
この記事の執筆・監修:今井 一彰
みらいクリニック 院長 /内科医・東洋医学会漢方専門医 /一般社団法人 慢性炎症コントロール・予防学会代表理事
1995年山口大学医学部卒業、救急医学講座入局。2006年にみらいクリニックを開業。
自身のバレーボールでのケガの経験から足元・足指のケアの重要性に気づき、「ゆびのば体操」や「あいうべ体操」など、薬に頼らないセルフケアの治療哲学を確立。現在も日々の外来で多くの患者様の悩みに向き合いながら、テレビ、新聞、ラジオなどのメディアでもその大切さを発信し続けている。
スニーカーを履いていて足が痛くなる経験はありませんか。実は、その痛みの多くは「履き方」を見直すだけで改善できる可能性があります。靴のサイズが合っていても、紐の締め方やかかとの合わせ方が間違っていると、足に余計な負担がかかり続けてしまうのです。
この記事では、スニーカーで起こる痛みの原因と正しい履き方の手順を詳しく解説します。今日から実践できる具体的な方法をお伝えしますので、ぜひ最後までご覧ください。
スニーカーの痛み対策では、履き方を見直すことに加えて、足指が靴の中で縮こまりにくい状態を整えることも大切です。足指が圧迫されたままだと、正しく履いていても足先や足裏に余計な負担がかかりやすくなります。スニーカーの中でも足指を使いやすい環境づくりに役立つ方法として、「ゆびのばソックス」も参考にしてみてください。
「人生で今が一番、体調が良い!」外反母趾を乗り越えたUさんの物語
クリニックに来院された60代の女性、Uさんのことが忘れられません。彼女は長年、親指の付け根の痛み(外反母趾)に悩まされ、「このままではいつか歩けなくなるのではないか」と、強い不安を抱えていらっしゃいました。
お話を伺うと、歩くたびに痛むため「靴下を二枚履き」し、さらに痛みから逃れるために「あえて大きめの靴」を選んで履いているとのこと。良かれと思っての工夫でしたが、実はこれがさらなる悪循環を招いていました。
実際に足指を拝見すると、外反母趾だけでなく、小指が内側に曲がる「内反小趾(ないはんしょうし)」も顕著でした。これでは足元が安定するはずもありません。
そこで、まずは「ゆびのば体操」と「ゆびのばソックス」を導入していただきました。すると、驚くべき変化が起こったのです。足指が本来の形に広がり始めると、今まで「大きめ」だと思って履いていた靴が、逆に「小さく」感じるようになってきました。
「Uさん、実は今の靴でもまだ小さいんです。もっと大きな、正しいサイズの靴に変えましょう」
私がそう指導したとき、初めは驚いておられました。「こんなに大きな靴だと、余計に歩きにくいのでは?」と。しかし、いざ正しいサイズの靴に足を入れた瞬間、彼女はすぐに自分の間違いに気がつかれました。「これまで、どれほど窮屈な靴に足を押し込んでいたのか」を、身体が理解したのです。
今では、あんなに苦しんでいた足の痛みはすっかり消え、毎年悩まされていた酷い「霜焼け」も出なくなったと喜んでおられます。
「先生、今が人生で一番体調が良いです!」
そう満面の笑みで語るUさんの姿を見て、改めて確信しました。足指を伸ばし、正しい靴を履くことは、単に足を治すことではありません。その人の人生そのものを元気に、健やかに変えていく力があるのです。

