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運動は薬である
皆さま正直に白状します。「運動がこんなに重要だ」なんて思っても見ませんでした。「鼻呼吸がこんなに大切だった」と気づいた時くらいの衝撃です。
さぁ、これからの記事は「運動嫌い」のみらいクリニックの院長今井が記します。
私は自他共に認める運動嫌いです。元来汗かきなので汗をかくこと自体が不快なので、出来れば体を動かしたくない。なのに「運動は薬である」という内容を伝えるなんて、、、ちょっと矛盾していますよね。
これから運動嫌い、運動不足の私がどのようにして運動をするようになったのかをお伝えします。これからの文章を読んですこしでも「体を動かそう」と思って下さる人が出てきたらこんなに嬉しいことはありません。
さぁLET’S Exercise!です
タイトルの「運動は薬である」これはアメリカスポーツ医学会が2007年に出したフレーズです。
英語では「Exercise Is Medicine」となりEIMと略されます。文字通り運動(Exercise)は薬(Medicine)なわけです。
運動が薬?
なんだかよく分からない??という人もいますね。今回は運動が身体に与える好影響について追及していきますよ。
運動習慣の無い人が7割に達する
2019年、株式会社メディプラス研究所の7万人にわたる調査によると、第一位の福井県では実に78%の女性に定期的な運動習慣がないことが判明しました。
ここでいう定期的な運動とは1週間に20分以上の運動のことです。
家事でいろいろと動いているから大丈夫ってことにはなりません。運動と仕事、エクササイズとワークは別物です。
家事労働以外で目的を持って体を動かすことを週に20分もしていない人が8割近くもいるわけです。
運動しなきゃと分かっていてもなかなか続けられない、モチベーションを保てない、3日ほどは続くんだけど、、、
て方がほとんどだと思います。分かります(^^; 私もそうでしたから。
運動は薬である!確かにそうだと思う、「でも・・・分かっちゃいるけど出来ないんだなこれが」という方、心配不要ですからね。
まずは運動の効能について追求しましょう
運動の効能
運動の効能としては今更挙げるまでもないかも知れませんが様々なものがあります。
認知力改善やメタボリックシンドローム(高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満)の予防、改善、脳卒中予防など盛りだくさん。
ここでは
- 精神的向上(うつやパニック障害の改善) 睡眠改善
- がん予防
- 大動脈瘤
の三つをあげてみました。
たとえば抗うつ薬よりもウォーキングやジョギングの方がうつ病に関しては「再発が少ない」という結果が出ています。
学習効果や認知能力が上がることも分かっていますし、記憶を司る大脳にある海馬も運動により大きくなることも分かっています(BDNF脳由来神経成長因子による)。
エクササイズは、乳がんや大腸がんの予防に役立ちます。大腸がんでは、筋肉から放出されるSPARC(スパーク)はその発症を抑えると言われていますし、乳がん患者が運動をすると男性ホルモンが増加し、女性ホルモン感受性乳がんの再発予防に役立ちます。
さらに大動脈瘤という病気について説明しましょう。
腹部大動脈瘤まで改善
タレントの阿藤快さんや藤田まことさんが突然死したのがこの病気です。
心臓から続き全身に血液を送り込んでいる大動脈の血管壁に炎症が起き、徐々に動脈が膨らんでしまい最終的には破裂してしまうという病気です。
私もこの病気で命を落とした人を何名も見てきました。もちろん救命できた人もいますが、できればそのような状態にならないのが一番ですね。
この病気は前触れがないことから突然死の危険性をはらんでいますし、超音波検査で大動脈瘤があることが分かっても手術以外にそれの増大を避けることができませんでした。お腹に爆弾を抱えて生活するようなものですから、患者側は気が気ではありません。
ところで動脈の壁は、内膜中膜外膜と3層に分かれていますが、そのうち中膜に慢性炎症が起こりコブを作ったり、避けてしまったり(大動脈解離)することにより起こります。
この進行を何とか抑えられないかということでいろいろな薬物治療が施されたのですが、決定的なものがありませんでした。
ところがこれを改善させたものがあったのです。
そうです。運動です。
定期的な運動をすることにより動脈径がふくらむのを押さえることができ、しかも血液中の炎症反応も低下したのです。
薬では如何ともし難かった大動脈瘤を改善させたのがなんと運動だったのです。
さぁいますぐ体を動かした方がいいでしょう!
