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歯周病と骨吸収
日本大学歯学部特任教授・落合邦康先生のお話を伺う第四回目。
今回は、「歯周病と骨吸収」です。
大人の歯が抜ける原因の一位が歯周病、世界で一番多くの人がかかっている感染症が歯周病。
口が臭い原因になるのも歯周病。
歯周病は感染症であり、立派な病気なんですよ。
結構軽く考えている人、本当にアブナイです!(まぁ私もそうだったんですが・・・(^^ゞ
それでは動画をご覧下さい
歯周病の時に歯が抜けるのはなぜ
ある時ぽろっと指がもげてしまったらびっくりしますね。
ところが重度の歯周病にかかっていると、ひどい症状もないのに歯がグラグラしだして・・・なんてことがあるから大変です。
歯肉(歯茎)の炎症は、大きく分けて二つ
- 歯肉炎 歯肉にだけ炎症が起こっている状態
- 歯周炎 土台となる骨(歯槽骨)にまで炎症が起こっている状態
歯肉炎は、歯肉の状態を改善すると必ず良くなります(これが急性炎症でしたね)。
ここでとどめておくのが大切。
歯周炎は、歯の周囲の組織にまで炎症が及んでいる状態、だから歯”周”炎。
こちらは慢性炎症。
歯肉炎と歯周炎と一文字違いなのに、病気のステージとしてはまったく違います。
歯肉の下には、すぐ骨があるので歯肉が炎症を起こす状態だとそれがすぐ歯にまで影響をおよぼしてしまうんですね。
歯肉炎は、歯の周りがちょっと赤くなっているくらいの状態、全体がぶよぶよなっていると歯周炎。
ただ素人では判断がつかないので、わからない時は歯科医院へゴー!
歯周炎となると歯槽骨が溶けてしまうので歯が抜け落ちるんですね。
私たちの骨のできかた
人間の骨は約208本の骨で出来ています。
男性の方が一本多いなんて人もいますが、ヒトではそういうことはありませんね。
チンパンジーだと陰茎骨がありますから、一本多い!?
余談はさておき、さて骨は硬いのですが、一度作られてそのままというわけではなくて、作っては壊して、作っては壊してと言う作業を繰り返して今の状態を保っています(骨改造といいます)。
骨は結構、と言うよりずいぶん見た目よりも軽いです。
中はスポンジのような構造になっていて結構スカスカです。
骨を作るのが骨芽(こつが)細胞で、骨を壊していくのが破骨(はこつ)細胞と思ってもらって構いません。
この骨芽細胞と破骨細胞の、作る、壊すバランスによって骨が出来上がっています。
骨粗鬆症は、骨芽細胞が作るスピードより、破骨細胞が壊すスピードが上回ってしまうために起こる病気ですね。
破骨細胞は、いろいろな理由で活性化します。
免疫物質であるサイトカインや細菌の菌体成分である「内毒素」です。
ここでも炎症が出てきますね。
つまり炎症が抑えられると破骨細胞は減っていきます。
体の中で骨と炎症部位が近いところは・・・
歯と鼻腔や副鼻腔くらいでしょうか。
負の三角とは
三角と言えば○△Vプロジェクト!
今回は負の三角について。
慢性炎症 サイトカイン 組織破壊
この三つが互いに悪さをし合って、「負のスパイラル」に陥ってしまうのですね。
このうちどれかを食い止めることが出来なければどんどん悪化していってしまします。
さぁちゃんと歯みがきですよ!
歯周病菌は弱いから悪い
人類が一番多くかかっている病気が歯周病です。
歯周病の中でも主役級の悪さをするのは歯周病菌です。
ですから私は歯周病菌と言うとかなり悪役のイメージがあったんです。
ところが歯周病菌(群)の出す内毒素はむしろ普通の菌よりも弱いと言うではありませんか !
