コロナワクチンによると思われる長期副反応（以降ワクチン後遺症）についてはまだ10例ほどしか見ていませんので、偉そうに断定することは出来ませんが、8例には上咽頭の強い炎症が認められました。新型コロナウイルスワクチンも4回目の接種の可能性について取り沙汰されていますが、このままインフルエンザワクチンのように毎年接種しなければならないようになるのでしょうか。
感染者を減らせ、医療崩壊を防げの御旗の下、ワクチン後遺症はなおざりにされています。これでは安心して接種することは出来ません。ワクチンが怖い、心配という人々に対して「リテラシーが低い」「ワクチンの効果はエビデンスがある」といくら言葉を重ねても不安を払拭することは出来ません。
もしワクチンが原因と思われる障害が残ったときの保障がきちっとされない限りは不安は残ります。これは子宮頸がんワクチンの時の構図と同じです。
ワクチンを忌避する人を揶揄することは厳に慎まねばなりません。いつ何時自分や家族の身に降りかかるとも限らないのですから。
今回は、接種直後から長期の障害を負った2例について紹介しましょう。
直後発症の肩痛から五十肩の診断で治療を受けていた例
50代の男性Mさんは、2021年9月に接種したコロナワクチン後から接種側の左肩が疼痛で上がらなくなりました。
ワクチンの影響かもとは思いましたが、まさか肩痛が起こるとは思わず整形外科を受診し五十肩の診断の元、関節内注射やリハビリを受けていました。
半年ほど治療を受けても症状は全く変わらず痛みも可動域制限もそのまま続いていました。
みらいクリニックへは「痛みと姿勢の外来」があるとのことで受診してきました。
ワクチンとの因果関係があるかなと思いましたが、私も経験がなかったため「念のため」咽頭内視鏡検査を行いました。
内視鏡を見て驚きました。
これがその時の写真です。写真中央が上咽頭の左右中心になりますが、写真の右側が不自然に膨らんでいることがわかります。また上咽頭粘膜の血管透瞭象は無く、全体的に炎症を伴っています。
同部位を内視鏡下に強く圧排すると膿汁の排出が認められました（黄色矢印、写真では血液が混じて赤色になっています）。膿疱により上咽頭粘膜が緊満していたのですね。膿汁排出により緊満が取れると、天蓋（写真上部）の敷石顆粒像がはっきりと分かるようになりました。
すると不思議なことに、Mさんが「痛みが減った」と喜びその場で可動域が改善したのです。
もちろん一辺に動くようになったわけではありませんが、半年続いた痛みの軽減が何よりの喜びとなりました。
どうして上咽頭炎（のどの炎症）と肩痛が関係あるのと不思議に思いますよね。
そういう方はこちらの記事を参考になさってください。
のどの不調を治したら、頑固な肩こりが消えた！（ヨミドクター）
おそらくワクチン接種により上咽頭炎を引き起こしそれが肩痛として現れていたのだろうと思われます。
肩痛や頑固な肩こりと慢性上咽頭炎の関係は深く、上咽頭炎治療（EAT）のお陰でマッサージが不要になった、筋収縮性頭痛から解放されたとの声は度々聞かれます。
さてMさんの一ヶ月後の内視鏡では上咽頭部はどうなっていたでしょうか。
緊満した状態は改善しています。中央部には深い溝（スリット）が見られます。初診時にもうっすらと見えていたのですが、腫れが収まることにより鮮明になりました。
もちろん擦過を行っても膿汁は排出されません。まだ可動域制限はありますし症状としては6割程度の改善（本人談）ですが、擦過治療により改善していることが写真からも見て取れます。
ワクチン接種後の副反応というと発熱や倦怠感、接種部位の疼痛はもちろんですが、血栓症や心筋炎などの致命傷となる病状も懸念されます。
遷延する肩痛といった形で現れてくることもあるようです。このケースを通して勉強させられました。
微熱と倦怠感で登校できなくなった例
学生は新型コロナウイルス感染症がいまだに2類感染症のため37.5℃以上の熱があると登校することが出来ません。
高校生のRさんもその一人でした。2021年9月に二回目のワクチンを接種してから体調を崩し、微熱、腹痛、頭痛、嘔気など様々な症状が出現しました。
当初は微熱のために登校ができなかったのですが、漢方薬の投与を受け微熱は改善し登校できると喜んでいたところ、倦怠感が著明となりまた登校できなくなってしまいました。このままでは進学が出来ないと心配し、みらいクリニックを受診してきたのです。
これが受診時の内視鏡像です。上咽頭は著明に腫大し一部脳を伴っています（中央下部黄色）。一見して重症慢性上咽頭炎と理解できます。
この様な状態ですから、経鼻綿棒で軽くつつくだけでも表面は崩れ出血します。これが体調不良の原因だろうと推察できます。
治療を数回行っただけで体調は回復に向かい登校もできるようになってきて、それと同時に顔には安堵の表情が表れます（ただし治療の前はちょっと強ばります、痛いですからね）。
こちらが一月後の内視鏡像です。全体的な腫脹が取れ中央やや右側に正常上咽頭粘膜が見て取れます。初診時よりもその見える範囲が広がっていることが分かります
痛みを伴う治療のためお子さん達にはしっかりと擦過するのが難しいのでこれくらい残ることはあるのですが（普通の治療よりも炎症残存が多い）、それでも体調が改善しているのは何よりです。進級が危ぶまれていたRさんですが、無事進級することが出来ました。ホッとしました。
慢性上咽頭炎ではCRPなど炎症反応は上昇しない
ワクチン接種直後であれば、白血球数やCRP（C反応性タンパク）などの炎症所見が血液検査で上昇することがあるのですが、慢性化してくるとまず血液検査での異常は出ません。
これら2例もCRPは検出限界以下、白血球数も基準範囲内でした。
そのため「正常」という判断を下されます。
正常なのに症状が出る、そうするとメンタルな問題と片付けられることもしばしばです。
慢性上咽頭炎ではCRPなどの炎症数値が上がることはまれです。
ここは強く主張したいところです。
CRPが上がってないから炎症はありませんよ
これは大きな間違いです。
むしろ慢性上咽頭炎でCRPが上昇しているような場合は、重症であるか他部位の炎症と混在していることがしばしばです。
ワクチン後遺症で悩んでいる方で、血液検査での異常がないから「思い過ごし」「気のせい」と言われている人でもぜひ一度上咽頭の検査をしてみて下さい。
そこに炎症が隠れていて、それを治療することで改善が見込めるかも知れません。
すこしでもこのブログがお役に立ちましたら幸いです。
執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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