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浮き指とは
浮き指とは、足指が地面に接していない状態のことをいいます。人間の足指は、左右に10本ありそれぞれが地面に接していることが大切です。立った状態で体の重心を踵に移動させると足指が地面から離れるのが分かります。それが浮き指の状態で、体の重心の位置が踵側に移ってしまっている状態とも言えます。
大人だけではなく、小児にも増えており小学校卒業時には、8割の児童にこの浮き指が見られるとの調査報告もあります。
下の写真は「姿勢が悪い」、「猫背を治したい」と受診をしてきた11歳女児の足の写真です。小趾が地面から浮いているのがわかります。こういった姿勢にも浮き指が関係しています。
例えば体の重心を後側に移動させて下さい(踵で立つ感じにする)。そうなると足指が浮いてきてバランスをとろうとするのが分かるでしょう。
この状態が浮き指を表しているとも言えます。画像診断では把握できず、視診・観察が大切になります。靴下や靴を履いた状態では分かりませんので、見落とされやすい足指の異常とも言えます。
そして、上の写真で小趾が地面から少し浮いている(着地していない)この程度でも体に与える影響は大きいと考えられます。
この浮き指による姿勢の変化としては、体の重心が踵側に移動することによる反り腰やストレートネックとなり、症状としては肩こり、首こり、頭痛などが出る場合があります。実際この児童にも首こり、肩こりがありました。
肩こりは高齢者だけではなく、最近では小学生でも慢性的な首こり、肩こりに悩まされる子ども達がたくさんいますし、受診数も増えてきています。
猫背やストレートネック、成長痛、オスグッド病など様々ですが、必ずといっていいほど認められるのが浮き指です。
子ども達の足指が浮いていく
では姿勢と浮き指がどのように関係しているのか実際のケースで見て行きましょう。
下の写真は、内反足と姿勢が悪いと言うことで受診してきた女児です。
近くの医院では、関節内のステロイド注射と安静を保つ指示がありましたが、一向に改善する気配がありません。
「レントゲンでは異常ない」
こんな時の常套句です。
レントゲンで異常が無ければいいのか、他の異常は関係ないのか。
症状が有ると言うことは、何かがおかしいと言うことですから、それを探していくのが臨床医だと私は思います。
ところが、レントゲンで異常ない、では関節注射をしましょうというのが現代の治療です。
レントゲンで異常が無ければ、どうして痛がるのだろうと不思議に思い、その原因を追及していくのが医療だと思うのですがね。
関節注射も小学生の児童に、すぐ行うべき治療ではなさそうです。
彼女の家族も何だかへんだぞ、ということで相談に見えました。
足指の写真を見るとかなりの浮き指であることが一目瞭然です。
レントゲンでは異常ありませんが、生身の体を見ると姿勢の悪さ、足指の異常はすぐに分かります。
しかもレントゲン被曝もありません。
さて彼女の問題点を把握し、実際にどうやって改善をしていくのか、家庭でのセルフケアや気を付けることをお伝えしました。
すると2週後には、足指は床にしっかりと付くようになり、歩行、姿勢の改善が認められました。
歩き方や姿勢といったものも、「足指変形の結果」でしかない場合があります。
足指が変形していると、その上に乗っかっている足、腰、背骨、肩、首にもその変形が伝わって行ってしまい、様々な問題を起こしているかも知れません。
体の土台を見ることはとても大切ですね。
乳幼児の浮き指も増えている
さて、この浮き指問題、小学生であれば学校の上履きが「隠れた犯人」として挙げられることが多いです。
学校の上履きは、変な慣習が広まっただけのものであり、けっして体のことを考えた靴ではありません。
浮き指を改善するには出来るのであれば、上靴をまともな靴に置き換えるべきです。
じゃあ小学校になってから気を付ければいいのではと思うかも知れませんが、それでは遅い場合があります。
みらいクリニックにも乳児の足指変形、浮き指での受診が増えてきています。
この子の足指を見ると、第2趾が浮いてねじれているのが分かります。
子どもはここまで変形しても痛みを感じないことがあります。
親が注意深く観察しなければなりません。
この子は受診当時4歳でした。痛いとかしびれるとか症状は全くありません。
でも知らず知らずのうちにこんな変形が進んでいるんですね。
この子の浮き指の原因は、「靴の間違い」でした。
またこの靴の間違いについては、稿を改めて書いてみます。
浮き指の何が悪いのか
では、なぜ浮き指は悪いのでしょうか。足、脚は巨大な筋肉が付いているので、少しのことでは疲れたり、バランスが悪くなったりしません。
これが浮き指の問題を隠してしまっています。浮き指は、体のバランスを崩してしまいます。
歴史的には、前足部にあったヒトの体の重心は、歴史が下るにつれ徐々に踵側に移ってきて、一説には平安から江戸を境として(かなりの時代の幅がありますが)、中央部から踵の方へ近づいていったと言われています。
