マクロビオティックの生まれと病巣感染症の繋がり
患者さんでも時々「マクロビしてるんです」という人もいますし、マクロビ関係の方との繋がりもある今井です。
さてマクロビオティックの提唱者として有名な桜沢如一(ゆきかず、と読みますね)のことを知らなければリンクをたどってご一読下さい。
桜沢が自分が病気がちだったことから食養生に目覚め健康を回復したことは有名ですね。
1920年代にマクロビオティックの考えに達し、普及活動に努めたようです。いまでは世界のセレブも実践する健康法の位置を獲得しました。
私も正食協会の「むすび」誌に出させていただいたこともあります。ありがたや~。
今回は、このマクロビと病巣感染症との繋がりに関して考えてみたいと思います。
桜沢が悩んだ病気とは
桜沢が病気がちであり、そこから食養生を志したことはよく知られていますが、桜沢が悩んだ病気とは一体何だったんでしょうか。
それに関する書籍があったのですが、書棚を探しても見つからないので、私の記憶をたどります(不正確かも知れない)。
桜沢は、幼い頃に関節炎と腎炎に悩んだと読みました。おそらく幼いといっても中学生前後ではなかったかと記憶しています。
その後も結核などにもかかり病気がちだったと言われています。
ところで中学生前後で悩む関節炎、腎炎と言えば若年性関節リウマチ、IgA腎症やネフローゼ症候群が挙げられるでしょうか。
当時は、関節リウマチという病名はあったものの免疫グロブリンは発見されていませんからもちろんIgA腎症という病名はありません。
現代の病名は私の推測でしかありません。
さてこの関節炎と腎炎、一見別々の病気のようですが、実はこの二つ大きな繋がりがあるのです。
桜沢も病巣感染症であった?
病巣感染症とは、
身体のどこかに限局した慢性炎症があり、それ自体はほとんど無症状か、わずかな症状を呈するに過ぎないが、遠隔の諸臓器に、反応性の器質的および機能的な二次疾患を起こす病像
と定義されます。つまりどこかに病気の元が潜んでいて、それが他の臓器に飛び火したんですね。
1912年にF.Billingsというシカゴ大学医学部教授が病巣感染症について発表しました。
まさにその病気が関節炎と腎炎だったのです。
桜沢と同じです。
上の図でもわかるように、腎臓病と関節リウマチの根っこは同じことがあるのです。
原病巣(げんびょうそう)とは、とびひのの元となる病気のこと、これは扁桃などの鼻のどの病気と歯周炎や虫歯など口の病気がほとんどを占めます。
とびひしていく先は、腎臓病(慢性腎炎など)、皮膚疾患(掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎、アレルギー性血管炎、結節性紅斑、多形滲出性紅斑など)、自己免疫病(関節リウマチ、多発筋炎、胸肋鎖骨過形成症、IgG4関連疾患、SAPHO症候群などなど)、そしてそれ以外の臓器(ぶどう膜炎:目の病気、バセドウ病や橋本病など甲状腺の病気、NASH:非アルコール性脂肪肝炎、虫垂炎、紫斑病:血管炎など)です。
このうちの腎炎と関節炎を患っていた桜沢は、おそらく腺病質だったことが推察されます。
腺病質とは「虚弱で、リンパ節をすぐ腫らすような小児の状態」を指します。
アデノイド顔貌と言い換えても大きな間違いではないと思います。
腺病質は、口呼吸
腺病質という言葉は、漢方、東洋医学で表現される口呼吸の一形態と思われます。
漢方には、「口呼吸」という言葉は出てきません。
ただ、こういう状態を改善するのに漢方は役立ちますね。
よく使われる薬は、柴胡清肝湯、荊芥連翹湯、小建中湯なんて所でしょうか。
私も良く処方します。
アデノイド顔貌は、もう口呼吸そのものですね。
アデノイドというのは、ちょうど上咽頭部のリンパ組織が小児期に腫れてしまっている状態のこと。
これで鼻の問題以外の鼻づまりにより口呼吸になってしまいがちです。
腺病質は口呼吸
ということが分かれば、漢方薬だけでなく口を閉じる、あいうべ体操をするなどの口呼吸対策が必要なことが分かります。
ところが「薬で治す」という発想だけしかなければ、なかなか改善しないこともあるのです。
アデノイド顔貌とは
- 口が開きがちである
- 唇が分厚い
- 顔が細長い
- 目が腫れぼったい
などの顔の特徴があります。まさに口呼吸!
桜沢の小児期がどうだったのか写真がないので分かりませんが、晩年の写真を見ても若干ガミースマイル気味です。
ガミースマイルとは、笑ったときに上の歯茎がごっそり見えること。テニスの錦織圭選手の特徴的な笑顔に代表されますね。
「錦織圭 ガミー」
で検索するとすぐに理解できると思います。ちなみにこちら。
このガミースマイル、口呼吸を疑わせる大きな所見でもあります。
病巣感染症治療でも食養生は大切
おそらく桜沢は、慢性扁桃炎か慢性上咽頭炎があったのだと思われます。
そこを原病巣として関節炎、腎炎を発症したのでしょう。
でも口呼吸対策や上咽頭擦過治療(Bスポット治療)をしなくても食養生で改善したということは大きな希望です。
もちろん食養生に口呼吸対策などを組み合わせれば病気に悩む期間は少なかったかも知れないし、関節炎や腎炎そのものを引き起こさなかったかも知れません。
歴史なので「もし」はありませんが。
でも彼が苦しむことによって、マクロビオティック、食養生という考えが世界に広まったことを考えると結果としては良かったのかも知れませんね。
今回は、病巣感染症(病巣疾患)とマクロビオティックの繋がりについて書いてみました。
こんな話題もたまにはいいかな(^^)
病巣感染症(病巣疾患)についてはNPO法人日本病巣疾患研究会のHPも参考になります。
https://mirai-iryou.com/shinryo/bspot/
執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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