歩くことは最良の薬
ヒポクラテスという名前は医師であれば誰でも知っています。医聖と呼ばれる古代ギリシャの医師です。
「ヒポクラテスの誓い」というドラマで聞いたことがあるという人もいるでしょう。
ヒポクラテスは「歩くことは最良の薬」であると残しています。と言うことはおそらくその当時から運動不足によって病気になる人がいたということでしょう。
歩かなくなった現代人
健康のために歩いています!という人も多くなったのですが、残念ながら日本人の歩数は年々減少を続けています。
2000年からの15年間で実に一日あたり1000歩減っていることが示されています。
1000歩というと距離にしてだいたい600m程度といったところでしょう。ヒポクラテスの時代とまで遡らなくても100年前の日本でさえも歩くことがほとんど唯一の移動手段だったと考えると現代人は「ほとんど歩かない」ことになります。
さらに残念なことに歩くだけでは筋力を維持することができないのです。歩いているからエクササイズは大丈夫!と言い切れません。
なぜなら筋肉はそれくらいの負荷では強化されないからです。特に年齢を重ねるとその傾向は顕著になってきます。
30代から肥満が急増する
加齢により代謝が悪くなってきて痩せにくくなります。
昔はちょっと食べなかったらすぐに体重が元に戻ったのに、最近では食べないくらいでは戻らない
という経験をしたことありませんか。これは代謝が下がってきている証拠です。
BMI25以上を肥満と定義されます。
Body Mass Index(ボディマスインデックス)の算出の仕方は、体重(kg)÷身長(m)2です。
著者の私(今井)であれば70kg÷1.8(m)2ですから、BMIは21.6となります。
BMIは、20-24.9が脂肪率が低いと分かっています。
身長170cmの人だと体重が約58Kg から72kgの幅に入ります。結構幅があるんだなと分かりますね。
この幅を超えたBMI25以上の人が30代から3割を超えてしまうほどなのです。
代謝は20代から転げ落ちる
30代から肥満が増えるのは代謝が下がってしまうからです。
この代謝とはなんでしょうか。
よく代謝が悪くなったといいますよね。
これは言葉を返せば「燃費が良くなった」ということなのです。
若い時は体温も高く、肌も瑞々しく、筋肉にも張りがあります。
徐々にそれらが失われていき冷えや衰えを感じるようになります。
それと同時に、若い時と同じように食べているのに太ってしまうという現象が起こるわけです。
これは年をとると基礎代謝が下がってしまうからです。
運動をして汗をかくとカロリーをなんだか体が燃えている、脂肪が溶け出している感覚になりますよね。
実は軽く運動したくらいでは大したカロリー消費にはなりません。それよりも体温を一定に保ったりする方がずっとカロリーを消費しているのです。
これは基礎代謝と呼ばれ計算式があります。
男性:66.47+体重×13.75+身長×5.0-年齢×6.76=基礎代謝量
女性:665.1+体重×9.56+身長×1.85-年齢×4.68=基礎代謝量
私だと約1600kcalになります。何もしないだけでこれだけのカロリーを一日で消費しています(50歳、体重70kgで計算)
同じ条件で20歳とするとなんと1800kcalになります。
年齢の違いだけで一日あたり200kcal違うのです。
軽いジョギングを30分程度すると100kcal弱カロリーを消費します。そうすると20歳の時と比較すると毎日1時間のジョギングをしなければ同じ代謝にならないのです(あくまでも簡便に考えて)。
さて脂肪の塊1kgは何カロリーになるでしょうか。水分を20%とすると約7200kcalになります。
おにぎり一つが約180kcal(基礎代謝の一日あたりの違いと似ていますね)ですから、若い時と同じ量食べるとすると40日で1kgの脂肪と同じカロリーオーバー(7200kcal÷180kcal=40)になってしまうのですね。これが年をとって代謝が落ちてしまったということなのです。
若い時と同じ食事をして太ってしまうのは納得ですね。
30代から肥満が増えるのも理解できるでしょう。ダイエットは、体重もさることながらこの基礎代謝を保つあるいは向上させることも目的としなければなりません。
食事制限のみのダイエットは体重は減るのですが、基礎代謝も同じように減ってしまうのです。これは体温を維持するのに必要な筋肉まで減少してしまうからです。
理想的なダイエットは、食事コントロールと筋トレを組み合わせたもの。
当たり前ですが、これがなかかな実行にはハードルが高い。
それを比較的楽に達成出来る方法があるとしたらどうでしょうか。
次回はそれを探ります。
執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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