スニーカーで痛みが出る原因

スニーカーを履いて痛みを感じる原因は、単純な「サイズ違い」だけではありません。足の形状や歩き方、そして靴との相性など、複数の要因が重なっています。まずは自分の痛みがどこから来ているのかを理解することが、改善への第一歩です。
サイズと長さが合っていない
スニーカーのサイズ選びで最も多い間違いは、足の長さだけで判断してしまうことです。足の実寸と靴のサイズ表記は、メーカーによって基準が異なります。同じ26cmでも、ブランドによって実際の内寸が5mm以上違うことも珍しくありません。
小さすぎる靴は、足指が常に圧迫された状態になります。この状態が続くと、足指が縮こまった「屈み指」になりやすく、歩行時のバランスにも悪影響を及ぼします。逆に大きすぎる靴では、歩くたびに足が靴の中で前後に動き、つま先や踵が靴に当たって痛みを生じさせます。
適切なサイズとは、つま先に1cmほどの余裕があり、かかとと靴がしっかりフィットしている状態です。
幅や甲の形が合っていない
日本人の足は欧米人と比べて幅広で甲が高い傾向があります。しかし、海外ブランドのスニーカーは幅が狭く設計されていることが多く、長さは合っていても幅や甲で圧迫を感じるケースが頻繁に起こります。
甲が高い人が低い靴を履くと、紐を締めた際に甲の骨や血管が圧迫され、痺れや痛みの原因になります。また、幅が狭いと小指が常に靴の側面に押し付けられ、靴擦れや外反母趾の悪化につながります。
足の幅はJIS規格でE、2E、3Eなどと表記されます。自分の足幅を把握し、それに合った靴を選ぶことが重要です。特に長時間歩く場合は、少し余裕のあるワイズを選ぶと快適さが増します。
足の形や歩き方による影響
外反母趾や扁平足といった足のトラブルを抱えている方は、通常のスニーカー選びでは対応しきれないことがあります。外反母趾は親指の付け根が出っ張るため、靴の内側に当たって痛みを感じやすくなります。
扁平足の方は土踏まずのアーチが低いため、靴の中で足が内側に倒れやすく、膝や腰への負担にもつながります。これは足指が地面をしっかり捉えられていない状態でもあり、体全体の安定性が損なわれている証拠です。
| 足のトラブル | 特徴 | スニーカーで起きやすい問題 |
|---|---|---|
| 外反母趾 | 親指が小指側に曲がる | 親指付け根が靴に当たり痛む |
| 扁平足 | 土踏まずが低い | 足が内側に倒れ不安定になる |
| 屈み指 | 足指が縮こまる | 指先が靴底に当たり圧迫される |
| 浮き指 | 足指が地面に着かない | 踵やつま先に負担が集中する |
これらの症状は、正しい履き方と日々のセルフケアで軽減できることも多いです。足指を広げて伸ばす習慣をつけることで、足本来の機能を取り戻すことが期待できます。
スニーカーの正しい履き方

スニーカーは正しい手順で履くことで、フィット感が大きく変わります。多くの方が無意識に行っている履き方には改善の余地があり、少し意識を変えるだけで足への負担を軽減できます。ここでは、靴を履く前の準備から紐の締め方まで、具体的な手順をお伝えします。
靴下の選び方

スニーカーの履き心地を左右する重要な要素として、靴下の選択があります。一般的な靴下は足指を一つにまとめてしまい、足指本来の動きを制限してしまいます。足指が自由に動ける状態を保つことで、歩行時のバランスが安定し、痛みの予防にもつながります。
靴下を選ぶ際のポイントは以下の通りです。
- 足指が自然に広がる構造のものを選ぶ
- 締め付けが強すぎない適度なフィット感
- スニーカーの中で滑らない素材
- 汗を吸収して蒸れにくい通気性
また、靴を履く前に足指を軽く動かしてほぐすことも効果的です。足指をグーパーするように開閉したり、一本ずつ回したりする簡単なストレッチで、足指の柔軟性が高まります。
紐や面ファスナーの締め方
スニーカーの紐は、下から順番に締めていくことが基本です。一気に上まで通してから締めるのではなく、一段ずつ確認しながら締めることで、足全体に均等なテンションがかかります。
紐の通し方には大きく分けて2種類があります。
| 通し方 | 特徴 | おすすめの用途 |
|---|---|---|
| オーバーラップ | 上から穴に通す。しっかり締まりほどけにくい | ランニングやスポーツ時 |
| アンダーラップ | 下から穴に通す。締め付けが均一になりやすい | 長時間の歩行や普段使い |
締める際のコツは、足を床につけた状態で行うことです。立った状態では足に体重がかかり、座っているときより足が広がります。この状態で締めることで、歩いたときのフィット感が格段に良くなります。
中足部(足の甲の中央部分)をしっかり締めることで、靴の中での足のずれを防ぎ、かかとが浮くのを抑えられます。
かかとを固定するためのコツ
かかとの固定は、スニーカーを正しく履く上で最も重要なポイントです。かかとが靴の中で動いてしまうと、歩くたびに摩擦が起きて靴擦れの原因になります。また、かかとが浮いた状態では推進力が十分に伝わらず、歩行効率も低下します。
かかとを固定する「トントン方法」の手順は以下の通りです。
- 靴に足を入れたら、紐を完全に緩めた状態にする
- かかとを床に軽くトントンと打ち付け、かかとを靴底にしっかり合わせる
- 足を床につけたまま、下の穴から順番に紐を締めていく
- 最後の穴まで締めたら、蝶々結びをする