そして現代ではより踵の方へ移ってきています。そうすると重心がどんどん後ろに移ってきて、あと数十年もすると立てなくなってしまうのじゃないかと考えている研究者もいるほどです。
浮き指は、足指が使えていない、使っていない証拠でもあります。手の指が使えないと日常生活に支障が出るように、足指も使えないと体を支えることが出来ず、下半身に無理が生じてしまいます。
浮き指はどうやって判断する
この姿勢を悪くしたり、肩こりを起こしたりする浮き指をどうやって判断、診断するかを説明します。
浮き指の判断は、立ったときに「足指が浮いているかどうか」です。
つまり地面に着いているかどうか。これは触れている程度でも浮き指と判断します。
この状態をより詳しく解析したいと思ったら、フットプリントを見たり、最近だと足圧計でより分かりやすく判断出来ます。
例えば下のフットプリントを見ると、2,3,5の3本の趾が接地していないことが分かります。
外反母趾、内反小趾、足の冷え・浮腫が症状としてありました。
これらの道具などを使わずに、ご自身で浮き指を判断するには座った状態で、第2~5趾の先に紙切れを滑りこませてみることをお勧めします。
浮き指の場合は、足指先に特に抵抗を感じること無く(紙が折れ曲がったり、めくれたりすること無く)すっと足指の裏に入っていきます。
足指が浮いていくと体はどうなるのか
では姿勢と浮き指がどのように関係しているのか実際のケースをブログで紹介します。参考にして下さい。
浮き指は子ども達だけでは無く大人の姿勢も悪くしていきます。
浮き指はあまり気がつかれない足指の変形です。きちんと五本の指が地面に接していなければ体が無理な体勢で移動をしなければならなくなり、肩こりや姿勢の悪さなどを引き起こすことがあります。こちらの方は、腰椎椎間板ヘルニアと診断され手術適応と判断されたのですが、ご自分の年齢を考えて手術を迷っておられました。
全身の写真ではO脚(両側変形性膝関節症)があり、正面からの姿勢も傾いていることがわかります。
足指は、右の2,4,5趾、左の2,5趾が地面に接していないことがわかります。
特に、小趾の浮き指と内反小趾によりO脚、膝痛を来していると推察されました。
脚は、巨大な筋肉によってこれらの足指の変形があっても何とか立つことが出来るのですが、その無理な状態が痛みに繋がっていると考えられます。
半年して浮き指を改善することにより、腰痛も改善し手術をせずにすみました。
ではこれらの浮き指を改善するためには何が出来るのでしょうか。
浮き指を改善するために
踵重心を治すために、大股歩きを止めて前足部を使って歩けるようにします。大股歩きは、関節の可動域が拡がり筋力が付くと言われていますが、足指を使わずとも歩けてしまうため、足指への意識が薄くなりがちです。
試しにドスドスと音がしないように小股で歩いてみて下さい。着物を着ているような感じであるくと、最後に足指を蹴り出して歩いていることが分かると思います。ここに気を付けて歩けるようになると浮き指が改善していきます。
踵重心ではなく、出来るだけ足の真ん中に重心を持ってくるように心がけることも大切です。
もちろん足に合わない靴や靴下、間違ったはき方も浮き指の原因になりますから注意が必要です。
画像でみる浮き指
上記のとおり、浮き指になってしまうと足指に体重をかけることができなくなってしまいます。足圧計(足裏のどこに体重がかかっているかを測定する機械)で調べてみると、いかに足指が使えていないかがハッキリとわかります。
下図のように足指が浮いてしまっている場合。足指に体重がかけられないので、多くの場合は踵重心になってしまいます。(4枚目の画像参照)
ここまで全体的に足指が浮いている状態は非常にまれです。
この様に一目で浮き指だとわかる場合もあれば、足指は地面についているが体重がのっておらず、機能的な浮き指になっている方もいらっしゃいます。
下図のように、足指がしっかりと地面に接地しているように見えても、足圧計で調べてみると足指に体重がかかっていないことが良くわかります。
1~3枚目の画像をみる限り、浮き指であると感じることはできません。
この方の場合、足指に全く体重がかかっていません。画像に移っているのは、踵と足指の付け根の部分です。
特に右足は、足指のつけ根の中間あたりに体重が乗っていることがわかります。この状態が続くことで「タコ」や「ウオノメ」、「開張足」に繋がります。
2つの写真の方は、年齢、身長、体重など、全く違うお二人の写真ですが、共通しているのは踵重心であるということです。踵の部分が赤くなっているのが観てとれると思います。
足指が地面についているから大丈夫というわけではありません。機能として使えているかどうかが問題であると私たちは考えています。
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執筆・監修 内科医 今井一彰プロフィール
みらいクリニック院長
内科医・東洋医学会漢方専門医
1995年 山口大学医学部卒業 救急医学講座入局
2006年 みらいクリニック開業
加圧トレーニングスペシャルインストラクター
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