳内に特に問題病変が無ければ「いわゆる頭痛」と診断されます。
そして痛み止めの頓服やトリプタン系薬剤(ゾーミッグやイミグラン、マクサルトなど)、エルゴタミン製剤(クリアミンなど)が処方されます。
閃輝暗点や嘔気、鼻汁などのいわゆる古典的片頭痛の症状があれば片頭痛も分かりやすいのですが、ただずきずきと痛む、頭の片側だけが痛むと言った場合でもトリプタン系薬剤が処方されることも多々あります。
※日本初のトリプタン系薬剤であるイミグランが発売されたのが2001年でした。当時私は大学病院の総合診療部に勤務していましたが、片頭痛で悩んでいる患者さんの頭痛がす~~~っと取れていく様子を見て「すごい薬だ!」とビックリしたのを今でも覚えています。
ところがこのトリプタン系薬剤を飲んでも「改善したのかどうかわからない」という頭痛もあります(飲み方の問題などもありますね)。
そんなときどうするか・・・ガマンするというのが悩んでいる人の大部分です。
「頭痛のタネ」という言葉があります。頭痛を引き起こす面倒な事物ですね。
そうなると頭痛の原因というのは脳以外にもたくさんの原因があることに思い至ります。ストレス反応としての頭痛、アレルギー反応としての頭痛、調節障害としての頭痛などなど原因が目白押しです。
その中に「のどからくる頭痛」があるんですね。その他にも「目(緑内障など)からくる頭痛」「膠原病(側頭動脈炎など)からくる頭痛」など頭痛というありふれた症状でもたくさんの原因があります。
上咽頭を擦ってなぜ頭痛が改善するのか
EAT(上咽頭擦過治療、Bスポット治療)を続けて、上咽頭の状態が改善するとトリプタン系薬剤や鎮痛剤などが不要になるケースに多く出会います。
これにはいろいろな機序が考えられます。
- 慢性炎症による免疫異常による
- 炎症の関連痛・波及として起こる
- 脳内リンパ流の鬱滞
大きく分けてこの三つになります。
一番目は、新聞記事にもあるように何らかの問題で炎症が慢性化し慢性扁桃炎のように免疫異常を引き起こしてしまうもの。上咽頭部分の粘膜組織は、中下咽頭と違っています。おなじ「咽頭」と名前が付いていても粘膜表面は見た目(内視鏡)にも、顕微鏡的にも違いがあります。
上咽頭部の粘膜細胞は、抗原提示能をもっていることも分かっています(この辺りは難しいので省きます)。
二番目の炎症の関連痛としてですが、慢性上咽頭炎の見分け方に、胸鎖乳突筋の圧痛というものがあります。特に胸鎖乳突筋が頭部に付着する乳様突起の所に痛みが出ます。ここが以前ブログで紹介した完骨、翳風 というツボです。
この部分の圧痛は、おそらく上咽頭炎の関連痛としてのものです。これが僧帽筋や咬筋に及べば頭痛となることがあります。
そして三番目はリンパ流の鬱滞。
嗅神経のある嗅部から脳脊髄液が流れ出して咽頭部を伝わって排出されていることが分かっています。
この流出路にある上咽頭が炎症を起こして浮腫、腫脹の状態となり、脳脊髄液、リンパ流の流れが悪くなり脳の老廃物排出能が低下してしまうことが考えられます(だから舌を動かす運動はとてもいいんですね、慢性上咽頭炎には「あいうべ体操」は欠かせません)。
これらのことから慢性上咽頭炎による頭痛が引き起こされるものと考えられます。
EATにより頭痛が改善した、薬剤の投与が無くなったという経験のある医師がほとんどでしょう。
この記事が慢性頭痛、原因不明の頭痛で悩む人たちの希望になりますように。
日本病巣疾患研究会の目指すところ
第3回の永野千代子先生、そして第4回の田中亜矢樹先生は日本病巣疾患研究会の理事をしていています。
日本病巣疾患研究会は、病巣疾患(病巣感染症)の観点から、医科と歯科、薬科の垣根を越えた交流を行っています。
色々な全身の病気が口腔内病変で起こりますし、顎関節症や歯痛、舌痛と言った口腔内病変が慢性上咽頭炎などによって生じます。
病変そこだけを見ていても見えてこないものを見ていこうという取り組みをしているのが日本病巣疾患研究会です。
堀田修理事長の「木も見て森も見る医療」の理念というのはこのことなんですね。
第6回日本病巣疾患研究会総会は2018年8月25・26日に東京で行われます。
25日の午前中は会員の鈴木公子先生(歯科医)による市民公開講座が予定されています。
参加費は無料ですからぜひお運び下さい。
執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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