万年風邪は上咽頭炎を疑って。抗生剤の乱用に注意。抗生剤は”風邪薬”ではありません

上咽頭 治療

こんにちはみらいクリニックの今井一彰です。
YouTube のご視聴ありがとうございます。
今日は患者さん方から多い質問についてちょっと答えてみたいと思います。

慢性上咽頭炎についてです。
慢性上咽頭炎、繰り返す風邪、万年風邪みたいな感じの方っていらっしゃるんですよね。ちょっと良くなったかなと思ったらまた悪くなって、ちょっと良くなったかなと思ったらまた悪くなってというのをずっと繰り返していて、なかなか良くならないということが結構あるんですね。
ですから治療していくと風邪ひかなくなりましたという風なことをおっしゃる方が多いんです。ところが風邪というのは急性上咽頭炎なんです。上咽頭というのはこの部分なんですね。

ここで(A)ウイルスなどが増殖するんですけれども、ここで急性に起こる炎症を急性上咽頭炎、いわゆる風邪なわけです。

慢性上咽頭炎は急性上咽頭炎と違うので、ここの組織がもう変わっちゃうんです。ちょっと難しくなっちゃいますけど、急性と慢性の違い、急性というのは修復するような炎症、修復される炎症ですけれど、慢性の場合は適応型の炎症と言いまして完全に元通りになることはありません。

この部分、上咽頭の部分で炎症が起きますから、例えばインフルエンザの検査のとき、みなさんも多分経験あると思いますけど、鼻から綿棒を突っ込んで ぐりぐりぐりっとここから取って、そして拭い液を取って検査するわけですよね。

でもそのときに痛いのはどこですか。ここ(B)なんですよ。喉が痛いですと言われるのですけれど、ここ(B)に炎症が起こっているわけではなくて、ここ(A)の炎症をここ(B)で感じているわけです。
ですからインフルエンザの時もここ(B)が痛かったとしても、喉がチクチクしたとしても、ここ(A)に炎症があるので、ここ(A)の拭い液を採るわけです。
急性の上咽頭炎と慢性上咽頭炎は違うので、慢性の上咽頭炎の場合は今言ったような万年風邪のような表現になってしまいます。
炎症を起こしている。炎といっても炎症反応が上がるわけではない。
特定の起炎菌がいるわけではない。なので後鼻漏があったとしても、
慢性上咽頭炎の場合は、ここからすごい大事、抗生剤はほぼ必要ありません。

もし慢性上咽頭炎で抗生物質がずっと漫然として処方されている場合は、私は治療としてはおかしいと思っています。

現に当院で慢性上咽頭炎と診断して抗生物質を出すことはまず100%ありません。
だって原因が分かっていない、炎症反応も上がらない、特定の起炎菌がない、たとえば起炎菌があったとしても、特定の細菌があったとしても、風邪を考えてみてください。風邪はウイルスが起こすものなので、もともと抗生剤・抗生物質は効かないんですよ。なのに抗生剤を出してしまう医者がいるわけですよ。これはすごく大きな問題。抗生剤の乱用。

もうひとつ、上咽頭炎自体は原因がはっきりわかっていないわけです。たとえば大気汚染とかでもなりますし、口呼吸だとかいろんな原因でなるんですけれども、起炎菌があるわけではない、わかるわけではないわけです。そこに炎症があるからといってやみくもに抗生剤を出すこと自体は、大きな間違いだと思います。

腸内細菌叢も当然変わっちゃうわけですし、使うことによって 耐性菌、その抗生物質に対する耐性菌が増えるということを考えたら、なるべくなら抗生剤は使わない。慢性上咽頭炎の場合は1回・2回はいいかもしれないけれども、何ヶ月も使うものではありません。

副鼻腔炎の場合、慢性副鼻腔炎の場合に、3ヶ月あるいは半年ほど少量のマクロライド、クラリスとかルリッド、クラリシッド、クラリスロマイシンみたいなのを使う時がありますけれども、それとは全く違うわけですから、慢性上咽頭炎で抗生剤を使うことは私は反対ですし、抗生剤を使わなくてもしっかりと良くなっていきます。

少なくともみらいクリニックでは抗生剤を使わずに慢性上咽頭炎は治ります。だってもともと起炎菌がないんですから。もちろん常在菌はいるんですけれども、それを起こしている細菌がいるわけではないので、それを殺したからといって治るわけはない。
そしてそれで治るんだとしたら、それまでに患者さんのエピソードとして、たくさん抗生剤を飲んでいますから治っているはずです。それでも治らないんだから、発想を切り替えて抗生剤はいらない。もし抗生物質を飲んでいる方がおられるとしたら、一度投与している、処方しているドクターに聞いてみることが私は必要だと思っています。これはあくまで私見ですけれども、少なくともみらいクリニックで上咽頭炎に対して抗生物質を出すことはありません。
無駄なお薬を使うことは誰のためにもなりませんのでご注意ください。

今日は風邪と違うという慢性上咽頭炎のお話ですけれども、この方々、慢性の風邪の方々がなんか風邪ひいたといって病院に行くんですよ、慢性上咽頭炎がちょっとひどくなると、そこでまた薬だとか去痰剤とか出されて、なんだか飲んで一時的に良くなったような気がするけれども、2週間後、1ヶ月後にまたぶり返す。それは風邪ではなくて、おそらく慢性の上咽頭炎です。

慢性風邪という風に言われてる人は、必ず 慢性上咽頭炎を疑うようにしてください。それを疑って治療すると、1ヶ月おきにいくとか、2ヶ月ごとに病院に行くという負のスパイラルから抜け出すことができます。

ぜひ、慢性上咽頭炎ということを知っていただいて、何回も病院にかかるという体づくりから、病院にかからない体づくりをしていっていただきたいという風に思います。
みらいクリニックの今井でした。
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執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール

今井 一彰
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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