さらにホールド力を高めたい場合は「ヒールロック(上図)」というテクニックが効果的です。一番上の穴に紐を通す際に、内側からループを作り、反対側の紐をそのループに通して締めます。この方法により、かかとの固定力が格段に上がり、長時間歩いてもずれにくくなります。
紐がほどけやすい方は、二重結びやイアン結びを試してみてください。特にイアン結びは、紐を2〜3回巻き付けてから結ぶ方法で、固定力が強くスポーツ時にも安心です。
スニーカーは正しく履くだけでもフィット感が変わりますが、同時に足指が無理なく動ける状態を保つことも快適さにつながります。靴の中で足指が縮こまったままだと、かかとを合わせて紐を締めても、足先に負担が残ることがあります。履いている間の足元環境を見直したい方は、「ゆびのばソックス」もチェックしてみてください。
スニーカーの選び方

正しい履き方を実践しても、そもそも足に合わないスニーカーでは痛みを完全には防げません。自分の足に合った靴を選ぶことが、快適な歩行の基本です。ここでは、スニーカー選びのポイントと、痛みが出てしまったときの対処法を解説します。
自分の足を正しく知る
足に合うスニーカーを見つけるためには、まず自分の足を知ることが大切です。足の長さだけでなく、幅、甲の高さ、土踏まずの形状など、足の特徴は人それぞれ異なります。
自分の足を知るためのチェックポイントを挙げます。
- 足の長さは左右で違うことが多い(大きい方に合わせる)
- 足幅は親指の付け根から小指の付け根までの最も広い部分
- 甲の高さは立った状態で確認する
- 足指がまっすぐ伸びているか、曲がっていないか確認する
足指が縮こまっている方や浮き指の方は、足の接地面積が小さくなっており、体のバランスが不安定になりがちです。これは三脚の脚が縮んでいる状態に例えられます。足指を広げて伸ばすことで、安定した土台を取り戻すことができます。
スニーカーを選ぶ際は、つま先に1cm程度の余裕があること、足幅が圧迫されないこと、かかとがしっかりホールドされることを確認してください。
フィッティング時に確認するポイント
スニーカーを購入する際は、必ず実際に履いて歩いてみることが重要です。立っているだけでは分からない違和感が、歩くことで明らかになることがあります。
フィッティング時のチェック項目を表にまとめました。
| 確認箇所 | 理想的な状態 | NGな状態 |
|---|---|---|
| つま先 | 指1本分の余裕がある | 指先が靴に当たる、または余りすぎる |
| 幅 | 小指が軽く触れる程度 | 小指が強く押されている |
| 甲 | 紐を締めても圧迫感がない | 紐を締めると痛みや痺れがある |
| かかと | 歩いても浮かない | 歩くたびに上下に動く |
| 土踏まず | アーチに沿ってフィット | 隙間がある、または押し上げられる |
フィッティングは夕方に行うことをおすすめします。足は一日の終わりにむくんで最も大きくなるため、この時間帯に合う靴であれば、一日を通して快適に履けます。
試し履きでは店内を5分以上歩き、実際に足が動く感覚を確認してください。
痛いときの応急処置とセルフケア

スニーカーを履いていて痛みが出てしまった場合、まずは紐を緩めて足を解放することが大切です。痛みを我慢して履き続けると、症状が悪化したり、かばう歩き方によって他の部位にも負担がかかったりします。
応急処置として有効な方法を紹介します。
- 紐を完全に緩めて締め直す
- 一番上の穴を通さずにゆとりを持たせる
- 靴を脱いで足指を動かしほぐす
- 靴擦れには絆創膏やテーピングで保護する
帰宅後のセルフケアとして、足指を広げて伸ばすストレッチが効果的です。足の指と手の指を絡めて、優しく足指を広げる動作を繰り返します。これにより、靴で圧迫されていた足指の血流が改善し、疲労回復が促進されます。
このようなセルフケアを日常的に行うことで、足指本来の機能を維持し、痛みの予防にもつながります。足指は体の土台であり、足指が広がってしっかり地面を捉えられる状態を保つことが、全身の健康にも影響します。
まとめ
スニーカーでの足の痛みは、正しい履き方を身につけることで大きく改善できます。かかとをトントンと合わせ、足を床につけた状態で紐を下から順に締めていくことが基本です。ヒールロックなどのテクニックを活用すれば、さらに安定したフィット感が得られます。
また、靴選びでは足の長さだけでなく幅や甲の高さも考慮し、夕方に試し履きをすることが大切です。日々のセルフケアとして足指を広げて伸ばす習慣を取り入れることで、足本来の機能を維持し、痛みを予防できます。今日からぜひ、正しい履き方を実践してみてください。
執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業 現在に至る
あいうべ体操・ゆびのば体操などセルフケアの大切さを伝えている。テレビ、新聞、ラジオなどのメディア出演も多い。
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