百歳を超える人は炎症が少ない
百歳を超える人をセンテナリアンと呼びますが、日本には6万人を超えるセンテナリアン、長寿者がいらっしゃいます。
このセンテナリアンは、血液の中のある物質が低いことが知られています。
それが「CRP」という物質。
CRPは、肝臓が作り出すタンパク質、細菌感染や膠原病など体の中の炎症があると上昇します(もうすこし知りたい方は、前のエントリーを参照)。
このブログエントリーの言葉に注目して下さい。私は、
欲を言えば0.05mg/dl、つまり検出限界以下
と書いています。
CRPの一般的な基準値は、0.3mg/dl以下です。
ただし、これはすこし高いと思われます。
検査の基準値というのは、絶対的なものではなく、その値に決定したのは結構いい加減だったりもします。
CRPは、本来体の中には”無い”はずです。
細菌がいても、「感染していなければ」排除する必要がありませんから、わざわざCRPを生み出す必要がありません。
私たちの体は、皮膚にも腸にも口にも至る所に「常在菌」がいます。
常在菌は、悪さをするどころか、他の悪玉菌から体を守ってくれていますからこれを排除するようにはなっていません。
共生の関係です。
上の検査表でも「0.05mg/dl以下」と書いてあることが分かります。
これは0.05~0.00の間の値ですよ、という意味なので0.04なのか0.01なのか分かりません。
そんな細かい値どうでも良いって??
まぁそうかもしれません・・・でも・・・
ノンアルコールビールだって「0.00%」と強調しているじゃないですか、0.05%でもノンアルコールなのに!!
ちなみにノンアルコール飲料の定義は国によって違いがあります。
日本では1%まで、アメリカでは0.5%まで、EUでは1.2%までがノンアルコール飲料の範囲になるのだそうです。
検査の基準値もこれと一緒で、「絶対的基準」というものがなく、ある程度恣意的に決められているところがあります。
0.05mg/dlより低い値の測定も可能に
さて、みらいクリニックではこの度、アークレイ社の「SpotchemBanalyst SI-3620」を導入しました。
ナゼかというと、安かったから・・・・・ではなくてもちろん別の理由もあります(国際歯周内科学会の先生方ありがとうございます)。
CRPですが、通常の検査会社では0.05mg/dlは「検出限界以下」となっており、測定できなかったのですが、この機械は0.01mg/dlまで測定することが出来ます。
極論するとCRPは低ければ低い方が良いのです。
ただしCRPは肝臓で作られますから、肝硬変などで肝臓の機能が弱っている場合は、肝臓が作り出すことが出来ませんから、CRPで判断することが出来ません。
0.3mg/dlのCRPでも高いと思われますから、出来るだけ低い値のCRPを測定したいと思って今回の導入に踏み切りました。
普通の医院(大きな病院でも)ではここまでのCRPを測ることはしません。
このCRPをhsCRP(高感度CRP、 high-sensitivity CRP)といいます。
好感度ではありません。
これまでも測定されていましたが(0.05mg/dlという値もhsCRPです)、より感度を高めて0.01mg/dl(0.00もあるとのこと)という値まで測定できるようになりました。
検出限界は0.01mg/dlに
血液中の炎症反応と言えば、その他にもSAA(血清アミロイドA蛋白)も炎症の状態がわかります。
SAAは、CRPよりも敏感に、そしてCRPが上昇しないようなウイルス感染でも上昇します。
じゃあ、両方測定したら良いじゃないかと思いますよね。
そう、私も思います。
ところがCRPとSAAの同時二つの測定は、保険診療では認められていません。
両方測る時もあるのですが、その時はクリニックの自腹になります(^^)
SAAは、0.0~8.0μg/mlが基準値です。
どうしてCRPでもいいのにSAAが必要かと言いますと、CRPは0.05mg/dl以下(検出限界以下)でも、SAAが高いことがあるんです。
これは炎症をシッカリと抑え切れていないことになります。
たとえばこんな状態。
潰瘍性大腸炎で治療中の方です。
この方のCRPは0.05mg/dl以下(検出限界以下)です。
ですから、通常は「炎症はない」と考えても差し支えありません。
でもこの状態で薬を減らしてもいいのだろうか、本当に炎症はないのだろうかとも考えられます。
そこでSAAを測定すると106.1μg/mlというかなり高い値が出ます(基準値は0.0~8.0μg/mlです)。
CRPと違ってSAAはこのような三桁の数値も出ます。
CRPでは120mg/dlという値はありません。あるのかもしれませんが見たことがありません。
おそらくもう命がないはずです。
医師にとって生涯のCRPの最高値は、ひどい炎症の患者さんを見た証でもありますから
なんて会話がされる時がありますが、100以上はないでしょう。50以上も聞いたことがありません。
SAAは、時には1000μg/mLまで上がることがあります。
この潰瘍性大腸炎の状態では、たとえCRPが正常値でも、減薬したり、気を緩めたりすることが出来ないと判断します。
この様な時にSAAは有用です(最近は保険でも切られてしまうことが多くなりましたが・・・自腹)
このSpotchemBanalyst SI-3620は、NICU(新生児集中治療室)で設置があると聞きました。
病院としては、コストがかかるので出来るだけ外注で済ませたいところですが、すぐに測定できて、0.01mg/dlまで出来ると言うことが評価されたとのこと。
新生児では、もちろんCRPは0.00mg/dlですから、これが0.03mg/dlとほんのわずか上がっていても「何らかの炎症があるかもしれない」という判断に使えると。
CRPが高いと余命が短いかも知れない
CRPは、上に挙げた感染症や膠原病だけではなく、肥満などでも上がってしまいます。
CRPは、出来るなら低い方がよいです。
ちなみに私も早速測定してみましたが、なんと0.01mg/dlでした!!
素直に嬉しいですm(__)m
CRPとSAAに関しては、この様な研究も行われています。やっぱり炎症値は低い方が良いですね。
関節リウマチの患者さんでもCRPが高い方がいますから、できる限り低くしたいと思っています。
このアークレイさんの機械、CRPを7.5分で測定できますから、診療を待っている間に出来ます。
ところがこの機械のキットで測定できるhsCRP(高感度CRP)は、最高値が4.0mg/dlまでなので、ひどい感染症や関節リウマチ患者さんには範囲が狭すぎます。ですから従来のCRP(こちらも充分高感度です)により判断することになります。
ちなみに通常の検査では0.05mg/dl以下(検出限界以下)の方のを測定するとスポットケムでは0.04mg/dlと出ました。
なかなかの精度だと思います。これでこれまでの検出限界以下の値も測定できるようになりました。
慢性上咽頭炎でのhsCRP測定で何か見えてこないかと期待しています。
執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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