運動嫌いの医者が伝える「運動は薬である」その2

元気を司る細胞内工場、ミトコンドリア

運動嫌いのみらいクリニック院長今井です。さて今回はミトコンドリアのお話しです。

前回は、EIM(Exercise Is Medicine、運動は薬である)との観点から、運動はとても大切なのに運動習慣の無い人が7割もいること、運動の利点などについてかきました。

では、なぜ運動がそれほど重要なのかということが今回のテーマ。

 

そこで出てくるのが「ミトコンドリア」という私たちの細胞の中にある構造体です。

 

私たちは体に空気を入れて肺から酸素を取り込み二酸化炭素を体外に排出していますが、それを細胞の中レベルで行っているのがミトコンドリア。

 

酸素の最終目的地はミトコンドリアなんですね。肺から酸素を取り入れることを”外呼吸”、ミトコンドリアに取り入れることを”内呼吸”と呼んでいます。

 

ミトコンドリアというとゾウリムシやミドリムシのようなものを想像する人もいるかも知れませんが、大きさがまったく違います。ミトコンドリアは細胞の中にあって、その容積の2,3割を占めると言われています。電子顕微鏡でないと詳しくその構造を見ることが出来ません。ゾウリムシは生きものそのもの、普通の顕微鏡で構造を見ることが出来ます。

 

エネルギーの源はATP

食事や酸素で動いている私たちの体ですが、最終的にATP(アデノシン三リン酸)という物質となりエネルギーに変わります。このATPを効率よく生み出すのがミトコンドリアで、ATPは細胞内で生まれては消費されて、そしてまた生まれてということを繰り返し、一日の打ちに自分の体重分ほど作られると言われています。

 

作られる度に消費されるから太っていくわけではないんですね。

 

このATPですが、エネルギーの最終単位ですから「エネルギー通貨」ともいわれています。

 

ATPを生み出す力が多いとエネルギーがありますし、その力が弱いとすぐにへたってしまいます。ですから元気や体力というものはこのミトコンドリアにかかっていると言っても過言ではないですね。

ミトコンドリアも老化する

この大切なミトコンドリアですが年齢とともに「老けていく」ことも分かっています。

 

残念っす、、、

 

加齢とともにミトコンドリアは、細胞内の量もそして質も低下してしまうんです。

 

これを何とかしたいというがアンチエイジングですね!

 

そんな美味いことがあるわけないよねと思いますよね、それがあるんです!

 

もうお分かりですね。

 

そう運動です!

ミトコンドリアは数週間で増加する

実際にミトコンドリアは2週間もあれば量も増え、質も改善します。そう運動によって。

 

クリニックでの経験でも最低3週間もあれば十分にミトコンドリア機能が良くなってきているなと分かることが多いです。

 

このミトコンドリアですが褐色脂肪組織にとくに多く含まれます。

 

褐色脂肪組織とは、熱を生み出す能力を持っている特殊な脂肪組織で、体温を維持することなどに使われます。首回りや肩甲骨、腋窩に多く存在します。また冬眠する動物や赤ちゃんに多いのも特徴です。

 

私たちほ乳類は恒常性といって体温を一定に保つ能力がありますがその機能の一部を担っているのがこの褐色脂肪組織。熱をエネルギーに変えていくんですね。だから赤ちゃんは温かい。普通のぜい肉(肉ではなくて脂肪ですね)は、白色脂肪と言われます。白色脂肪組織が「貯める」能力を持っているとすれば、褐色脂肪組織は「燃やす」能力を持っています。この熱を生み出す源がミトコンドリアなんですね。ミトコンドリアが細胞内に多いので褐色に見えるわけです。

 

う~~~ん、増やしたいゾ褐色脂肪組織!

褐色脂肪組織は熱を発生し、ムダに燃える身体を作っていくダイエッターには喉から手が出るほどほしい脂肪です。

ところが体にまとわりつくのは白色脂肪ばかり・・・

 

どうにかして私の体にも褐色脂肪組織が増えないかしらと思いますよね。私も増やしたいです。

 

それを増やす方法があるんです!

ミトコンドリアのアンチエイジングに向けて

どうにか増やしたい褐色脂肪組織ですが、体に備わっているのはだいたい40g程度と言われます。小さな卵一個分じゃないですか。

 

何とかなりませんかね。白色脂肪にミトコンドリアを導入する方法があれば、白色脂肪に日光を当てて日焼けさせて褐色にさせるなんて上手い方法があれば試してみたいものです。

 

そこでエネルギー通貨であるATPを生み出し、活性酸素を効率よく除去してくれて、体の中への酸素取り込みを改善させてくれるミトコンドリアの増やし方です。

それはこの4つ。

  • 空腹を感じること
  • 寒さ刺激に晒されること
  • 姿勢を良くすること
  • エクササイズをすること

う~~ん微妙ですか!?

 

空腹を感じるとミトコンドリアを増やせという指令が出ます。カロリー制限をすると寿命が延びるという話を聞いたことがありませんか?カロリー制限によりミトコンドリアが増えたサルはカロリーたっぷりのサルよりも若々しくなります。

腹八分目とは昔の人はよくいったものですね。

 

次、寒さ刺激に晒されること。寒い刺激が加わると熱を生じさせないと行けないために白色脂肪が褐色脂肪組織ににたベージュ脂肪細胞に変わります。褐色脂肪の量は残念ながら変えることが出来ませんか、それよりもたっぷりと体にまとわりついている白色脂肪をベージュがする方がいいですね。寒空での乾布摩擦なんていいでしょうね。

 

そして、次は姿勢を良くすること。これは抗重力筋を使い続けることになりますね。筋肉はやはり使ってナンボですから、だらっとした姿勢よりは、キリリとした姿勢の方が筋肉を使い続けることになりますからミトコンドリア改善には大切です。

 

そして最後が、そうエクササイズです。これは長く有酸素運動をするよりは短くきつい運動の方が効果的にミトコンドリアを改善できることが分かっています。

そのためにぜひ取り組んでもらいたいのがHIIT(高強度インターバルトレーニング)です。みらいクリニックでは2018年から本格的に治療として導入しています。

 

HIITの研究論文は近年どんどん増えてきています。高強度というとちょっと怖い、すごいことをしそうで不安な気持ちになるかも知れませんが、その人に合わせた運動によって高い心拍数を目指そうというものです。

 

HIITにかかる時間は4分間。それが2,3日に一回で良いというのですからこれは楽ですよね。

私が運動をなかなか取り入れることが出来なかったのは「嫌い」という理由に加えて「時間をとられるのがいや」という理由もありました。

 

運動のために貴重な人生の時間を費やすのはもったいない(運動が好きな人はどんどんやってくださいよ、あくまでも私の考え)、どうにかしてその時間を短くしたいと思って探し出したのがHIITなんです。

 

一回あたりに行う回数は決まっておらず、とにかく4分間キツさに耐えるというコンセプトが気に入りました。

 

そしてやってみると気持ちよい!!達成感がある。着替える必要も無く、屋内で、場所もとらずに出来るHIITは運動嫌いな人のための救世主と言えるでしょう。

 

次は、運動によって筋肉から放出される若返りホルモンについてお話ししますね。

執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール

今井 一彰
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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