救急の現場では、エンドトキシンショックと呼ばれるショック状態になっている患者さんを治療することがあります。
エンド(内側)トキシン(毒素)、内毒素が体中に散らばって、免疫の過剰反応を引き起こした状態です。
療療には一刻の猶予もありません。
抗生剤や昇圧剤、ステロイド剤などを使用しなければならない状態です。
これがエンドトキシンショックの恐いところです。
桿菌の菌体成分が引き起こすのです。
歯周病菌(群)も大部分が桿菌ですが、歯周病菌はエンドトキシンショックを起こさない。
だから余計に質が「悪い」んですね。
大腸菌と比較すると内毒素の強さは1/1000とのこと、強さというよりもうこの場合は弱さですね。
体の中から強力に排除されにくいので、ず~~~っと潜んでしまって長い間悪さをしてしまうのですね。
少ない歯周病菌が悪さをする理由は
大腸菌は歯周病菌などと比べると圧倒的に数が多いのですがなぜそれらは体にとってあまり悪さをしないんでしょうか?
そのことについて伺ってみました。
大腸菌は腸の中 にはいるのですが、腸の粘膜と大腸菌の間にもムチン(口にもありますが)という層があって、それが大腸菌が体の中に入っていくの防いでいます。
一方、口の中には粘膜に直接、歯垢や歯石としてひっついている歯周病たちが、一度そこの部分の粘膜上皮がびらんや潰瘍を起こすと体の中に直接侵入してしいます。
そんなわけで量が少なくても体にとって大きな影響を与えるわけですね。
歯周病の大家・天野敦雄先生は「潰瘍面閉鎖」が歯周病治療には大切であると仰っていますね。この言葉の奥深さが身にしみて分かります。
酪酸の話からそしてやっぱり予防へ
第3回日本病巣疾患研究会で落合先生には「医科歯科連携のセンターピン理論」として講演をしていただきました。
その冒頭でなぜ歯周病は炎症があるのに痛くないのかというお話をなさいました。
歯周病は歯肉が腫れて歯が抜け落ちるぐらいの炎症があるにも関わらず、あまり痛みを感じないのか。
これは本当に素朴な疑問ですが、なぜと問われると答える人がほとんどいませんでした。
落合先生はそこを追求して歯周病菌の出す「酪酸」の影響であると示唆されました。
歯周病は慢性炎症ですから基本的に治癒がありません。
コントロールしていくことが大切です。
そのためには、「ならない」ことつまり「予防」ですね。
「される」医療から「する」医療へ
私の好きな教諭に長崎の小学校の先生をしている福田泰三先生がいます。
私は毎年福田先生に無理を言ってあいうべ体操の授業をさせてもらっています。
ある時島原半島の先端にある口之津小学校へ行きました。
口之津小学校の福田泰三クラスには、「あいうべ体操」係がいて毎日あいうべ体操をしていました。
毎日学校であいうべ体操をすると、子ども達に色々な変化が出てきます。
口之津には、たくさん病院があるわけではありません。
ちょっと難しい病気となると遠く諫早の病院まで1時間以上かけて通院しなきゃいけません。
やっぱり「病気にならない体作り」は大切なのです。
耳鼻科に頻回に通院していた子どもが、通院しなくて良くなったり
母親から
と言われたり、インフルエンザにかからなくなったり。
素晴らしい成果ですね。
中でもこの生徒の感想を読んでください(当時小学校6年生)
今まで私は「される医療」でした。
だけど「あいうべ体操」「かむ」「口腔ケア」を学ぶことによって「する医療」になりました。
今東日本大震災で困っている方に元気を!日本がチェンジ!
この本質をビデオの最後で落合先生がお話しして下さっています。
「する医療」(能動的)は面倒くさい、大変です。でも元気を保っていけるという利点が。
「される医療(受動的、受け身)は面倒くさくない、でも問題が起こってからの対処では遅い場合もありますね。
健康に対する私たちの意識を変えていかなきゃいけませんね。
執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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