IgA腎症と扁桃炎・上咽頭炎

読売新聞の医療ルネサンス「のど・口から来る病」の第二回目は「扁桃摘出し関節痛解消」と言うものでした。

うん??扁桃と関節痛と何の関係があるんだ??と思いますよね。

この一見つながりがなさそうな症状・病気だからこそ「病巣疾患」の概念が理解しにくいのですね。

ことわざで例えるならこうなります。

風が吹けば桶屋が儲かる

病巣疾患(病巣感染症)を一言で表すなら、これ以上のたとえは無いと思います。

一見つながりがなさそうに見えるけれど、よくよくつながりを見ていくと原因と結果がつながっていたというもの。

もちろんそのつながりは随分分かってきたとはいえ、まだまだ解明されていない部分もありますからこれからの研究が待たれます。

のど・口から来る病(2)扁桃摘出し関節痛解消

さて第2回目の話題になった反応性関節炎ですが、ことわざをもじるなら

「風邪が吹けば関節が痛む」です。

扁桃炎(風邪)になると炎症物質がたくさん体内へ放出されて関節痛が出たりします。

風邪の時に、古傷が痛むなどの経験や、インフルエンザの時の関節痛を思い浮かべて下さい。

あれが炎症物質が放出されている状態です。

それが慢性扁桃炎(慢性炎症)となると絶えず炎症物質が出て、あちこちの関節が痛んでしまって、関節リウマチなどの病気ではないかと心配になってしまいます。

この記事に出ている患者さんも、一時は歩けない程の関節痛だったものが扁桃摘出術により改善したというものでした。

病巣疾患に対する医師を含む人々の理解を阻んでいるものの一つに「時間的経過」があります。

つまり、扁桃摘出術と症状改善に時差(タイムラグ)があるのです。

例えばクスリを飲むと、数時間後に効いてきました。そうなると「薬のお陰だ」と分かります。

スネをぶつけました、すぐに同じ所が痛くなります。これも分かります。

扁桃を摘出しました、3ヶ月後に症状が改善しました

さて、では・・・どれが原因か分からないなあ、となってしまうのです。

この記事に出てくるB子さんも扁桃摘出術後3ヶ月して通院が無くなったとあります。

この治療における時間差が、疾病の繋がりに対する理解を阻んでいると私は考えています。

ですから、原病巣治療をすると3~6月程度は二次病変(原病巣によって起こされていると思われる疾患)の変化に注意しておく必要があるのです。

扁桃と歯周炎から腎臓病になる

さて、医療ルネサンス3回目はJFIR(日本病巣疾患研究会)理事でもいらっしゃる永野千代子先生(仙台赤十字病院小児科)が登場しました。

のど・口から来る病(3)扁桃と歯周炎から腎症

永野千代子先生のJFIRでのお話しはいつも明確で、そして分かりやすく、高度な内容を私たちに伝えて下さいます。

この記事に出てくるIgA腎症は、小学校で見つかることの多い病気です。

学校検診の時に「尿潜血」を指摘されるのです。これは腎臓の糸球体が壊れているかも知れないというサインです。

ただそれ以外に症状が出るわけでは無いので、そのまま放置されてしまうことがあることも確かです。

IgA腎症に対する扁桃摘出術ステロイドパルス治療は、NPO日本病巣疾患研究会の理事長である堀田修先生が開発した治療です。

これにより「不治の病」とされていたIgA腎症が「治る病気」になったのです。

永野先生は、自分は仙台にいて堀田先生が近くにいるという「地の利」があったと謙遜されますが、この扁桃摘出術ステロイドパルス治療を小児に応用して好成績を収められています。

今回は、慢性扁桃炎と歯周炎ですが、歯肉炎も原病巣として見過ごすことができません。

またIgA腎症に先立って紫斑病(ヘノッホシェンライン紫斑病HSP)が起こることもあります。このHSPも病巣疾患で、永野先生は、深い虫歯を持っているお子さんに発症することがあるとも仰っています。

IgA腎症には上咽頭も関与

さらに記事中には、上咽頭炎にまで踏み込んだ記述もあります。

扁桃摘出術ステロイドパルス治療を受けたにもかかわらず、腎障害が進んでしまう、尿潜血が続くということがあります。

その時は、慢性上咽頭炎を疑うことが大切です。

扁桃もしっかり取った、ステロイドパルス治療も行った、でもナゼ?

その答えの一つは慢性上咽頭炎が続いていることです。

慢性上咽頭炎治療はEAT(昔はBスポット治療と言っていました)と今では呼びます。

このブログを参考にして下さい。

上咽頭擦過治療(Bスポット治療)はEATへ

https://mirai-iryou.com/shinryo/bspot/

私も永野千代子先生や堀田修先生に福岡から患者さんを紹介することがあります。

仙台は、日本の中でも腎臓病に関しては一番でしょう。すでに仙台のある宮城県では数年前から新規の人工透析患者さんが減っているのです。

腎臓が悪くなり人工透析になってく最大の原因は糖尿病です。

そして、その次に多いのがIgA腎症による腎臓病です。

そのIgA腎症が「治る」と透析になる人が減るのです。

これは人生を大きく左右させる出来事と言っても過言ではありません。

まさにこれが上流医療、予防医療なんですね。

執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール

今井 一彰
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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