医師が解説する加圧トレーニング

私(今井一彰)は、みらいクリニックを開設する前から加圧トレーニングを自分でもやり、そして患者さん方へも提供しています。そして、長年の経験から加圧トレーニングは、むしろ病弱な人、介護やフレイル状態の人たちへこそ有用なトレーニングだと思っています。

ここでは、病気や怪我のために運動がきちんと行えなかったり、筋力アップをしなきゃいけないと思うけれど、怖かったり、不安があったりする人に向けて加圧トレーニングの解説を行います。

読んでいただけるとありがたいです。

加圧トレーニングとは

加圧トレーニングとは、「四肢の付け根に専用のベルトを巻いて、適切に血流を制限した状態でトレーニングをする」筋肉トレーニング法です。

発明者の佐藤義昭先生が、法事の際に正座で足がしびれたときに、それがボディビルでふくらはぎの筋肉を鍛えた後の感覚にそっくりだったと言うことにヒントを得たのが最初です。

その後、様々な研究を重ねて安全に効率よく筋力アップが図れる方法として加圧トレーニングを発明しました。

私は医師として、特に関節が腫れて痛みを伴う関節リウマチの患者さん方の筋トレとして最適ではないかと考え、すでに15年以上前から、臨床に取り入れてきました。

そして、「病気の時にこそ加圧トレーニングだ」という結論に達しました。

まず加圧トレーニングの基礎をお伝えし、具体的なやり方についてお伝えしましょう。

※使用する画像は私が加圧トレーニングの説明で使用しているものです。

適度に血流を制限する

加圧トレーニングというと「怖い」とか「筋肉ムキムキになりたくない」とか「血流を止めるって危なそう」などといったイメージを持つ人もいると思います。
実際に患者さん方からもそう言われることがあります。

この認識は間違っています。あなたに筋力を手軽にもたらしてくれる加圧トレーニングを正しく理解していただきたいと思います。

加圧トレーニングを理解する上でとても大切なことは「血流を適切に制限する」ということです。けして血液の流れを「止める」わけではないんですね。

図で見てみましょう。

加圧トレーニングの基礎

左上の状態が普通の血液の流れとすると、右上の図が加圧トレーニングをしているときの状態です。

動脈も静脈もある程度血流を制限します。動脈から血液は絶えず身体の先の方(末梢)へ流れ込んでいくのですが、その出口(静脈)が締められているので、血液が逆にどんどんたまっていくのです。

そうなると血液は行き場を失ってこれまで使われていなかった血管にまで血液が入り込んでいきます(ゴースト血管)。専門用語では、血管床が拡大するといいます。

ゴースト血管は、使われていない毛細血管のこと。これが冷えにつながり、末梢組織での代謝を悪くして、老廃物の排泄が滞ってしまいます。

身体の隅々に生きるために必須の酸素を送り込む主役は赤血球と毛細血管です。赤血球は自分の身体よりも小さな毛細血管の中にまで、自分の形を変えることによって入り込んでいき、酸素を届けるという役目を果たします。

ゴースト血管では、この働きが失われてしまっています。加圧トレーニングによって末梢に血液を充満させることはゴースト血管を無くすことにも繋がるのです。

酸素が行かなくなってしまうと、心筋梗塞や脳梗塞、肺梗塞といった「梗塞巣」を作ってしまいます。小さな心筋梗塞や脳梗塞は年を取ると増えて行くのですが、運動することによって血流を維持することで防げます。

さて、上の図の右上が「血流を適切に制限」しているという状態です。ですから、血流が無いのでは無く、むしろ通常より血液が組織、筋肉に流れ込んでいる状態です。

そしてそれまで使われていなかった(血液が少なかった)ゴースト血管が現れてきています。

ところが、不適切な圧をかけてしまうと動脈の流れもせき止めてしまう(右下の図)ため、血流が止まってしまいます。

ですから、加圧トレーニングはきちんとそのトレーニング理論を理解している人が行う必要があります。

加圧ベルトを外すと(左下の図)、血管床が増えていますから、血圧も下がって血流も緩やかになってきます。

この様なことから、心筋梗塞や心不全といった状態でも心臓に負担をかけることなく(むしろ心臓の負担を減らしながら)トレーニングが可能なのです。

加圧トレーニングでは、血流は止まりませんから安心して下さい。

血流が制限されると・・・

血流が適度に制限されると加圧ベルトから先の部分には血液がドンドン貯まっていきます(プーリングといいます)。これがもたらす効果は沢山あります。

写真の男性が渾身の力を込めて持ち上げているダンベルは何と1kgしかありません。

筋肉がパンパンになった状態(プーリング状態)ですからすでに筋肉は多大な仕事をさせられていると勘違いしているのです。

これが加圧トレーニングが他のトレーニングと違うところです。
高強度の不可
関節への負担
長時間の刺激
が要らなくなるのです。

みらいクリニックにおける加圧

運動をすると関節や筋肉を傷める危険性も出てきます。ところが加圧トレーニングでは、関節リウマチ患者さんや変形性関節症の方など筋肉を付けたいけれど痛みで運動ができないという方でも軽い負荷で筋力アップします。これは朗報です。

ここに私が加圧トレーニングを取り入れている理由があるのです。

身体を動かすと痛いのに「筋トレしなさい」というのは、患者さん指導としては不適切だと思います。

また痛みがあった状態で筋力を付けるとなると大変です。肉体的にも精神的にも多大な負荷をかけること無く筋力アップができる方法を提供する必要があります。

そうなると必然的に加圧トレーニングにいきつくのです。

専門的な話になりますが、筋肉が肥大するには筋肉に与える負荷が必要です。何もせずに筋力が上がることはありません。

通常必要とされる負荷の強さは最大筋力の70%以上を出す必要があるとされます。

これは関節にかなりの負担をかけることになります。

ところが加圧トレーニングでは、最大筋力の20%程度でも筋肉の肥大が起こるのです。

これはどれくらいの負荷かというと、日常生活を行う程度なのです。

加圧トレーニングをしながら歩いたり、腰掛けたりという日常生活程度の負荷で筋肉の肥大が得られるのです。

これだと関節を壊したり、筋肉痛を引き起こしたりする危険性は極端に少なくなることが分かるでしょう。

普段の生活が筋トレになる。これもまた加圧トレーニングの素晴らしいところです。

低強度でも筋肉の肥大が起こる

それでは、それを実証した研究を見てみましょう。

下の図は、上腕を輪切りにしたものです。真ん中の◎(二重丸)が骨、上が二頭筋(力こぶ)、下が三頭筋(二の腕)に当たります。

最大筋力の80%で行う高強度のトレーニングを行ったところ二頭筋が15%、三頭筋が5%肥大しました。最大筋力の50%という低強度の負荷をかけたトレーニングでは、二頭筋は5%肥大したものの、三頭筋は大きくなりませんでした。

筋肉が衰えなかっただけマシという結果です。

一方、加圧トレーニングではどうでしょうか。

加圧トレーニングで最大筋力の50%の低強度トレーニングを行うと、二頭筋では20%、三頭筋も13%の筋肥大が得られたのです。

高強度の通常トレーニングでも得られなかった結果を得ることができるのです。

加圧トレーニングの基礎-肘屈筋に対するトレーニング

加圧状態と阻血状態の違い

加圧トレーニングは、血流を適度に制限すると書きました。制限はするけれど止まることは無いのです。

では止まった状態と加圧状態ではどう違うのでしょうか。

それを比較したのが下の写真です。

これは左側の腕(画面では右側)にのみ加圧をしています。

よく見ると左腕の皮膚静脈が浮き上がって、右腕と比べると全体的に赤みが差している(血液が充満している)のが分かります。

 

加圧した状態の腕

次に、完全に血流が遮断された状態を見てみましょう。

右手側に加圧している状態で、左手が完全に阻血をされた状態です

加圧された状態では手のひらが赤くなる、静脈がパンパンに膨れているのが分かります。

血液が充満しているのです。

ところが 左手の方は完全に血流が止まってる状態ですから 手のひらが青白くなり 静脈に血液が流れていません。痛みを感じないですし 血栓症の危険があるため長時間の阻血状態というのは絶対に避けなければいけません

加圧トレーニングはきちんと適切に血流を制限された状態で行うことが必要です。

加圧状態と阻血状態の違い

遅筋も速筋も鍛えられる

筋肉に遅筋と速筋の2種類があることは知っている人が多いかもしれません

この遅筋と速筋は通常鍛え方が違います。

速筋は、高負荷、短時間のトレーニング、遅筋は低負荷、長時間のトレーニングが必要となります。

ところが加圧トレーニングでは、この両者をいっぺんに鍛えることができるのです。

まさに理想のトレーニングと言えるでしょう。

加圧トレーニングでは遅筋も速筋も鍛えられる

成長ホルモンのシャワーを浴びる

加圧トレーニングというと「成長ホルモンが大量に出る」という話を聞いたことがあるかもしれません。

成長ホルモンは、脳下垂体前葉から分泌されるホルモンで、その名の通り主に成長、発達に関与します。小児期にはたくさん分泌されるのですが、成長に従ってその量が低下して、

20歳を過ぎるとほとんど分泌されません。

成長ホルモンの役割として

  • 骨の成長を促す 背を伸ばす
  • 筋肉の成長させる タンパク質の合成を促す
  • 血糖値を上昇させる
  • 脂肪燃焼を促進させる

などがあります。

さらに下記のような作用も期待されます。

  • 免疫力の向上
  • 脂肪の減少
  • 運動能力の向上
  • 皮膚弾力の増加
  • リハビリが短期間ですむ

などです。通常成長ホルモンは夜寝ているときに分泌されますから、子どものきちんとした成長発達のためには、しっかりと夜寝ることが大切です。

では、加圧トレーニング後の成長ホルモンの分泌様式を見てみましょう。

加圧トレーニングによる低負荷ながら高強度の刺激により筋肉内に乳酸がたまり、その刺激によって大量の成長ホルモンが分泌されます。

これは加圧トレーニングを開始して15分後くらいに分泌がピークとなり、その後緩やかに低下していきます。

加圧トレーニングと成長ホルモン分泌曲線

その他IGF-1(インスリン様成長因子)や各種インターロイキン(免疫物質)が分泌されます。

成長ホルモンは血糖値上昇の作用がありますが、IGF-1や筋肥大により血糖値異常の改善も見られます。

加圧トレーニングによる大量の成長ホルモンシャワー

つらい長時間のトレーニングは不要

短時間、短期間しかも低強度で筋力アップすることが出来る加圧トレーニングは、体力が衰えたり、運動習慣があまり無かったり、病気で運動が難しい人にこそおすすめです。

またその安全性は確立されていますから、きちんとした指導者のものであれば不安無く行えます。

これから人生100年時代を生き抜くためには、若々しい筋力を保っておくことは必須です。

私は医師として、加圧トレーニングを強くお勧めします。

参考文献

ササッとわかる「加圧トレーニング」健康法
加圧トレーニングの理論と実践(講談社)

アンチフレイルトレーニングをやってみませんか?

アンチフレイルトレーニング~元気なカラダを維持するための医療トレーニング~

フレイル外来の「アンチフレイルトレーニング」を受けるには?

執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール

今井 一彰
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医・NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
クリニック案内
amazon著者ページ
今井院長facebook
今井院長Twitter
今井院長Instagram